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第一部 借金奴隷編
第9話 偽装工作
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「それで、話はそれちゃったけど、ミハルは何で檻に閉じ込められていたの?」
「ミハルじゃないし! プランタニエだし!」
「まあまあ。愛称だと思って気にしない、気にしない」
私は森の奥で出会った、黒髪だった青年に膨れっ面をします。
年下のくせに生意気です!
「それで、なんで?」
私は事情を説明します。
「つまり、ミハルは冤罪で捕まって護送中だったと」
「そうね。そして護送を担当していた冒険者は、魔獣に襲われてみんな死んでしまった。私を檻に入れたまま。ということよ」
「なるほど。それでこれからミハルはどうするの?」
「そうね。このままここにいると、また魔獣に襲われかねないから、急いで村まで移動して、その後は王都を目指すわ」
「村は近いのか?」
「今から出れば徒歩でも陽がある内に辿り着けるはずよ」
「それじゃあすぐに出発しよう」
「ちょっと待って! いくらなんでも武器も何も持たず手ぶらじゃ不自然よ!」
「そうだな。魔獣が出るんだっけ?」
「それと、あなたはお金を持ってるの?」
「ああ、日本のお金なら持ってるが、使えないよな……」
「お金はどうしても必要になるわ。気が進まないけど、彼らのものを頂戴していきましょう」
「仕方ないか……」
私たちは、男たちの持ち物から必要な物を拝借して、村を目指して歩き出しました。
「王都を目指すと言っていたが、王都に何か当てがあるのか?」
歩きながら、彼は私に話しかけてきます。
「別に当てがあるわけじゃないわ。私は不本意ながら逃亡者になってしまったからね。身を隠すなら人の出入りが多い所の方が見つかりにくいでしょ」
「自首するわけじゃないんだ」
「やってもいないのに借金奴隷になるなんてまっぴらよ! それに、黒髪じゃあなくなったから、簡単には見つからないわ」
「それなら名前も変えたほうがいいよね? 僕にお勧めの名前があるんだけど」
「ハイハイ。わかったわ。どうせ『ミハル』でしょう。もうそれでいいわ。これからはそう名乗るわ」
「ピッタリだよ『ミハル』。ついでに僕のことは『まーお兄さま』と呼んでよ」
「え。それはちょっと……」
「だけど、兄妹だとしておけば怪しまれなくて済むよ」
「それはそうかもだけど、私の方が歳上でしょ」
というか、これは、いつの間にか一緒に行く流れになっていますね。
「でも、見た目は十代前半だし。ついでに年齢も詐称しちゃえば?」
「それは自尊心が大きく傷付くんだけど」
「安全な逃亡生活のためと思って腹を括れば」
「うーん。じゃあ。十六歳で!」
「おー。妹、決定!」
「だからって『まーお兄さま』とは呼ばないわよ」
「えー。そこをなんとか」
「無理無理。そうね。マーサルと呼ぶことにするわ」
「マサルなんだけど……」
少し歩くと、リリーが馬車から落とされた場所に血の跡が残されていました。
知覚強化で慎重に周囲を探しましたが、シルバーウルフは確認できなかったので、先に進みます。
その先はケリー君とローズが残された場所です。
血の痕と、彼と彼女が身につけていた物が血だらけになり散乱していました。
「マーサル。少し待って!二人の冒険者カードがあるはずだから探してちょうだい」
「持って帰るのか?」
「いえ、私たちの身分証を偽造するわ。王都に入るときには身元を証明する物が必要となるのよ。マーサルもこの国で使えるものは持ってないでしょ?」
「身分証か。日本の学生証じゃ駄目だろうな……」
「日本語で書かれていたら使えないわね」
私たちは周囲を調べてケリー君とローズの冒険者カードを手に入れました。
「でも、なんでこの二人の冒険者カードなんだ? 最初の場所にも冒険者カードがあっただろう」
「こちらの二人はDランク、向こうはBランクだったのよ。
FからDランクは鉄のカードだけど、Bランクは銀のカードなのよ。
それに、Cランク以上のカードは魔道具なの。特別な機能が付随しているわ。例えば偽造防止とか。
鉄のカードはそういった機能のないただの板なの」
「ということは偽造し放題なのか?」
「そう簡単にはいかないわよ。発行元に照会されればバレるわ。まあ、普通はそんな面倒なことしないけど」
「ふーん。随分と詳しいんだな?」
「ギルドの受付嬢をしていたのだもの、当然知ってるわよ(エッヘン!)」
「ああ、そうだったな」
その後しばらく歩くと、森の脇道から街道に出ました。途中で魔獣を感知しましたが、戦わず、魔法で姿を隠してやり過ごしました。
私たちは、会話を楽しみながら歩いている内に、なんとか暗くなる前に村が見えてきました。
「村に入るのには身分証は要らないのか?」
「特別なことが起きていなければ、普通は要らないわ」
「特別なこと?」
「犯罪者が逃走して潜伏中とか」
「ここに逃走中の人がいるんだけど」
「……」
「身分証を用意しておいたほうが良くないか?」
「まあ、どのみち王都では必要になるわけだし。チャチャッと偽造するわよ」
名前と年齢、ギルドランク、所属パーティ、それと発行元を偽造します。
魔力操作SSSの私に掛かればギルドカードの偽造なんか朝飯前です。
名前:ミハル
性別:女性
年齢:十六歳
ギルドランク:F
所属パーティ:なし
発行元:ディスノミア
性別以外すべて書き換えることになってしまいました。
発行元の「ディスノミア」は、隣国の開拓村でしたが、二年前魔物に襲われて壊滅しています。
冒険者ギルドの支部もありましたが、記録も含めて跡形もなくなってしまったのです。
ここなら、照会のしようがないので、偽造がバレる心配はありません。
続いてマーサルのギルドカードも偽造します。
これで準備オッケーです。
「ミハルじゃないし! プランタニエだし!」
「まあまあ。愛称だと思って気にしない、気にしない」
私は森の奥で出会った、黒髪だった青年に膨れっ面をします。
年下のくせに生意気です!
「それで、なんで?」
私は事情を説明します。
「つまり、ミハルは冤罪で捕まって護送中だったと」
「そうね。そして護送を担当していた冒険者は、魔獣に襲われてみんな死んでしまった。私を檻に入れたまま。ということよ」
「なるほど。それでこれからミハルはどうするの?」
「そうね。このままここにいると、また魔獣に襲われかねないから、急いで村まで移動して、その後は王都を目指すわ」
「村は近いのか?」
「今から出れば徒歩でも陽がある内に辿り着けるはずよ」
「それじゃあすぐに出発しよう」
「ちょっと待って! いくらなんでも武器も何も持たず手ぶらじゃ不自然よ!」
「そうだな。魔獣が出るんだっけ?」
「それと、あなたはお金を持ってるの?」
「ああ、日本のお金なら持ってるが、使えないよな……」
「お金はどうしても必要になるわ。気が進まないけど、彼らのものを頂戴していきましょう」
「仕方ないか……」
私たちは、男たちの持ち物から必要な物を拝借して、村を目指して歩き出しました。
「王都を目指すと言っていたが、王都に何か当てがあるのか?」
歩きながら、彼は私に話しかけてきます。
「別に当てがあるわけじゃないわ。私は不本意ながら逃亡者になってしまったからね。身を隠すなら人の出入りが多い所の方が見つかりにくいでしょ」
「自首するわけじゃないんだ」
「やってもいないのに借金奴隷になるなんてまっぴらよ! それに、黒髪じゃあなくなったから、簡単には見つからないわ」
「それなら名前も変えたほうがいいよね? 僕にお勧めの名前があるんだけど」
「ハイハイ。わかったわ。どうせ『ミハル』でしょう。もうそれでいいわ。これからはそう名乗るわ」
「ピッタリだよ『ミハル』。ついでに僕のことは『まーお兄さま』と呼んでよ」
「え。それはちょっと……」
「だけど、兄妹だとしておけば怪しまれなくて済むよ」
「それはそうかもだけど、私の方が歳上でしょ」
というか、これは、いつの間にか一緒に行く流れになっていますね。
「でも、見た目は十代前半だし。ついでに年齢も詐称しちゃえば?」
「それは自尊心が大きく傷付くんだけど」
「安全な逃亡生活のためと思って腹を括れば」
「うーん。じゃあ。十六歳で!」
「おー。妹、決定!」
「だからって『まーお兄さま』とは呼ばないわよ」
「えー。そこをなんとか」
「無理無理。そうね。マーサルと呼ぶことにするわ」
「マサルなんだけど……」
少し歩くと、リリーが馬車から落とされた場所に血の跡が残されていました。
知覚強化で慎重に周囲を探しましたが、シルバーウルフは確認できなかったので、先に進みます。
その先はケリー君とローズが残された場所です。
血の痕と、彼と彼女が身につけていた物が血だらけになり散乱していました。
「マーサル。少し待って!二人の冒険者カードがあるはずだから探してちょうだい」
「持って帰るのか?」
「いえ、私たちの身分証を偽造するわ。王都に入るときには身元を証明する物が必要となるのよ。マーサルもこの国で使えるものは持ってないでしょ?」
「身分証か。日本の学生証じゃ駄目だろうな……」
「日本語で書かれていたら使えないわね」
私たちは周囲を調べてケリー君とローズの冒険者カードを手に入れました。
「でも、なんでこの二人の冒険者カードなんだ? 最初の場所にも冒険者カードがあっただろう」
「こちらの二人はDランク、向こうはBランクだったのよ。
FからDランクは鉄のカードだけど、Bランクは銀のカードなのよ。
それに、Cランク以上のカードは魔道具なの。特別な機能が付随しているわ。例えば偽造防止とか。
鉄のカードはそういった機能のないただの板なの」
「ということは偽造し放題なのか?」
「そう簡単にはいかないわよ。発行元に照会されればバレるわ。まあ、普通はそんな面倒なことしないけど」
「ふーん。随分と詳しいんだな?」
「ギルドの受付嬢をしていたのだもの、当然知ってるわよ(エッヘン!)」
「ああ、そうだったな」
その後しばらく歩くと、森の脇道から街道に出ました。途中で魔獣を感知しましたが、戦わず、魔法で姿を隠してやり過ごしました。
私たちは、会話を楽しみながら歩いている内に、なんとか暗くなる前に村が見えてきました。
「村に入るのには身分証は要らないのか?」
「特別なことが起きていなければ、普通は要らないわ」
「特別なこと?」
「犯罪者が逃走して潜伏中とか」
「ここに逃走中の人がいるんだけど」
「……」
「身分証を用意しておいたほうが良くないか?」
「まあ、どのみち王都では必要になるわけだし。チャチャッと偽造するわよ」
名前と年齢、ギルドランク、所属パーティ、それと発行元を偽造します。
魔力操作SSSの私に掛かればギルドカードの偽造なんか朝飯前です。
名前:ミハル
性別:女性
年齢:十六歳
ギルドランク:F
所属パーティ:なし
発行元:ディスノミア
性別以外すべて書き換えることになってしまいました。
発行元の「ディスノミア」は、隣国の開拓村でしたが、二年前魔物に襲われて壊滅しています。
冒険者ギルドの支部もありましたが、記録も含めて跡形もなくなってしまったのです。
ここなら、照会のしようがないので、偽造がバレる心配はありません。
続いてマーサルのギルドカードも偽造します。
これで準備オッケーです。
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