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一年目、五歳
第26話 先生にばれるの。
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レイニィは自重なしに風魔法を使って、辺りに天災級の被害をもたらした。
「あ、ごめんなさい。つい、楽しくなって、我を忘れていたわ。じゃない、忘れてたの」
「今更、ブリッコしても駄目だぞ。ダウンバーストとかガストフロントって何だ!」
「ダウンバーストっていうにはね。上昇気流で支えられていた冷たい空気の塊が、上昇気流がなくなって一気に落ちて来ることで、ガストフロント――」
「言葉の意味を聞いたのではない。その知識、どこで手に入れた!」
「……」
レイニィは焦っていた。
どうやって誤魔化そうかと。
だが、この状況で、誤魔化す方法などない。
しかし、そこに助けの手が入った。
何事かと屋敷の者達が見に来たのである。
「どうしたんだ、これは?!」
ゲイルが更地状態になってしまった裏山を見渡して聞いた。
「ごめんなさいなの。魔法の練習が楽しくて、やり過ぎちゃったの」
「レイニィがやったのか? でもこれは、災害級じゃないか――」
「竜巻とか出してましたから、正に災害ですね」
エルダがゲイルに状況を報告する。
「ごめんなさいなの」
「まあ、被害がここだけならいい。それより、レイニィは平気なのか。怪我とかしてないか」
「うん、大丈夫なの」
「そうか、それはよかった。でも、いつ怪我をしてもおかしくなかったんだぞ。こんな危ない魔法は使っちゃ駄目だぞ」
「はい、わかったの」
「わかればよし。それじゃあ屋敷に戻ろう」
ゲイルはレイニィを抱き上げて屋敷に戻っていった。
「しかし凄いな。これが大魔術師の実力か」
「レイニィは『お天気キャスター』を目指しているそうよ」
呆れた様子のドライにミスティが声を掛ける。
「『お天気キャスター』? 何だいそれ?」
「さあ。詳しくは聞いてないから。私が考えるに、大魔術師の上位職じゃないかしら」
「おいおい、大魔術師は上級職だぞ。その上があるのか?」
「でも、レイニィは仮職(プレジョブ)が大魔術師よ。努力次第でその上に行ける可能性がないとはいえないわ」
「それはそうかも知れないが……」
「それに、レイニィは女神の加護で私達の知らない知識を得ているのよ」
「なに! それは本当か?」
ミスティの言葉に、姉弟の話を聞いていたエルダが飛び付いた。
「エルダさん! ええ、レイニィがそう言っていたわ」
「そうか、女神の加護で得た知識なのか……」
「その知識で色んな物を作っているわ。風向風速計だとか湿度計だとか」
「そう言えば、温度計? の材料に必要だとアントを狩りに行ったんだったな。温度計? はできたのか」
ドライは名前だけ聞いて、どんな物かわからなかったが、レイニィがそれを凄く作りたがっていたのを思い出した。
「まだみたい。あの後バタバタしてたから」
「温度計とは何だ」
エルダも温度計を知らなかった。というか、この世界、温度という言葉がなかった。
「暑いとか寒いとかを測る道具みたいですよ」
「暑いとか寒いとかが温度なのだな」
「多分……。詳しくはレイニィに聞いてください」
「ああ、そうだな。そうするか」
(女神の加護による知識が、レイニィの魔術のイメージに影響しているのは間違いない。新しい知識。これは詳しく教えてもらわねば。それに他にも隠していることがある様子だが――)
人の何倍も生きてきたエルダにとって、新たな知識を得る事は掛け替えのない事だった。
レイニィの元に来て正解だったとエルダは思った。
「あ、ごめんなさい。つい、楽しくなって、我を忘れていたわ。じゃない、忘れてたの」
「今更、ブリッコしても駄目だぞ。ダウンバーストとかガストフロントって何だ!」
「ダウンバーストっていうにはね。上昇気流で支えられていた冷たい空気の塊が、上昇気流がなくなって一気に落ちて来ることで、ガストフロント――」
「言葉の意味を聞いたのではない。その知識、どこで手に入れた!」
「……」
レイニィは焦っていた。
どうやって誤魔化そうかと。
だが、この状況で、誤魔化す方法などない。
しかし、そこに助けの手が入った。
何事かと屋敷の者達が見に来たのである。
「どうしたんだ、これは?!」
ゲイルが更地状態になってしまった裏山を見渡して聞いた。
「ごめんなさいなの。魔法の練習が楽しくて、やり過ぎちゃったの」
「レイニィがやったのか? でもこれは、災害級じゃないか――」
「竜巻とか出してましたから、正に災害ですね」
エルダがゲイルに状況を報告する。
「ごめんなさいなの」
「まあ、被害がここだけならいい。それより、レイニィは平気なのか。怪我とかしてないか」
「うん、大丈夫なの」
「そうか、それはよかった。でも、いつ怪我をしてもおかしくなかったんだぞ。こんな危ない魔法は使っちゃ駄目だぞ」
「はい、わかったの」
「わかればよし。それじゃあ屋敷に戻ろう」
ゲイルはレイニィを抱き上げて屋敷に戻っていった。
「しかし凄いな。これが大魔術師の実力か」
「レイニィは『お天気キャスター』を目指しているそうよ」
呆れた様子のドライにミスティが声を掛ける。
「『お天気キャスター』? 何だいそれ?」
「さあ。詳しくは聞いてないから。私が考えるに、大魔術師の上位職じゃないかしら」
「おいおい、大魔術師は上級職だぞ。その上があるのか?」
「でも、レイニィは仮職(プレジョブ)が大魔術師よ。努力次第でその上に行ける可能性がないとはいえないわ」
「それはそうかも知れないが……」
「それに、レイニィは女神の加護で私達の知らない知識を得ているのよ」
「なに! それは本当か?」
ミスティの言葉に、姉弟の話を聞いていたエルダが飛び付いた。
「エルダさん! ええ、レイニィがそう言っていたわ」
「そうか、女神の加護で得た知識なのか……」
「その知識で色んな物を作っているわ。風向風速計だとか湿度計だとか」
「そう言えば、温度計? の材料に必要だとアントを狩りに行ったんだったな。温度計? はできたのか」
ドライは名前だけ聞いて、どんな物かわからなかったが、レイニィがそれを凄く作りたがっていたのを思い出した。
「まだみたい。あの後バタバタしてたから」
「温度計とは何だ」
エルダも温度計を知らなかった。というか、この世界、温度という言葉がなかった。
「暑いとか寒いとかを測る道具みたいですよ」
「暑いとか寒いとかが温度なのだな」
「多分……。詳しくはレイニィに聞いてください」
「ああ、そうだな。そうするか」
(女神の加護による知識が、レイニィの魔術のイメージに影響しているのは間違いない。新しい知識。これは詳しく教えてもらわねば。それに他にも隠していることがある様子だが――)
人の何倍も生きてきたエルダにとって、新たな知識を得る事は掛け替えのない事だった。
レイニィの元に来て正解だったとエルダは思った。
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