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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
43. 王都の屋敷
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モダンピークから列車で三十二時間、やっと王都の駅に到着した。
その王都の駅から迎えの車で十五分ほど、立派な門構えの大きなお屋敷が見えてきた。
「マリー、到着したぞ」
「はあー。やっとですか。疲れましたわ」
領都の屋敷を出発してから五日目、やっと王都にある屋敷に到着したのだ。
「明日は一日ゆっくり休むといい。王宮には明後日行こう」
「そうしてもらえると助かりますわ」
迎えの車は門を抜けると、玄関前に横付けされた。
「それにしても大きなお屋敷ですね。領都の本宅と変わらないじゃないですか」
「ああ、造りも同じになっているから、いつものように使えるはずだぞ」
「それは、日頃、住んでないのに無駄なような」
「誰も住んでないわけじゃないぞ」
そうだった、こちらには元公爵夫妻、お父様の両親が暮らしているのだった。
それは、つまり、私の父方のお祖父様とお祖母様である。
車から降りると、沢山の使用人と、お祖父様とお祖母様に出迎えられた。
「まあ! この子がマリーなの、なんて可愛らしい」
可愛らしいか?
自慢じゃないけど、子供の頃から老け顔だと言われていたんだが。
日本で子供の頃は、綺麗と言われることは多かったが、可愛いと言われることはなかった。
まあ、お年寄りには、孫はどんなでも可愛いか。
「おお、大きくなって、どれどれ」
お祖父様は私の両脇に手を入れると高い高いをした。
ちょっと、大丈夫? 年を考えてください。年を。
とは言うものの、お祖父様は、二年前のお父様の髪を白髪混じりにした、ロマンスグレーの渋い感じのイケメンだった。
お祖母様に至っては、とてもお祖母様とは呼べない、おばさまと呼ぶのさえ憚れるほど、お肌がツヤツヤして、張りがあった。
「以前に会った時に比べると随分と重くなったな」
私の記憶にはないが、以前にお祖父様たちと会っているのだろう。
以前のことを聞かれたら、不味いような気もするが、子供だから覚えていないでどうにかなるだろう。
それよりも、だ。
「お祖父様、それは、レディに対して失礼ですわ」
「おっと、これは失礼」
お祖父様は私を下ろすと、嬉しそうに笑いながら謝ってくれた。
「マリーはともかく、ロベルトはまた太ってしまったの」
お祖母様がお父様に心配そうに話しかけた。
「リリヤはこの方が好きらしい」
「まー! そうなの? そういうことだったの……」
お祖母様は、お母様がなぜ、お父様を選んだか、今になって気づいたらしい。
まさか、お母様がデブ専なんて、誰も思っていなかったのだろう。
挨拶も済み、私が案内された部屋は、領都の屋敷の私の部屋と同じ場所だった。
部屋の中の、家具の配置なども同じで、これ、ミステリーのトリックに使えるのではないかと思えるほどだった。
そういえば、領都の屋敷に使われていない豪華な部屋があったが、あれは、お祖父様たちの部屋だったようだ。
こちらでは、お祖父様たちが普通に使っていた。
その王都の駅から迎えの車で十五分ほど、立派な門構えの大きなお屋敷が見えてきた。
「マリー、到着したぞ」
「はあー。やっとですか。疲れましたわ」
領都の屋敷を出発してから五日目、やっと王都にある屋敷に到着したのだ。
「明日は一日ゆっくり休むといい。王宮には明後日行こう」
「そうしてもらえると助かりますわ」
迎えの車は門を抜けると、玄関前に横付けされた。
「それにしても大きなお屋敷ですね。領都の本宅と変わらないじゃないですか」
「ああ、造りも同じになっているから、いつものように使えるはずだぞ」
「それは、日頃、住んでないのに無駄なような」
「誰も住んでないわけじゃないぞ」
そうだった、こちらには元公爵夫妻、お父様の両親が暮らしているのだった。
それは、つまり、私の父方のお祖父様とお祖母様である。
車から降りると、沢山の使用人と、お祖父様とお祖母様に出迎えられた。
「まあ! この子がマリーなの、なんて可愛らしい」
可愛らしいか?
自慢じゃないけど、子供の頃から老け顔だと言われていたんだが。
日本で子供の頃は、綺麗と言われることは多かったが、可愛いと言われることはなかった。
まあ、お年寄りには、孫はどんなでも可愛いか。
「おお、大きくなって、どれどれ」
お祖父様は私の両脇に手を入れると高い高いをした。
ちょっと、大丈夫? 年を考えてください。年を。
とは言うものの、お祖父様は、二年前のお父様の髪を白髪混じりにした、ロマンスグレーの渋い感じのイケメンだった。
お祖母様に至っては、とてもお祖母様とは呼べない、おばさまと呼ぶのさえ憚れるほど、お肌がツヤツヤして、張りがあった。
「以前に会った時に比べると随分と重くなったな」
私の記憶にはないが、以前にお祖父様たちと会っているのだろう。
以前のことを聞かれたら、不味いような気もするが、子供だから覚えていないでどうにかなるだろう。
それよりも、だ。
「お祖父様、それは、レディに対して失礼ですわ」
「おっと、これは失礼」
お祖父様は私を下ろすと、嬉しそうに笑いながら謝ってくれた。
「マリーはともかく、ロベルトはまた太ってしまったの」
お祖母様がお父様に心配そうに話しかけた。
「リリヤはこの方が好きらしい」
「まー! そうなの? そういうことだったの……」
お祖母様は、お母様がなぜ、お父様を選んだか、今になって気づいたらしい。
まさか、お母様がデブ専なんて、誰も思っていなかったのだろう。
挨拶も済み、私が案内された部屋は、領都の屋敷の私の部屋と同じ場所だった。
部屋の中の、家具の配置なども同じで、これ、ミステリーのトリックに使えるのではないかと思えるほどだった。
そういえば、領都の屋敷に使われていない豪華な部屋があったが、あれは、お祖父様たちの部屋だったようだ。
こちらでは、お祖父様たちが普通に使っていた。
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