上 下
38 / 104
一年目、五歳

第38話 星見人と会うの。

しおりを挟む
 エルダはミディアの家の下に着くと、大声で木の上の小屋に向かって叫んだ。
「ミディアいるか!」

 少しすると小屋の扉が開いて、エルフの少女が顔を出した。

「エルダ、あんたねぇー。面倒くさがらないで上がって来てから呼び掛けなさいよ!」
「だって、もし留守なら無駄足だろ」

「はー。全く。それよりあんた、また無駄に『女神様のお恵』を落としたわね」
「女神様のお恵?」

「ゴミのことよ」
「ゴミって言うな。あら、その子誰?」

「レイニィなの」
「まあ、レイニィというの。私はミディアよ。ちょっと待っててね」

 そう言うと、ミディアはスルスルと梯子を降りて来た。

「レイニィちゃんは可愛いわね。何歳かな?」
「五歳なの!」

「そう。何か食べる? 飴ちゃんあげようか?」
「飴ちゃん?」

(このエルフ、大阪のおばちゃんか! でも、飴は欲しいかも――)

「お嬢様、知らない人に飴ちゃんあげると言われても、付いていったら駄目ですよ」

(はっ。そうだった。こちらの世界は甘い物が少ないから、思わず気を惹かれてしまった)

「ミディア、幼女を餌付けしようとしないで」
「エルダこそ、この子どうしたのよ。攫って来たんじゃないでしょうね」

「レイニィは今の教え子よ。銀スライムを狩に来たの」
「こんな小さい子に、スライム狩りなんて危ないでしょ」

「レイニィなら大丈夫よ。来る途中も二人で大熊(グレートベア)を倒して来たし」
「エルダ、それで『女神様のお恵』を落としたのね。自分の格好良いところを見せて、その子の気を引こうとしたんでしょ」

「ううん。違うの。あたしが大熊も呼び寄せちゃったの」
「まあ、そうなの。レイニィちゃんの可愛さを見たら、大熊も寄って来るわよね」

「そういうわけで、ゴミを落としたのは仕方がなくだ」
「だから、ゴミって言うなー!」

 その後レイニィ達は、ミディアの強い勧めで、ミディアの小屋に上がり、お茶をいただいていた。

「ミディアの職(ジョブ)は、星見人で、星の動きから未来を予測する事を仕事にしているんだ」
「占い師なの?」

(星座はなくても星占いはあるのか――)

「星見人は、占い師じゃないわよ。ちゃんと軌道計算に基づいた予測よ。だから、無闇に軌道を変えられると再計算が大変なのよ」
「あんな小さなゴミ一つ、大した影響ないだろう」

「その一つが、他に影響を与えて、連鎖的に大きく変わってきてしまうのよ」

「星の動きが、未来に影響するものなの?」
「星の動きによって、太陽の活動が活発になったり、衰えたりするのよ。それによって地上に降り注ぐ、魔力も日射量も変わって来るの。影響が出て不思議じゃないでしょ」

「確かにそうなの。日射量は大事なの」
「レイニィちゃんは、わかってくれたんだ。ありがとう」

 ミディアはレイニィの頭を抱き寄せる。

「でもな。女神様がゴミを追加する度に、軌道計算のやり直しで、結果が変わっちゃうからな。当てにならないだろう」
「何事にも、イレギュラーは存在するものなの」

 エルダに対して、レイニィがミディアを擁護する。

「そうよ。そうよね。レイニィちゃん」
「完璧なんてものはないの。それでも、予測を立てて、伝えていかなければいけないの」

 レイニィにしてみれば、ミディアのしていることは、天気予報に通じるものであった。
 そのため、ミディアにシンパシーを感じていたのだ。

「レイニィは随分、ミディアの肩を持つな」
「あたしとミディアさんは同士なの!」
「レイニィちゃん。ありがとうー」

 ミディアはレイニィに抱き付いて、お礼を言ったのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

内政チートをやってみよう!……まあぼっちですが。

カナデ
ファンタジー
誰も立ち入らない深い森の中の小さな集落。住人はリザティア以外は全てが老人だったが、とうとうたった一人になってしまった。 これからどうしよう? ここから、森から出て外の世界へ行く? ……いいえ。この集落で一人で暮らします! ぼっちだけど、内政チートで! 相棒のシルバー(狼)と精霊たちとともに! これは前世の記憶を持った少女が、でも自分が何故異世界転生だか転移したか何も分からないので、異世界へ飛び込まずに、森の中でのんびりと自由に暮らすことを目標にして生活していくお話です。 いつしか集落にも住人が増え、内政チートの本領発揮、となるか?(そんな感じです) 完結まで連載予定ですので、どうぞよろしくお願いします<(_ _)> **この話は、他サイトさんで連載していた同タイトルの話(未完)の大幅改稿版となっています** 第2章から、書き直し、書き下しの部分が改稿部分より増え、話も追加で新たに入れます。 大分改稿前とは変わると思いますが、ご了承ください。 3/1 HOT32位 3/2HOT 22位 3/5HOT16位 3/7HOT14位 ありがとうございます! 3/7 お気に入り 1000 ありがとうございます!

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました

Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。 実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。 何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・ 何故か神獣に転生していた! 始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。 更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。 人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m なるべく返信できるように努力します。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

強すぎ令嬢、無一文からの成り上がり ~ 婚約破棄から始まる楽しい生活 ~

絢乃
ファンタジー
弱小貴族の令嬢シャロンは男爵令息ブルーノと政略結婚する予定にあったが、結婚式を控えたある夜、ブルーノと伯爵令嬢がキスしているところを目撃する。シャロンは気にしていなかったが、ブルーノと伯爵令嬢は口封じのためにシャロンが不貞行為を働いていたとでっちあげる。 こうして無一文の状態で国外追放となったシャロンは、隣国の小さな町に辿り着くと生きていくために行動を開始。着ているドレスを売って安い布きれの服に着替え、余ったお金でナイフを買い、持ち前のサバイバル能力で身銭を稼ごうとする。しかし狩りの最中に巷で有名な山賊兄弟の弟イアンと遭遇してしまう。何の問題もなくイアンを返り討ちにしたシャロンは、イノシシを狩るなどして生活基盤を築く。 そして商売を始めるのだが――。 これは、天真爛漫の強すぎ令嬢シャロンが逆境に負けず楽しく成り上がる物語。

転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします! 

実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。 冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、 なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。 「なーんーでーっ!」 落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。 ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。 ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。 ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。 セルフレイティングは念のため。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...