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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

30. 副作用

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 サラを使った人体実験の結果、人間にも確かに効果があることが確認できたが、三回目の魔法をかけた翌朝、問題があることが判明した。
 闇の身体強化魔法には副作用があったのだ。

「お嬢様、おはようございます。朝ですよ。起きてください!」
「サラは今朝も元気ね……」

「お嬢様に御呪いおまじないをかけてもらってから毎朝元気いっぱいです」
「そう、それは良かったわ」

「それにしてもお嬢様の御呪いは凄いですね。朝気持ちよく起きられるだけでなく、髪の艶もよくなったんですよ」
「へー、そうなの? そういえば、黒くて艶のある髪になったわね……。黒くて? サラ! あなたの髪、もっと茶色くなかった?」

「そう言われれば、前より黒くなった気がしますね」
「変わったのは髪だけ? 瞳の色や皮膚の色に違いはない?」

 サラは、部屋の姿見で自分の様子を入念に確認する。
「髪の毛の色以外には変わりがありませんね」
「そう、ひとまず副作用が髪だけでよかったわ。さら、ごめんなさい」

「お嬢さんが謝る必要は、ありません。私のことを心配して御呪いをかけてくれたのですから」
「それが違うの。御呪いじゃなく、闇魔法だし、サラのことを心配したわけではなく、サラのことを黙った実験体にしたのよ、私は」

「お嬢さんは闇魔法が使えるようになったんですか! おめでとうございます! 皆に知らせてお祝いしなくちゃ」
 普通なら怒るところなのに、サラは実験体にされたことをまったく気にしていないようです。それどころか、私が闇魔法を使えるようになったことを喜んでいます。

「待って、待って。皆には黙っていて!」
 私は、事の経緯をサラに説明します。

「つまり、危険だからと止められていたのに、闇魔法を独学で習得したと。やっぱりお嬢様は凄いです」
「いや、そうでなくてね。危険かもしれないのにサラに闇魔法を使ったのよ。ここは怒るところでしょ」

「それって、私が栄えある実験体第一号ってことですよね。誇らしく思うことはあっても、怒るところではないと思いますが?」
「サラ、あのね……。はぁー。まあ、サラがそれでいいならもういいわ」

「フフフ。私が実験体第一号。お嬢様の特別」
「ああ、実験体第一号は厩舎にいる仔馬だから」

「えっ! 私は馬の次……。お嬢さんの特別は仔馬? お嬢様ー。なんで私を最初にしてくれなかったんですかー!」

 あー。もう、なんだかな。サラってこんなに面倒くさい性格だったのか。
 これからは、付き合い方を考えなければ。

「それで、お嬢様、私からお嬢様の一番を奪った仔馬はどの仔馬ですか?」
「栗毛の仔馬だけど、そういえば、仔馬も最近黒っぽくなっていたような……。確認する必要があるわね」
 もし仔馬も黒毛になっていれば、闇魔法には髪の毛を黒くする副作用あるといって差し支えないだろう。

 私とサラは連れ立って厩舎に行くと、仔馬の毛の色を確認した。
 元々栗毛だった仔馬は、今は黒鹿毛になっていた。
 これで、副作用があることはほぼ確定だ。
 副作用があるのにお父様に闇魔法は使えない。どうしたものかな……。

 ところで、サラ、仔馬に喧嘩を売るのは止めてちょうだい。

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