37 / 55
第一部 借金奴隷編
第30話 森の魔獣
しおりを挟む
続けざまに「学園」の夢を見てしまいましたが、昨日とは違い、寝苦しかったわけではなく、朝の目覚めはスッキリしています。
今日もベッドの端に座って、マーサルと今日の予定を決めます。
「だいぶ狩にも慣れてきたから、今日は森に入ってみようと思うのだけど、どうかしら?」
「いいんじゃないかな。森の方が稼げるんだろ?」
「そうね。森の方が、獲物の数も質も上だし、魔獣が出てくる可能性もあるわ」
「その、魔獣というのは何なんだい? 普通の獣と違うのか?」
「そうね。早い話、獣の中で魔法が使える個体が魔獣よ。
魔法で攻撃してきたり、身体強化をしているから、普通の個体より強いわ。
強い個体だから、当然大きくもなるし、体が変化していたりするわね」
「大きくなるだけじゃなく、体が変化もするのか?」
「ウサギに角が生えたホーンラビットとか、シルバーウルフは狼なのに体毛が銀色に変わっているわ」
「なるほどね――」
「当然、魔獣の方が質の高い素材が取れるし、狩るのも大変だから高く売れるわ」
「そうなると、実力が有れば魔獣を狙った方がいいわけか――」
「実力が有ればね――。実力がなければ、狩られるのはこっちになるわ」
「僕たちの実力で魔獣を相手にできるのかい?」
「ものによるわ。マーサルなら、アイスアローでホーンラビットなら、簡単に仕留められるだろうし、シルバーウルフは単体ならいいけど、群れになると厳しいかも。
その辺の選択は、知覚強化で、私が上手くやるわ」
「頼りにしているよ」
「それじゃあ、今日は森に行くことでいいわね?」
「いいとも!」
朝食を食べた後、いつも通り、ギルドで情報をチェックしてから、森に向かいます。
ギルドでは、少し気になる噂話しが聞こえてきました。
ミマスのギルドで取り付け騒ぎが起こり、窓口が閉鎖されたというものでした。
一体何があったのでしょう?
クビになった身としては今更ですが、心配になってしまいます。
とは言っても、今の私にできることはありません。そのまま森に向かいました。
森に着くと、私は知覚強化を駆使して、獲物を探します。
見つけると、隠れ身で姿を隠して獲物に近付きます。
逃げられないようにするというよりは、不意打ちを食らわせるためです。
森の獣は逃げるより、襲ってくるものが多いですし、魔獣は基本、襲ってくるものしかいません。
森での最初に見つけたのは、あの時、護送中に襲ってきたのと同じシルバーウルフでした。
周囲に他の気配がありませんから、群れの一員ではなく、一匹狼なのでしょうか? こちらとしては好都合です!
「マーサル、シルバーウルフがいたわ、都合よく一匹よ!」
「了解。じゃあやるよ!」
予め決めておいた手筈通りに、マーサルがアイスアローで攻撃します。
眉間を目掛けての攻撃でしたが、姿を隠していたのにもかかわらず、勘づかれて躱されてしまいます。
続いて私がグレイブで斬りつけます。
首を狙った攻撃でしたが、これもすんでのところで躱されてしまい、逆にシルバーウルフが私に襲い掛かってきます。
グレイブの柄でもって攻撃を凌ぎますが、体重の軽い私は押し負けして、体勢が崩れてしまいます。
このままでは不味いと、思ったところに、マーサルが剣でシルバーウルフに斬りかかります。
マーサルの剣はシルバーウルフの右肩辺りを掠めましたが、シルバーウルフがすかさず距離をとったため、致命傷にはなりません。
マーサルが私を背に守りながら、剣をシルバーウルフに向け対峙します。
私は体勢を立て直して、次の攻撃に備えながら、有効な攻撃方法はないか考えます。
私に可能な攻撃となると、後は、なんちゃってファイヤボールです。
これなら、当たれば消し炭でしょうが、それでは素材が取れません。
ですが、今はそんなことを言っている場合ではありません。生き残ることを優先しなければ。
それに、当たらなければ意味がありません。
私は両手に一つずつ、合計二つのなんちゃってファイヤボールを作り出し、シルバーウルフに投げつけます。
「ファイヤボール擬×二!!」
向かってくる二つのファイヤボール擬をシルバーウルフは躱します。
躱されることは織り込み済みの私は、ファイヤボール擬の進路を変えて、シルバーウルフを追尾させます。
それでも何度かファイヤボール擬を躱したシルバーウルフでしたが、流石に二つの同時の追撃は躱しきれず、ついにはファイヤボール擬を受け消し炭となってしまいました。
「なんとか倒せたけど、消し炭になっちゃたわ。ごめんなさい……」
「いや、今のは危なかったからね。むしろ、助かったよ。怪我はなかったかい?」
「私は大丈夫。マーサルは……」
私たちはお互いの無事を確認していると、突然大きなファンファーレが鳴り響きました。
『パンパカパン! おめでとうございます! レベルが五つ上がりました!』
「いったい何事?」
私とマーサルは顔を見合わせます。
今日もベッドの端に座って、マーサルと今日の予定を決めます。
「だいぶ狩にも慣れてきたから、今日は森に入ってみようと思うのだけど、どうかしら?」
「いいんじゃないかな。森の方が稼げるんだろ?」
「そうね。森の方が、獲物の数も質も上だし、魔獣が出てくる可能性もあるわ」
「その、魔獣というのは何なんだい? 普通の獣と違うのか?」
「そうね。早い話、獣の中で魔法が使える個体が魔獣よ。
魔法で攻撃してきたり、身体強化をしているから、普通の個体より強いわ。
強い個体だから、当然大きくもなるし、体が変化していたりするわね」
「大きくなるだけじゃなく、体が変化もするのか?」
「ウサギに角が生えたホーンラビットとか、シルバーウルフは狼なのに体毛が銀色に変わっているわ」
「なるほどね――」
「当然、魔獣の方が質の高い素材が取れるし、狩るのも大変だから高く売れるわ」
「そうなると、実力が有れば魔獣を狙った方がいいわけか――」
「実力が有ればね――。実力がなければ、狩られるのはこっちになるわ」
「僕たちの実力で魔獣を相手にできるのかい?」
「ものによるわ。マーサルなら、アイスアローでホーンラビットなら、簡単に仕留められるだろうし、シルバーウルフは単体ならいいけど、群れになると厳しいかも。
その辺の選択は、知覚強化で、私が上手くやるわ」
「頼りにしているよ」
「それじゃあ、今日は森に行くことでいいわね?」
「いいとも!」
朝食を食べた後、いつも通り、ギルドで情報をチェックしてから、森に向かいます。
ギルドでは、少し気になる噂話しが聞こえてきました。
ミマスのギルドで取り付け騒ぎが起こり、窓口が閉鎖されたというものでした。
一体何があったのでしょう?
クビになった身としては今更ですが、心配になってしまいます。
とは言っても、今の私にできることはありません。そのまま森に向かいました。
森に着くと、私は知覚強化を駆使して、獲物を探します。
見つけると、隠れ身で姿を隠して獲物に近付きます。
逃げられないようにするというよりは、不意打ちを食らわせるためです。
森の獣は逃げるより、襲ってくるものが多いですし、魔獣は基本、襲ってくるものしかいません。
森での最初に見つけたのは、あの時、護送中に襲ってきたのと同じシルバーウルフでした。
周囲に他の気配がありませんから、群れの一員ではなく、一匹狼なのでしょうか? こちらとしては好都合です!
「マーサル、シルバーウルフがいたわ、都合よく一匹よ!」
「了解。じゃあやるよ!」
予め決めておいた手筈通りに、マーサルがアイスアローで攻撃します。
眉間を目掛けての攻撃でしたが、姿を隠していたのにもかかわらず、勘づかれて躱されてしまいます。
続いて私がグレイブで斬りつけます。
首を狙った攻撃でしたが、これもすんでのところで躱されてしまい、逆にシルバーウルフが私に襲い掛かってきます。
グレイブの柄でもって攻撃を凌ぎますが、体重の軽い私は押し負けして、体勢が崩れてしまいます。
このままでは不味いと、思ったところに、マーサルが剣でシルバーウルフに斬りかかります。
マーサルの剣はシルバーウルフの右肩辺りを掠めましたが、シルバーウルフがすかさず距離をとったため、致命傷にはなりません。
マーサルが私を背に守りながら、剣をシルバーウルフに向け対峙します。
私は体勢を立て直して、次の攻撃に備えながら、有効な攻撃方法はないか考えます。
私に可能な攻撃となると、後は、なんちゃってファイヤボールです。
これなら、当たれば消し炭でしょうが、それでは素材が取れません。
ですが、今はそんなことを言っている場合ではありません。生き残ることを優先しなければ。
それに、当たらなければ意味がありません。
私は両手に一つずつ、合計二つのなんちゃってファイヤボールを作り出し、シルバーウルフに投げつけます。
「ファイヤボール擬×二!!」
向かってくる二つのファイヤボール擬をシルバーウルフは躱します。
躱されることは織り込み済みの私は、ファイヤボール擬の進路を変えて、シルバーウルフを追尾させます。
それでも何度かファイヤボール擬を躱したシルバーウルフでしたが、流石に二つの同時の追撃は躱しきれず、ついにはファイヤボール擬を受け消し炭となってしまいました。
「なんとか倒せたけど、消し炭になっちゃたわ。ごめんなさい……」
「いや、今のは危なかったからね。むしろ、助かったよ。怪我はなかったかい?」
「私は大丈夫。マーサルは……」
私たちはお互いの無事を確認していると、突然大きなファンファーレが鳴り響きました。
『パンパカパン! おめでとうございます! レベルが五つ上がりました!』
「いったい何事?」
私とマーサルは顔を見合わせます。
11
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜
和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。
与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。
だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。
地道に進む予定です。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる