上 下
27 / 27
紡がれた永遠の物語

新しい後と共に…

しおりを挟む
 それから夏が過ぎて、冬が過ぎて、暖かい春が来る頃。



 シャルロとエルファの間に、可愛い男の子が産まれた。

 第一皇子としてアルスと名づけられた。


 シャルロと同じ丸顔で、エルファと同じ金色の髪をしている。

 
 

「可愛いですね」

 アルスを抱っこして喜んでいるシャルロ。

「男の子はとっても元気よ。これからが楽しみだわ」


 アルスを覗いて、セシレーヌが微笑んでいる。

「エルファ。どんどん子供、産んでいいわよ」
「え? 」

「私は、心臓移植をしている関係で。医師から1人しか産めないって言われたの。シャルロを産むときも、冷や冷やしてて大変だったわ。だから、貴女には沢山子供を産んでほしいって思っているの。でも、そんな大家族を望んでいるって言事じゃなくてね。姉弟っているといいじゃない? シャルロも、ミディスがいたから良かったのよ」

「そうですね」


「子供は神様からの授かりものですからね。受け取れるだけ、受け取るといいですよ」

 ジュニアールも満足そうに笑っている。




 アルスを囲んで、とっても幸せそう。

 暖かい太陽が輝いている。

 春がやって来た今日この頃。







 アルスを抱いて中庭にやって来た、シャルロとエルファ。


「随分暖かくなってきたわね」
「もう、春ですね」

「何だか、あっという間に春になってしまった感じ」
「そうですね。バタバタしてましたからね」

「ええ。でも、良かった。この子を産むことができて」


 シャルロはアルスの頬に触れた。

「この子は、僕とエルファを選んで来てくれたんですよ」
「え? 」

「ずっと探していたって、言っています。…200年もかかったようですよ」
「200年? 」

「ええ。やっと見つけて、お母さんが酷い事されて可哀想だから、早くお父さんに会わせなくちゃって思ったそうです」
「…そう…」


 スヤスヤと眠っているアルスを見て、エルファはとても嬉しそうに微笑んだ。


「この子も、僕とエルファを紡いでくれたのです。あの夜に、僕とエルファが出会ったのも。この子がちゃんと導いてくれたようです」
「やっぱり子供は、神様からの授かりものなのね」

 暖かい太陽に光が差してきて、シャルロとエルファとアルスを照らしてくれている。




 アルスが産まれてから半年経過した頃。

 エルファの下に悲報が届いた。

 警察病院に隔離されていたフィーネが亡くなったのだ。
 フィーネがあれからずっと、警察病院に隔離されていた。
 障害罪など重なっていたが、精神的異常をきたす事から裁くことが出来ず警察の管理の元病院に隔離されていた。

 初めは暴れたり錯乱したりと大変だったフィーネだが、次第に大人しくなりただ笑うだけの日々で言葉を発する事がなくなっていた。

 毎日ただ笑っているだけのフィーネは、穏やかな表情になり誰の事も思い出す事がなくなっていた。
 自分の事も分からないフィーネ。


 亡くなる前の日は「ごめんなさい…エルファ…」と呟いていたそうだ。
 翌日、朝の回診に医師が病室を訪ねると眠るように亡くなっているフィーネがいたそうだ。

 傍には多量の飲み薬が散らかっていて、フィーネが看護師の目を盗んで薬を盗み出し持って来て自分で飲んだとみなされていた。
 多量に飲んでいたのは睡眠薬で、フィーネは幸せそうな表情をして眠るように亡くなっていたと医師が証言している。


 遺体はペリロッドが引き取り、継母と同じお墓に埋葬した。
 葬儀はペリロッドがひっそり行い、エルファには連絡しなかった。



 フィーネの悲報を聞いて、エルファは心を痛めていた。
 そんなエルファをシャルロはそっと寄り添い慰めていた。

 
 エルファを苦しめていたフィーネはもういない・・・。
 エルファがフィーネから受けた傷は、もうすっかり癒えて消えていた。

 肉体の傷が消えても、暫くは心の傷は消えなかった。
 でも、シャルロの暖かい優しさと、ジュニアールとセシレーヌの支えがあり、ようやく心の傷も消えて行った。



 あの縁談をシャルロが受けてくれなければ、今のエルファはいなかったかもしれない。

 シャルロの直感で感じた魂の想いで紡がれた愛。

 お互いが名乗らなくても、惹かれ合った魂。


 そして新しい命が紡がれてアルスが産まれた。

 政略結婚から始まった結婚だったが、今ではとても幸せな愛が育った素敵な政略結婚。

 
 命を紡いで愛を紡ぐグリーンピアトの伝説に、素敵な政略結婚も加えられた今日この頃である。


 END
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

処理中です...