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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

101. 新聞記事

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 ニコラスが王都に戻ってからしばらくたった。ニコラスはロザリー様からうまく話がきけただろうか?
 王都に行けない私たちは、真犯人探しを人任せにせざるをえないのがもどかしいところだ。

 何か私にもできることがあればいいのだが、今日もいつもどおりに朝起きて朝食を取った。
 何かできないかと考えながら食堂から部屋に戻る途中、リビングでリヒトが新聞を読んでいるのに気付いた。

「リヒト兄様が新聞を読むなんて珍しいですわね」
「失礼な。このところ毎日読んでるぞ」

「そうでしたの、存じ上げませんでしたわ」
「少しでも情報を集めておかないとな」
 ニコラスに会って、リヒトなりに、やる気を出したのだろうか。

「それで、何か有用な情報がありまして?」
「有用かはわからんが、王都ではまたジャンクキラーの犠牲者がでたようだ」

「まだ捕まってなかったんですね。あの刑事役立たずですね」
 ジャンクキラーは法律で裁けない悪者を狙って殺している。
 悪役令嬢である私は狙われるかもしれないので、早く捕まってほしいのだが。

「それで今回の犠牲者はどんな方でしたの?」
「学園の教授だな。生徒に自爆テロをするように仕向けたらしい」

「そんな方が今まで捕まらなかったんですか?」
「いろいろと黒い噂はあったらしいが、直接本人は手を下していなかったから、証拠がなかったようだ。実行犯の学生は死んでしまったしな」

「それを聞くと殺されても仕方がないように感じますが……」
 私は学園の教授だというのが気になって、リヒトが読んでいる新聞を覗き込む。

 その記事の被害者だとされる教授の写真には見覚えがあった。
 何年か前に、学園の見学に行った時に、図書館で絡んできた教授だった。

 あいつ、こんな悪党だったのか。私が学園に入学する前にいなくなってくれてよかったかも。

「こいつ、お嬢様に絡んできたやつですよね?」
 その時に一緒にいたメイドのサラも記事を見て気付いたようだ。

「バークレイ教授。確かにそんな名前でしたね。間違いありません」
 サラはよく名前まで覚えていたな。

「殺されたのですか。お嬢様にちょっかいかけるなんて私が始末したかったのに」
 おい、おい。そんな物騒なこと言ったら駄目だろう。

「ちょっと待ってください! バークレイ教授が死んだのですか?!」

 今までソファの上で横になってゴロゴロしていたララエルが、急に立ち上がって、私たちが見ていた新聞を奪い取った。

「ララエルの知り合い?」
「それどころではありません! お嬢様、ちょっと一緒に来てください」

 ララエルは私の腕を引っ張ると、リビングを出ると廊下を急いだ。
 どこに行くのかと思えば、そこは私の部屋だった。

「お嬢様大変です。バークレイ教授が死にました!」
「そうね。それは新聞を読んだから知っているわ」
 ララエルは何をそんなに慌てているのだろう?

「お嬢様、台本は読みましたよね」
「ええ、一通り読んだわよ」

「それならなんでそんなに落ち着いていられるんですか?」
「え?」

「バークレイ教授は台本に登場してたでしょ。しかも、主要キャストですよ。モブじゃないんですよ!」
「えー? どこよ? どこに出ているのよ?」
 私は慌てて台本を手に取ると、ページをめくった。

「何言ってるんですか。この、ヒロインを巡り王子と言い争っている教授がバークレイ教授ですよ!」
「このヒロインを陰ながら支えるイケオジがバークレイ教授なの! 明らかにミスキャストでしょ!」

 しかも、ヒロインは光魔法に適正があることがわかり、子爵家の養子になっていたが、元暮らしていた家族は母親だけで、父親は離婚して離れて暮らしていた。その、父親がバークレイ教授なのだ。

「どうするんですか? ストーリーが成り立たなくなりますよ」
「そんなこと、私に言われても……」
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