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一年目、五歳
第68話 一年経ったの。
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春が来て、レイニィは六歳になった。
教会で仮職(プレジョブ)が『大魔術師』と決まり、前世の記憶が戻ってから一年になる。
そして今日は、家族が揃ってレイニィの誕生日をお祝いしていた。
みんなからお祝いの言葉を贈られるレイニィは、その場の雰囲気に反して、浮かない顔をしていた。
それは、レイニィがある決意を持ってこの場に臨んだからである。
「レイニィ。余り嬉しそうに見えないけどどうかしたの?」
レイニィの様子に堪りかねたミスティが声を掛ける。
「お姉ちゃん……。実はみんなに聞いて欲しいことがあるの。いえ、あります」
「どうしたんだレイニィ、急に改まって?」
父親のゲイルが急に態度を改めた様子にレイニィのことが心配になる。
「実は、家族のみんなに話してないことがあるの」
「家族だからといって、全てを話さなければならないものではないだろう。秘密があってもいいんだぞレイニィ」
「クール兄さんの言う通りだぞ、俺なんかこの間、応接室の壺を割ってしまったけど、誰にも秘密にしているからな」
「ドライ。やっぱりお前が壊したのか。まあ、父さんたちにはバレバレだったがな」
「え、そんな。うまく隠したつもりだったのに!」
「お兄ちゃんたち。ありがとうなの。いえ、ありがとう。でも、私はみんなにここで話しておかないと、心のそこから喜べないんです」
「そう。なら、話してごらんなさい。お母さん、レイニィのことならどんなことでも受け入れてあげるから」
「ありがとう、お母様。実は、私は異世界からの転生者で、異世界の、前世の記憶があるの」
「成る程、それで色々変な物を思い付くのね。納得だわ」
「ほう。それは凄いな。異世界とはどんな生活をしていたんだ。後で詳しく教えてくれ」
「異世界にも強い奴はいたか? やっぱり剣が主流なのか? 何か変わった武器はなかったか?」
「ドライ、レイニィに武器の話を聞いてもわからんだろ」
「そんな事わからんだろ。前世では武器に詳しかったかもしれない」
「いや、それはないだろう。前世の記憶があるのに、そんな話出てきた事ないだろう。出てくるのは天気の話ばかりで」
「それもそうだな」
「お姉ちゃんも、お兄ちゃんたちも、それでいいの? 私に前世の記憶があっても妹だと思ってくれるの?」
「当たり前じゃない」
「当然だろ!」
「何か問題があるのか?」
「レイニィ、異世界からの転生者だとは驚いたが、誰しもが輪廻転生を繰り返すものなのだよ。自分だけが別だと考える必要はないんだ」
「そうよ。レイニィは私が産んだ娘であることは間違いないのだから」
「お父様、お母様。私、この家に生まれてよかったよ」
「レイニィ様よかったですね」
「ありがとう。スノウィ」
「そうか、レイニィの知識は異世界の知識なのか。これからが益々楽しみになったぞ」
「先生、悪いことに使ったら駄目ですからね」
「わかってるって」
「しかし、なぜレイニィには前世の記憶があったんだろうな?」
「それは、女神様の加護として授かったから」
「ああ、授かった加護はそれだったのか」
「それだけじゃなかったけどね」
「それだけじゃない?」
「うん。他にも二つ授かったよ」
「なに、女神様の加護を複数授かったのか!」
「あなた、そんなことあるのですか?」
「いや、私は初めて聞いた」
「私も聞いたことがないな」
「まあ、天使の様に可愛いレイニィなら当然ね」
レイニィの予想に反し、女神様の加護を複数授かった事の方が、大騒ぎになったのだった。
レイニィは、転生前の記憶が戻って以来、背負い続けた肩の荷をやった下ろすことができ、晴れやかな気持ちで六歳の誕生日を迎えることができたのだった。
教会で仮職(プレジョブ)が『大魔術師』と決まり、前世の記憶が戻ってから一年になる。
そして今日は、家族が揃ってレイニィの誕生日をお祝いしていた。
みんなからお祝いの言葉を贈られるレイニィは、その場の雰囲気に反して、浮かない顔をしていた。
それは、レイニィがある決意を持ってこの場に臨んだからである。
「レイニィ。余り嬉しそうに見えないけどどうかしたの?」
レイニィの様子に堪りかねたミスティが声を掛ける。
「お姉ちゃん……。実はみんなに聞いて欲しいことがあるの。いえ、あります」
「どうしたんだレイニィ、急に改まって?」
父親のゲイルが急に態度を改めた様子にレイニィのことが心配になる。
「実は、家族のみんなに話してないことがあるの」
「家族だからといって、全てを話さなければならないものではないだろう。秘密があってもいいんだぞレイニィ」
「クール兄さんの言う通りだぞ、俺なんかこの間、応接室の壺を割ってしまったけど、誰にも秘密にしているからな」
「ドライ。やっぱりお前が壊したのか。まあ、父さんたちにはバレバレだったがな」
「え、そんな。うまく隠したつもりだったのに!」
「お兄ちゃんたち。ありがとうなの。いえ、ありがとう。でも、私はみんなにここで話しておかないと、心のそこから喜べないんです」
「そう。なら、話してごらんなさい。お母さん、レイニィのことならどんなことでも受け入れてあげるから」
「ありがとう、お母様。実は、私は異世界からの転生者で、異世界の、前世の記憶があるの」
「成る程、それで色々変な物を思い付くのね。納得だわ」
「ほう。それは凄いな。異世界とはどんな生活をしていたんだ。後で詳しく教えてくれ」
「異世界にも強い奴はいたか? やっぱり剣が主流なのか? 何か変わった武器はなかったか?」
「ドライ、レイニィに武器の話を聞いてもわからんだろ」
「そんな事わからんだろ。前世では武器に詳しかったかもしれない」
「いや、それはないだろう。前世の記憶があるのに、そんな話出てきた事ないだろう。出てくるのは天気の話ばかりで」
「それもそうだな」
「お姉ちゃんも、お兄ちゃんたちも、それでいいの? 私に前世の記憶があっても妹だと思ってくれるの?」
「当たり前じゃない」
「当然だろ!」
「何か問題があるのか?」
「レイニィ、異世界からの転生者だとは驚いたが、誰しもが輪廻転生を繰り返すものなのだよ。自分だけが別だと考える必要はないんだ」
「そうよ。レイニィは私が産んだ娘であることは間違いないのだから」
「お父様、お母様。私、この家に生まれてよかったよ」
「レイニィ様よかったですね」
「ありがとう。スノウィ」
「そうか、レイニィの知識は異世界の知識なのか。これからが益々楽しみになったぞ」
「先生、悪いことに使ったら駄目ですからね」
「わかってるって」
「しかし、なぜレイニィには前世の記憶があったんだろうな?」
「それは、女神様の加護として授かったから」
「ああ、授かった加護はそれだったのか」
「それだけじゃなかったけどね」
「それだけじゃない?」
「うん。他にも二つ授かったよ」
「なに、女神様の加護を複数授かったのか!」
「あなた、そんなことあるのですか?」
「いや、私は初めて聞いた」
「私も聞いたことがないな」
「まあ、天使の様に可愛いレイニィなら当然ね」
レイニィの予想に反し、女神様の加護を複数授かった事の方が、大騒ぎになったのだった。
レイニィは、転生前の記憶が戻って以来、背負い続けた肩の荷をやった下ろすことができ、晴れやかな気持ちで六歳の誕生日を迎えることができたのだった。
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