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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

61. カナリの事情

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(男爵の孫娘、カナリ視点)
 朝起きたら、お父さんが床に血だらけで寝ていた。
 起こしてみたが、まったく起きない。
 今日は仕事が休みだろうか?
 休みの日はいつも一緒に遊んでくれる。
 早く起きてくれないかな。

 しばらくすると、いつもの家政婦のおばさんがやってきた。
 いつも、お父さんが休みの日にはやってこないのに、間違えたのかな?

 おばさんは、お父さんを見ると死んでいると騒ぎ出した。
 すぐに警察官がやって来た。
 お父さんは殺されたらしい。
 犯人を見なかったか聞かれたが、あたしは寝ていたからなにも知らない。

 警察官は部屋中を探し回り、お母さんの宝石を見つけた。
 警察官に怖い顔で「これは何だ」と聞かれたので「お母さんの宝石」と答えた。
 お母さんの宝石は警察官が持っていくらしい。

 でも全然かまわない。
 お母さんは、あたしを産んですぐ死んでしまったらしい。
 だがら、あたしはお母さんをしらない。
 お父さんは、お母さんの宝石を大事にしていたが、あたしには関係なかった。
 私には、お父さんのペンダントがある。
 それがあれば十分だった。

 あたしは警察署に連れて行かれた。悪いことなどしていないのになぜだろう。
 もう、お父さんとは会えないと言われた。
 悲しくなってずっと泣いていた。

 背の高い刑事さんがやってきて、あたしは王都に連れて行かれることになった。
 王都には叔父さんがいるらしい。
 大きな船に乗せられて、海を渡っていく。
 お父さんと暮らした街が遠ざかっていく。

 寂しくなったあたしは、お父さんのペンダントを眺めていた。
 そうしたら、刑事さんにお父さんのペンダントを取られそうになった。
 そこを助けてくれたのが、公爵令嬢のマリー様だった。

 マリー様は、あたしが初めての友達だと言った。
 あたしもマリー様が初めての友達だ。

 お父さんと暮らしていた時は、危ないからと外に出してもらえなかった。
 お父さんと家政婦のおばさん以外の人に会ったことがなかった。
 もちろん、友達なんて一人もいなかった。

 船の次は列車に乗った。列車に乗るのも初めてだった。
 お父さんが死んでから、初めてのことばかりだった。

 王都に着くと、叔父さんの所にいった。
 叔父さんは、あたしが住んでいたのと同じような部屋に住んでいた。
 これから、あたしもここで暮らすのだろうか?

 叔父さんは、お父さんのペンダントを持ているあたしが男爵だと言った。
 男爵になるとお金を返さないといけないらしい。
 だけど、あたしはお金を持っていない。

 お金を返せなければ、鉱山で働かなくてはならないらしい。
 それは、すごく大変なことらしい。

 困っていたら、マリー様がやって来た。
 初めての友達だから、侍女にしてくれるらしい。
 そうすれば、鉱山で働かなくてもいいそうだ。

 あたしは、困った時にいつも助けてくれる、初めてのお友達のマリー様と一緒にいたかった。
「マリー様の侍女になりたい」と言ったら、マリー様は喜んでくれた。

 でも、あたしはマリー様の侍女にはなれなかった。

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