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第一部 借金奴隷編
第1話 受付嬢
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受付のカウンターで、Aランクパーティ「雷光の隼」のリーダー、ハベルトさんが、私の前に依頼完了報告書を差し出します。
ここは、「ジュピタニア王国」の中で、東方に位置する中核都市「ミマス」の冒険者ギルドです。ここで、私は受付嬢をしています。
「プランさん、これ頼むわ」
「はい、依頼完了ですね。報酬の分配はいつも通りでいいですか?」
「ああ、それで頼む」
私は、ギルドの手数料と税金を引いた報酬額から、十五パーセントをパーティの口座に振り込み、残りを四等分にし、端数が出ればそれもパーティ口座へ、四等分した報酬は、パーティメンバーの四人それぞれに、希望額を貨幣で用意し、残りは個人ごとの口座に振り込みます。
「あ、俺は今回大銀貨二枚余計に頼む」
「サベロ、あなた無駄遣いのしすぎよ」
「少しくらいいいだろう、自分の取り分なんだから!」
「後で私に泣きつかないでよね」
「泣きつくとしても、ヤリスでなく、ブローネにするさ」
「なんですって!!」
雷光の隼は男女二人ずつの四人パーティです。
いつも賑やかで、良いパーティです。
「はい、用意できました。サベロさんはいつもより大銀貨二枚多めです」
「お、サンキュー」
「いつも計算が早くて助かるよ」
「そうね。正確だし。ありがとう」
「どういたしまして」
「それに、他の受付嬢と違って、ハベルトに色目を使わないしね」
「「ハハハ」」
私とハベルトさんの引き攣った笑いが重なります。
私のこの見た目では、色目を使ったところで気を引くことはできないでしょうからね。
「プー。ギルマスが上で呼んでるわよ」
そこに、声をかけてきたのは、同期で同じ受付嬢のマリーさんです。
私のことを「プー」と呼ぶのは、マリーさん、彼女だけです。
私の名前は、プランタニエ。
周りからは「プラン」とか「タニエ」と呼ばれているのですが……。
親しみを込めて呼ばれるのならいいのですが、彼女の場合、小バカにしたように呼んでくるので、こちらとしては気分が良くありません。
「わかったわ、マリーさん」
それでも同じギルドの職員です。愛想良く返事をして受付の席を立ちます。
「プー。そこ代わるわよ。
ハベルトさん~。お久しぶりですぅ。プーなんかじゃなくてぇ、私を指名してくれればいいのにぃ。いろいろサービスしちゃいますよ~」
私がいた所にマリーさんが入って、ハベルトさんに話しかけますが、ヤリスさんが構わずそれを遮ります。
「もう用事は済んでるから! 行くわよ、ハベルト!」
「お、おう」
ヤリスさんはお怒りモードですね。マリーさんは色目を使ってくる筆頭ですからね。無理もありません。
「何よ。プー!! 用事が済んだなら、しゃべってないで、次の仕事をしなさいよね!!」
「今度から気をつけるわ。それじゃあギルマスのところにいってくるわね」
こちらにとばっちりが飛んできたので、早々に逃げ出します。
「大体何でプーのくせにAランクパーティの対応してるのよ! 生意気よ!!」
マリーさんの方はまだ不満が収まらないようです。
私はマリーさんを放って、さっさとギルドマスターの部屋がある二階に向かいます。
「ギルマスから呼び出しだって。『黒不浄』ったら何したのかしら?」
「まあ、彼女は『閉じられた本』だからな」
離れた席から私への影口が聞こえてきます。
まあ、いつものことなので余り気になりません。
ヒトは、自分と違うものを排除しようとするものなのです。
子供の頃から充分に学びました。
私は、まだ一才にも満たない幼い時に森で冒険者に拾われ、孤児院で育ちました。
何故両親が私を捨てたのかは、本当の理由はわかりません。
でも、私が「ヒト」とは違ったからではないかと今は思っています。
私の外見は、ストレートの髪に鋭い切れ長の目、それだけでも見た目が冷たく見えるのに、その両方が真っ黒なのです。
黒髪と黒い瞳はこの街では私以外見たことがありません。国じゅう探しても他にいないかもしれません。
それ程、黒髪と黒い瞳は珍しいものです。
マリーさんのように、ローズゴールド色のフワフワの髪に、愛らしいつぶらな瞳だったらどんなに良かったかと、何度考えたことでしょう。
それに加えて、私の耳は少し尖っています。
耳が尖っているのはエルフの特徴です。
しかし、私の耳はそこまで尖っていません。ほんの少しヒトの耳に比べ尖っているだけです。
それにエルフは金髪と決まっています。肌の黒いダークエルフは銀髪です。
ですので、私はエルフとのハーフかクォーターではないかと、周りから言われています。
二十歳を過ぎているのに、未だに十代前半に間違われるのは、きっとエルフの血が混じっているせいだと、いつも自分に言い聞かせています。
あと何年かすれば、マリーさんに負けない魅惑的なスタイルになるはずだと。
それと、エルフの血のせいなのか、私の魔力制御の能力は非常に高く、最高位のSSS(スリーエス)ランクです。
これで魔力も多ければ大魔道士として、王宮に仕えることもできたのでしょうが、世の中そんなに甘くありませんでした。
私の魔力量は非常に少なく、普通の人が百前後なのに対して、私は一桁しかありません。
そのため、魔力制御がSSSでも、初級魔法もろくに使えないのです。
まさに宝の持ち腐れ「閉じられた本」とはよく言い現わしたものです。
ですが、自分なりに少ない魔力でも使える魔法の研究に取り組んでいるのですが、それは内緒です。
だって、その研究した魔法のおかげで、他の職員より仕事が早いため、ギルドで雇ってもらえているのですから。
誰もが私と同じだけ仕事ができるようになったら、見た目がアレな私はクビになってしまいます。
なにせ、見た目がアレなせいで、孤児院でも、冒険者ギルドに就職してからも、無視されたり、陰口を叩かれたり、虐められたり、数々の嫌がらせを受けてきました。
特に孤児院にいた子供時代には、変わった夢を見て、それを考えなしにしゃべって回っていたので、頭のおかしい子と思われていたかもしれません。
孤児院の先生も、私の夢の話を聞いて苦笑いをしていました。
夢の中で私は、「日本」という国に住み、「学園」という所に通っていました。
大変裕福な家庭の一人娘で、好き放題、我が儘放題で過ごしていました。
そこでは、この国では見たことがない不思議な機械で溢れていて、食べたこともない美味しいものをお腹いっぱい食べていました。
きっと私の願望がそんな夢をみせたのでしょう。
ただ、夢の中でも、両親とはなかなか一緒に過ごす機会がありませんでした。
両親に育てられていないところだけは、今と変わりませんでした。
しかし、今考えると苦笑いしたくなるような夢です。
こんな国が現実にあるとはとても思えません。
子供の想像力ってすごいですね。
さて、陰口のことは気にせず、私はマリーさんに受付カウンターを任せて、二階にあるギルドマスターの部屋に向かいます。
ギルマスからの呼び出しということなら、心当たりがありました。
先日報告した例の件だと思われます。
ここは、「ジュピタニア王国」の中で、東方に位置する中核都市「ミマス」の冒険者ギルドです。ここで、私は受付嬢をしています。
「プランさん、これ頼むわ」
「はい、依頼完了ですね。報酬の分配はいつも通りでいいですか?」
「ああ、それで頼む」
私は、ギルドの手数料と税金を引いた報酬額から、十五パーセントをパーティの口座に振り込み、残りを四等分にし、端数が出ればそれもパーティ口座へ、四等分した報酬は、パーティメンバーの四人それぞれに、希望額を貨幣で用意し、残りは個人ごとの口座に振り込みます。
「あ、俺は今回大銀貨二枚余計に頼む」
「サベロ、あなた無駄遣いのしすぎよ」
「少しくらいいいだろう、自分の取り分なんだから!」
「後で私に泣きつかないでよね」
「泣きつくとしても、ヤリスでなく、ブローネにするさ」
「なんですって!!」
雷光の隼は男女二人ずつの四人パーティです。
いつも賑やかで、良いパーティです。
「はい、用意できました。サベロさんはいつもより大銀貨二枚多めです」
「お、サンキュー」
「いつも計算が早くて助かるよ」
「そうね。正確だし。ありがとう」
「どういたしまして」
「それに、他の受付嬢と違って、ハベルトに色目を使わないしね」
「「ハハハ」」
私とハベルトさんの引き攣った笑いが重なります。
私のこの見た目では、色目を使ったところで気を引くことはできないでしょうからね。
「プー。ギルマスが上で呼んでるわよ」
そこに、声をかけてきたのは、同期で同じ受付嬢のマリーさんです。
私のことを「プー」と呼ぶのは、マリーさん、彼女だけです。
私の名前は、プランタニエ。
周りからは「プラン」とか「タニエ」と呼ばれているのですが……。
親しみを込めて呼ばれるのならいいのですが、彼女の場合、小バカにしたように呼んでくるので、こちらとしては気分が良くありません。
「わかったわ、マリーさん」
それでも同じギルドの職員です。愛想良く返事をして受付の席を立ちます。
「プー。そこ代わるわよ。
ハベルトさん~。お久しぶりですぅ。プーなんかじゃなくてぇ、私を指名してくれればいいのにぃ。いろいろサービスしちゃいますよ~」
私がいた所にマリーさんが入って、ハベルトさんに話しかけますが、ヤリスさんが構わずそれを遮ります。
「もう用事は済んでるから! 行くわよ、ハベルト!」
「お、おう」
ヤリスさんはお怒りモードですね。マリーさんは色目を使ってくる筆頭ですからね。無理もありません。
「何よ。プー!! 用事が済んだなら、しゃべってないで、次の仕事をしなさいよね!!」
「今度から気をつけるわ。それじゃあギルマスのところにいってくるわね」
こちらにとばっちりが飛んできたので、早々に逃げ出します。
「大体何でプーのくせにAランクパーティの対応してるのよ! 生意気よ!!」
マリーさんの方はまだ不満が収まらないようです。
私はマリーさんを放って、さっさとギルドマスターの部屋がある二階に向かいます。
「ギルマスから呼び出しだって。『黒不浄』ったら何したのかしら?」
「まあ、彼女は『閉じられた本』だからな」
離れた席から私への影口が聞こえてきます。
まあ、いつものことなので余り気になりません。
ヒトは、自分と違うものを排除しようとするものなのです。
子供の頃から充分に学びました。
私は、まだ一才にも満たない幼い時に森で冒険者に拾われ、孤児院で育ちました。
何故両親が私を捨てたのかは、本当の理由はわかりません。
でも、私が「ヒト」とは違ったからではないかと今は思っています。
私の外見は、ストレートの髪に鋭い切れ長の目、それだけでも見た目が冷たく見えるのに、その両方が真っ黒なのです。
黒髪と黒い瞳はこの街では私以外見たことがありません。国じゅう探しても他にいないかもしれません。
それ程、黒髪と黒い瞳は珍しいものです。
マリーさんのように、ローズゴールド色のフワフワの髪に、愛らしいつぶらな瞳だったらどんなに良かったかと、何度考えたことでしょう。
それに加えて、私の耳は少し尖っています。
耳が尖っているのはエルフの特徴です。
しかし、私の耳はそこまで尖っていません。ほんの少しヒトの耳に比べ尖っているだけです。
それにエルフは金髪と決まっています。肌の黒いダークエルフは銀髪です。
ですので、私はエルフとのハーフかクォーターではないかと、周りから言われています。
二十歳を過ぎているのに、未だに十代前半に間違われるのは、きっとエルフの血が混じっているせいだと、いつも自分に言い聞かせています。
あと何年かすれば、マリーさんに負けない魅惑的なスタイルになるはずだと。
それと、エルフの血のせいなのか、私の魔力制御の能力は非常に高く、最高位のSSS(スリーエス)ランクです。
これで魔力も多ければ大魔道士として、王宮に仕えることもできたのでしょうが、世の中そんなに甘くありませんでした。
私の魔力量は非常に少なく、普通の人が百前後なのに対して、私は一桁しかありません。
そのため、魔力制御がSSSでも、初級魔法もろくに使えないのです。
まさに宝の持ち腐れ「閉じられた本」とはよく言い現わしたものです。
ですが、自分なりに少ない魔力でも使える魔法の研究に取り組んでいるのですが、それは内緒です。
だって、その研究した魔法のおかげで、他の職員より仕事が早いため、ギルドで雇ってもらえているのですから。
誰もが私と同じだけ仕事ができるようになったら、見た目がアレな私はクビになってしまいます。
なにせ、見た目がアレなせいで、孤児院でも、冒険者ギルドに就職してからも、無視されたり、陰口を叩かれたり、虐められたり、数々の嫌がらせを受けてきました。
特に孤児院にいた子供時代には、変わった夢を見て、それを考えなしにしゃべって回っていたので、頭のおかしい子と思われていたかもしれません。
孤児院の先生も、私の夢の話を聞いて苦笑いをしていました。
夢の中で私は、「日本」という国に住み、「学園」という所に通っていました。
大変裕福な家庭の一人娘で、好き放題、我が儘放題で過ごしていました。
そこでは、この国では見たことがない不思議な機械で溢れていて、食べたこともない美味しいものをお腹いっぱい食べていました。
きっと私の願望がそんな夢をみせたのでしょう。
ただ、夢の中でも、両親とはなかなか一緒に過ごす機会がありませんでした。
両親に育てられていないところだけは、今と変わりませんでした。
しかし、今考えると苦笑いしたくなるような夢です。
こんな国が現実にあるとはとても思えません。
子供の想像力ってすごいですね。
さて、陰口のことは気にせず、私はマリーさんに受付カウンターを任せて、二階にあるギルドマスターの部屋に向かいます。
ギルマスからの呼び出しということなら、心当たりがありました。
先日報告した例の件だと思われます。
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