上 下
62 / 104
一年目、五歳

第62話 アイテムボックスなの。

しおりを挟む
 勇者のアイテムボックスをみたレイニィは、自分でも欲しくなった。
 なんといっても便利である。
 部屋は片付く。出かける時は手ぶらで済む。手品のタネとして使える。
 便利な点をあげたらきりがない。

 勇者は女神様の加護だと言っていたが、魔法でどうにかならないかエルダに聞いてみた。

「勇者の使っていたアイテムボックスが、魔法でできないかだって? それは無理だろう。あんな常識外れなもの」

 レイニィにしてみれば魔法自体常識外れなのだが、魔法ができて当たり前なエルダからすれば違うのだろう。

「昔から空間魔法と時間魔法は、研究されているが実現されていないぞ」
「研究はされているの?」

「研究はな。成果は全くだ」
「そうなの。残念なの――」

「ですが、お嬢様なら違う視点で新しい発見があるかもしれませんよ」

 スノウィが珍しく口を挟んでくる。

「まあ、確かに、レイニィの考え方は独特だからな。因みにアイテムボックスはどんな仕組みだと思う?」
「たぶん、異次元に穴を開けて、そこに収納する感じなの」

「異次元ね。異世界とは違うのだろう?」
「違うの。直線の一次元、平面の二次元、立体の三次元、時間の違いによる四次元。その外が異次元なの」

「ほう。面白い考えだな。魔法はイメージ次第だからな。レイニィならアイテムボックスの魔法を作れるかもしれんな」
「新しい魔法なの。試練も達成できるの。一石二鳥なの」

「試練といえば、試練の紙の綴り、よくあの封筒に入りますよね。ある意味、あれもアイテムボックスですね」
「そう言われればそうだな」
「スノウィの言う通りなの。これを調べれば何かわかるかもなの」

 レイニィは神の封筒を取り出し、調べ始める。

「見た目はただの封筒なの。これに紙の綴りを入れると入るの」
「他の物は入らないのですか?」

「試した事なかったの。試しに何か入れてみるの」
「では、これをどうぞ」

 スノウィがハンカチを取り出して、レイニィに渡す。
 レイニィはそれを封筒に入れる。

「入ったの!!」

 レイニィは、今度は封筒からハンカチを取り出す。

「取り出しも問題ないの」
「もっと大きな物が入るか試そうじゃないか」

 エルダは側にあったクマの置物を持ってくる。鮭を咥えたよく見るあれである。

「そんな大きな物入るのですか?」
「やってみるの」

 レイニィはクマの置物を封筒に入れた。吸い込むように封筒の中にクマの置物は消えた。

「入ったの?!」

 それから色々な物を出し入れしてみたが、入らない物はなかった。
 大きさも、素材も関係なかった。
 魔法なら鉄は入らないという可能性もあったが、鉄も問題なく入れることができた。
 量や数も、入れた物全てが収まった。
 現時点では制限があるのかはっきりしなかった。

 一つ制限があるとすれば、入れることも、取り出すことも、レイニィ以外はできなかった。レイニィ専用である。

 他の人の封筒はどうか調べてみたが、スノウィの封筒はごく普通の封筒だったが、エルダの封筒は、物を入れることができた。
 但し、容量制限があり、鞄サイズ以上には物が入らなかった。

「これは。今まで気付かなかったぞ。この封筒にこんな便利な機能があったとは」
「私の封筒は普通のものでした――」

 スノウィは少し残念そうだ。

「魔術を使えるかが関係するかもしれないの」
「そうだな。封筒の違いというより、その可能性が高いな」

「あたしが、スノウィの封筒に魔力を込めるから、スノウィが何か入れてみるの」
「わかりました」

 スノウィが招き猫の置物を封筒に入れる。

「入りました! お嬢様。入りましたよ!!」

 スノウィは大喜びである。

 実験の結果、物の出し入れは本人しか出来ず。魔力が必要であることがわかった。
 魔力は本人のものでなくてもよく、魔石から供給しても構わなかった。但し、供給される魔力の量によって、入れられる量が増減した。
 魔石からの供給で入れられる量はたかが知れていた。せいぜい、大事な鍵をなくさないように仕舞っておくのがやっとだった。

 レイニィが無制限に入れられるのは、女神様の加護「魔力無限」があるからだった。

 かくして、レイニィはアイテムボックスを手に入れた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

内政チートをやってみよう!……まあぼっちですが。

カナデ
ファンタジー
誰も立ち入らない深い森の中の小さな集落。住人はリザティア以外は全てが老人だったが、とうとうたった一人になってしまった。 これからどうしよう? ここから、森から出て外の世界へ行く? ……いいえ。この集落で一人で暮らします! ぼっちだけど、内政チートで! 相棒のシルバー(狼)と精霊たちとともに! これは前世の記憶を持った少女が、でも自分が何故異世界転生だか転移したか何も分からないので、異世界へ飛び込まずに、森の中でのんびりと自由に暮らすことを目標にして生活していくお話です。 いつしか集落にも住人が増え、内政チートの本領発揮、となるか?(そんな感じです) 完結まで連載予定ですので、どうぞよろしくお願いします<(_ _)> **この話は、他サイトさんで連載していた同タイトルの話(未完)の大幅改稿版となっています** 第2章から、書き直し、書き下しの部分が改稿部分より増え、話も追加で新たに入れます。 大分改稿前とは変わると思いますが、ご了承ください。 3/1 HOT32位 3/2HOT 22位 3/5HOT16位 3/7HOT14位 ありがとうございます! 3/7 お気に入り 1000 ありがとうございます!

女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎
ファンタジー
 自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。 死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。 *10/17  第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。 *R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。  あと少しパロディもあります。  小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。 YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。 良ければ、視聴してみてください。 【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮) https://youtu.be/cWCv2HSzbgU それに伴って、プロローグから修正をはじめました。 ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo

最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる

盛平
ファンタジー
幼い頃に、貴族である両親から、魔力が少ないとう理由で捨てられたプリシラ。召喚士養成学校を卒業し、霊獣と契約して晴れて召喚士になった。学業を終えたプリシラにはやらなければいけない事があった。それはひとり立ちだ。自分の手で仕事をし、働かなければいけない。さもないと、プリシラの事を溺愛してやまない姉のエスメラルダが現れてしまうからだ。エスメラルダは優秀な魔女だが、重度のシスコンで、プリシラの周りの人々に多大なる迷惑をかけてしまうのだ。姉のエスメラルダは美しい笑顔でプリシラに言うのだ。「プリシラ、誰かにいじめられたら、お姉ちゃんに言いなさい?そいつを攻撃魔法でギッタギッタにしてあげるから」プリシラは冷や汗をかきながら、決して危険な目にあってはいけないと心に誓うのだ。だがなぜかプリシラの行く先々で厄介ごとがふりかかる。プリシラは平穏な生活を送るため、唯一使える風魔法を駆使して、就職活動に奮闘する。ざまぁもあります。

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰? あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。 わたし、どうなるの? 不定期更新 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

神々の仲間入りしました。

ラキレスト
ファンタジー
 日本の一般家庭に生まれ平凡に暮らしていた神田えいみ。これからも普通に平凡に暮らしていくと思っていたが、突然巻き込まれたトラブルによって世界は一変する。そこから始まる物語。 「私の娘として生まれ変わりませんか?」 「………、はいぃ!?」 女神の娘になり、兄弟姉妹達、周りの神達に溺愛されながら一人前の神になるべく学び、成長していく。 (ご都合主義展開が多々あります……それでも良ければ読んで下さい) カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

処理中です...