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一年目、五歳

第39話 エルダの家なの。

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 ミディアの小屋で十分寛いだ後、レイニィ達は再び馬車で森の奥へと進んだ。
 すると森の中なのに少し開けた場所に出た。
 そこには一軒の大きなログハウスが建っていた。

「あれが私の家だ」
「えー。木の上の小屋じゃないの?」
「見たところ、普通のログハウスだな――」
「エルダ様は、エルフなのですよね?」

 エルダの家を見た、レイニィ、アイス、スノウィの三人が、揃って否定的なことを言う。

「なんだ、その、残念なものを見る様な目は。エルフが皆んな木の上に住んでいるわけではないんだぞ」
「でも、今まで見てきたのは、みんな木の上だったの!」
「ただ、昇り降りが面倒なだけなんじゃないか?」
「先程も、登るの面倒くさいと言ってましたし――」

「私の場合、色々と荷物が多いから、木の上だと重さに耐え切らないんだ」
「まあ、そういうことにしておいてあげるの」
「はあ、仕方ないな――」
「さあ、さっさと入りましょう」

 レイニィ達三人は馬車を降りていく。

「こら、お前達。家主を差し置いて勝手にいくな!」

 エルダも続いて馬車を慌てて降りたのだった。

「レアム。戻ったぞ」

 エルダは家の扉を開けると、中に向かって声を掛ける。
 少しするとエルフの少女が奥から出て来た。

「エルダ様、今回は随分とお帰りが早かったのですね。行って早々、家庭教師を首になったのですか?」
「そんなわけあるか! 失礼だな。教え子のレイニィ達だ、暫くここに滞在する。面倒を見てやってくれ。
 レイニィ、こっちがレアム。召使いだ。留守番から家事全般まで、家のことは全て任せている。家のことはレアムに聞いてくれ」

「よろしくお願いしますなの。レイニィなの」
「まあ、可愛らしいお嬢様だこと。召使いのレアムです。なんなりとお申し付けください」

「レアム、取り敢えずお茶を用意してくれるか」
「畏まりました」
「さて、私たちはリビングへ行こう」

「広い家なの」
「レイニィの住む屋敷に比べれば小さいがな」

 レイニィ達はリビングでお茶を飲みながら寛いでいる。

「本もいっぱいなの」
「ここに置いてあるのはほんの一部だ。書庫に入り切らなくなった分を置いてある」

「見ていいの?」
「構わんが、壊さない様に注意してくれよ」
「気を付けるの」

 レイニィはソファーから立ち上がると、本棚に近付き、適当な本を手に取った。

「重いの」
「大丈夫ですかお嬢様」

 スノウィが慌てて手を貸す。

「この本、石版なの!」
「石版だけじゃないぞ。木版、鉄版、羊皮紙、色々だ。紙がなかった時代の本がそろっている」

「凄いの、でもなんでこんなに揃ってるの?」
「まあ、私は『大賢者』だからな。当然だ」

「先生の職(ジョブ)は『大賢者』だったの。ビックリなの!」
「あれ、言ってなかったか?」

「初めて聞くの」
「そうか。もっと崇めて良いのだぞ」

「ははー、大賢者様」

 レイニィは正座して、床に平伏した。

「乗りがいいな」

 そこに、レイニィ達が滞在する部屋の準備を済ませ、レアムが戻って来た。

「エルダ様、こんな小さな子に、何をやらせているんですか!!」

 エルダはレアムから、正座で説教を受ける事になった。

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