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受け入れてはいけない理由
小さな訪問者
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ジュニアールが退院してから2週間の月日が流れた。
セシレーヌはいつも通り仕事をこなしていた。
時々、こっそりとジュニアールがセシレーヌの様子を見に来たり他の看護師や医師にセシレーヌの事を聞いたりしているのを目にしたが会わないようにずっと避け続けていた。
そのうち諦めてくれるだろう。
再婚するなら、他にもっと良い人がいるのだから。
そう思っていたセシレーヌ。
だが、そんなときだった。
セシレーヌが屋上でタバコを吸っていると。
「お姉ちゃん」
そう呼ばれてセシレーヌはふと振り向いた。
するとそこにはミディスがいた。
ジュニアールによく似た感じのミディスを見て、セシレーヌはドキッとした。
可愛いイエローのワンピースに、白いオシャレな靴。
髪は可愛く三つあみにして、頭のてっぺんから結っている。
「お姉ちゃん、私ミディス。初めまして」
名前を聞いてセシレーヌは皇女様である事を確信して、驚いた。
「お姉ちゃんの事、お母さんから教えてもらってたからずっと前から知っているよ」
はぁ?
ちょっとびっくりした目を向けたセシレーヌを見てミディスはニコっと笑った。
その笑顔はジュニアールとそっくりである。
「びっくりした? 私ね、亡くなった人とお話しできるのよ。だからずっと、お母さんとはお話していたの。もう10年たつのに、お父さんがずっと離してくれないかぁ次に進めないって困っていたの。でもね、お姉ちゃんがお父さんに出会ってくれたから。お母さん、安心して次に迎えるって言っているのよ」
何を言っているの?
亡くなった人と話せるなんて…。
黒魔術でも使えるって言いたいの?
いや、黒魔術は死者との会話はできない筈。
だとしたら…。
「お姉ちゃん。お父さんの事、嫌いなの? 」
「嫌いって…別に嫌いなわけじゃないけど…」
「じゃあ好き? 」
「す…好きって…」
じーっとミディスはセシレーヌを見つめた。
もじもじしているセシレーヌは、どこか照れているようにも見える。
好きと聞かれて赤くなったように見えたセシレーヌ。
そんなセシレーヌを見て、ミディスは少なからずと好意はあるのだと感じた。
ミディスに見つめられ、テレを隠すためにセシレーヌは煙草を吸った。
フーッと煙を外へふかすと、遠い目を浮かべセシレーヌ…。
「お姉ちゃん。どうして、お父さんの事を避けているの? 」
「はぁ? 別に、避けてなんていないけど…」
「だって、わざと会わないように避けているでしょう? 」
「別に…。もう、担当じゃないし…関係ないから会わないだけだけど…」
じーっとミディスはセシレーヌを見つめた…。
「お姉ちゃんって、とっても判りやすい人なんだね。お父さんが、好きになる気持ちとっても判るよ」
「だから…」
「ねぇ。お父さんの気持ちを、受け入れてくれないのって。もしかして、お姉ちゃんの中にお母さんがいるから? 」
はぁ? なんで判るの?
…ああ、そうか…死者と話せるなら聞いているのか。
じゃあ話早いのかな?
「良く知ってるね。それじゃあ、話は早いよね。私は、貴女の大切なお母さんを…殺したの…」
「殺した? そんな事、お母さん言ってないわ」
「大切なお母さんの命を、私は奪ったの。…心臓さえあれば、いつか目を覚ますかもしれない。…心臓さえあれば…生きていられたのに…」
煙草を吸って、傍にある灰皿でもみ消して、セシレーヌはミディスを見た。
「私は…人の命を奪って生きている卑怯者なの。判った? 」
ミディスはキョンとした目で、セシレーヌを見ていた。
「二度と、私に近づかない事。…きっと、私の事を死刑にしたくなるからさっ…」
それだけ言うとセシレーヌは去って行った。
「…違うもん…。お姉ちゃんは、そんな事していない。…どうして、あんな言い方するの? 」
涙ぐんだ目をしてミディスはその場に佇んでいた。
その夜。
ミディスはジュニアールに、セシレーヌに会いに行ったことを話した。
「お父さんの大好きな、セシレーヌ先生に今日会って来たのよ」
「え? 本当ですか? 」
「うん。それでね、先生がお母さんの事を殺したって言っていたの」
「殺した? それは穏やかな言い方ではありませんね」
「セシレーヌ先生は、お母さんから心臓をもらった事でずっと自分の事を責めているのね」
「そのようですね」
「お母さん、セシレーヌ先生に心臓をあげた事。喜んでいるのに…」
悲しげな目をして俯いてしまったミディスを、ジュニアールはそっと抱きしめた。
「お父さん。私、セシレーヌ先生じゃないと新しいお母さんとして認めないから」
「判っています。心配しないで下さい、ちゃんと話しますからセシレーヌ先生と」
「本当? 」
涙ぐんだ目をしてジュニアールを見つめたミディス。
「はい、心配しないで下さい。セシレーヌ先生は、ちょっと誤解をしているだけですから。きっと、傷ついて来た分優しすぎるのですね」
よしよしと、ミディスの頭を撫でながらジュニアールはそっと慰めた。
セシレーヌは初めて会った時から愛想のない態度だった。
名前を尋ねられてもムスっとして、名札を指さすだけだった。
プロポーズした時は、驚いて茫然としていたが固くなに拒んできた。
その表情はとても辛そうな表情で…
ジュニアールはその表情を見て、セシレーヌが何か大きな誤解をしている事を感じ取った。
このままではいけない…
この想いは決してあきらめない。
ジュニアールはそう思った。
数日後。
晴天の空の元、セシレーヌは小高い丘の上にある木々の美しい霊園にやってきた。
静かな森の中にある霊園は、亡くなった人を弔う場所にはとても相応しい。
場所によっては海も見渡せてとても良い景色である。
セシレーヌは先ず家族が眠るお墓に手を合わせた。
白い十字架に綺麗な白いバラの花で作ってある花輪が飾ってある。
セシレーヌはそっと手を合わせた。
そっと顔を上げたセシレーヌは、髪を耳にかけて顔をハッキリ見せてみた。
「お父さん…お母さん…。奇跡って、本当にあるんだね。…」
そっと胸に手をあてたセシレーヌは、小さく口元で笑いを浮かべた。
「この心臓をもらった事も、奇跡だと思っていたのに…。あのまま死んでもいいって思っていた。…でも生き返った時、本当はとっても嬉しくて…」
ふと、悲し気な目を浮かべたセシレーヌ…。
「でも…私は嬉しくて喜んでいたけど…。国王様は、すごく悲しんでいた…男の人が、あんなに泣いている姿を見たのは初めてだった…。私が助かった代わりに、大切な人を失って悲しんでいる人がいる事を知って。…私は、悪い事をしたんだって思ったの。…この国で一番偉い人の、心から愛する人の命を奪って生きている…。私は、殺人者と同じだと思ったの…」
悲しげな目のまま、セシレーヌはそっと空を見上げた。
「…心臓があれば、目を覚ます奇跡だってあたかもしれない。…それを私は奪ったんだよね…」
ギュッとセシレーヌが唇をかみしめると。
バキっと、近くの木の枝が折れて落ちてきた。
「あ…」
折れた木の枝を見て、セシレーヌはハッと真っ青な顔をになった。
「…私は…国王様とは真逆な人間だもん…」
右手を見つめたセシレーヌは、遠い昔を思い出した…。
それは今からもう25年ほど前の事。
セシレーヌの家はそこそこの資産家だった。
父は有能な外科医で母も弁護士だった。
優秀な2人の間に産まれて、セシレーヌは母と同じ弁護士になりたいと思っていた。
だが母が重度な心臓病だと知り、父と同じ医師を目指す事を決めた。
その時、セシレーヌはまだ7歳だった。
家族仲良く笑いの絶えない家で、グリーンピアトの港街に大きなお屋敷をたてて住んでいた。
使用人が3名いて、住み込みで働いていて家族の様に暮らしていた。
そんなときだった。
セシレーヌの父に逆恨みをした者が、屋敷に火をつけて放火したのだ。
逆恨みの原因は大切な家族が亡くなった事だった。
セシレーヌの父は助からない患者に最善を尽くして、できる事をして来た。
だが既に末期の患者で手の施しようがなかった。
いくら説明して納得してもらえないまま、とうとう患者は亡くなってしまった。
悲しみを乗り越えられない家族が、セシレーヌの父を逆恨みして屋敷に火炎瓶を投げ入れ放火した。
火災に気づいて非難する中、火の回りは早く逃げ場を失いそうになるくらいだった。
そんな中、セシレーヌの父は母とセシレーヌを必死に守って助けてくれてた。
母は腕と背中にやけどを負って、セシレーヌは右頬と右目と右手に大やけど負った。
母とセシレーヌは命を取り留めたが、2人を助けた父は大火傷を負って亡くなってしまった。
亡くなる前に「2人が無事でよかった」と言い残して亡くなった…。
屋敷を失ったセシレーヌだったが、父が残してくれた資産で母と2人でも十分に暮らして行けるお金は残っていた。
元気になり母は弁護士として無理がないように仕事をして、セシレーヌを育ててくれていた。
だがセシレーヌが大学生になった頃。
母は心臓病が悪化して倒れて、そのまま亡くなってしまった。
セシレーヌは医師になって母を助けようと決めていたが、その思いも叶わずだった…。
母が亡くなってから一人で目標に向かっていたセシレーヌ。
順調に進んでいたが、発作で倒れてしまいそのまま心臓移植を受けて助かることが出来た。
喜びと同時に、深く悲しみで傷つけた人がいる事に自分を責めずにはいられないセシレーヌだった。
家族のお墓参りを済ませたセシレーヌは、そのまま王家のお墓へとやって来た。
王家のお墓は最も高い位置に祭ってある。
王家のお墓にやって来たセシレーヌはそっと手を合わせた。
「王妃様…私に、心臓をくれて有難うございます。…王妃様の大切な人を悲しませた…私は、この罪を背負って一生生きてゆきます…」
カサッ…。
何か物音がして、セシレーヌはハッと驚いて顔を上げた。
「セシレーヌさん…」
声がして振り向くと、そこにはジュニアールがいた。
セシレーヌはいつも通り仕事をこなしていた。
時々、こっそりとジュニアールがセシレーヌの様子を見に来たり他の看護師や医師にセシレーヌの事を聞いたりしているのを目にしたが会わないようにずっと避け続けていた。
そのうち諦めてくれるだろう。
再婚するなら、他にもっと良い人がいるのだから。
そう思っていたセシレーヌ。
だが、そんなときだった。
セシレーヌが屋上でタバコを吸っていると。
「お姉ちゃん」
そう呼ばれてセシレーヌはふと振り向いた。
するとそこにはミディスがいた。
ジュニアールによく似た感じのミディスを見て、セシレーヌはドキッとした。
可愛いイエローのワンピースに、白いオシャレな靴。
髪は可愛く三つあみにして、頭のてっぺんから結っている。
「お姉ちゃん、私ミディス。初めまして」
名前を聞いてセシレーヌは皇女様である事を確信して、驚いた。
「お姉ちゃんの事、お母さんから教えてもらってたからずっと前から知っているよ」
はぁ?
ちょっとびっくりした目を向けたセシレーヌを見てミディスはニコっと笑った。
その笑顔はジュニアールとそっくりである。
「びっくりした? 私ね、亡くなった人とお話しできるのよ。だからずっと、お母さんとはお話していたの。もう10年たつのに、お父さんがずっと離してくれないかぁ次に進めないって困っていたの。でもね、お姉ちゃんがお父さんに出会ってくれたから。お母さん、安心して次に迎えるって言っているのよ」
何を言っているの?
亡くなった人と話せるなんて…。
黒魔術でも使えるって言いたいの?
いや、黒魔術は死者との会話はできない筈。
だとしたら…。
「お姉ちゃん。お父さんの事、嫌いなの? 」
「嫌いって…別に嫌いなわけじゃないけど…」
「じゃあ好き? 」
「す…好きって…」
じーっとミディスはセシレーヌを見つめた。
もじもじしているセシレーヌは、どこか照れているようにも見える。
好きと聞かれて赤くなったように見えたセシレーヌ。
そんなセシレーヌを見て、ミディスは少なからずと好意はあるのだと感じた。
ミディスに見つめられ、テレを隠すためにセシレーヌは煙草を吸った。
フーッと煙を外へふかすと、遠い目を浮かべセシレーヌ…。
「お姉ちゃん。どうして、お父さんの事を避けているの? 」
「はぁ? 別に、避けてなんていないけど…」
「だって、わざと会わないように避けているでしょう? 」
「別に…。もう、担当じゃないし…関係ないから会わないだけだけど…」
じーっとミディスはセシレーヌを見つめた…。
「お姉ちゃんって、とっても判りやすい人なんだね。お父さんが、好きになる気持ちとっても判るよ」
「だから…」
「ねぇ。お父さんの気持ちを、受け入れてくれないのって。もしかして、お姉ちゃんの中にお母さんがいるから? 」
はぁ? なんで判るの?
…ああ、そうか…死者と話せるなら聞いているのか。
じゃあ話早いのかな?
「良く知ってるね。それじゃあ、話は早いよね。私は、貴女の大切なお母さんを…殺したの…」
「殺した? そんな事、お母さん言ってないわ」
「大切なお母さんの命を、私は奪ったの。…心臓さえあれば、いつか目を覚ますかもしれない。…心臓さえあれば…生きていられたのに…」
煙草を吸って、傍にある灰皿でもみ消して、セシレーヌはミディスを見た。
「私は…人の命を奪って生きている卑怯者なの。判った? 」
ミディスはキョンとした目で、セシレーヌを見ていた。
「二度と、私に近づかない事。…きっと、私の事を死刑にしたくなるからさっ…」
それだけ言うとセシレーヌは去って行った。
「…違うもん…。お姉ちゃんは、そんな事していない。…どうして、あんな言い方するの? 」
涙ぐんだ目をしてミディスはその場に佇んでいた。
その夜。
ミディスはジュニアールに、セシレーヌに会いに行ったことを話した。
「お父さんの大好きな、セシレーヌ先生に今日会って来たのよ」
「え? 本当ですか? 」
「うん。それでね、先生がお母さんの事を殺したって言っていたの」
「殺した? それは穏やかな言い方ではありませんね」
「セシレーヌ先生は、お母さんから心臓をもらった事でずっと自分の事を責めているのね」
「そのようですね」
「お母さん、セシレーヌ先生に心臓をあげた事。喜んでいるのに…」
悲しげな目をして俯いてしまったミディスを、ジュニアールはそっと抱きしめた。
「お父さん。私、セシレーヌ先生じゃないと新しいお母さんとして認めないから」
「判っています。心配しないで下さい、ちゃんと話しますからセシレーヌ先生と」
「本当? 」
涙ぐんだ目をしてジュニアールを見つめたミディス。
「はい、心配しないで下さい。セシレーヌ先生は、ちょっと誤解をしているだけですから。きっと、傷ついて来た分優しすぎるのですね」
よしよしと、ミディスの頭を撫でながらジュニアールはそっと慰めた。
セシレーヌは初めて会った時から愛想のない態度だった。
名前を尋ねられてもムスっとして、名札を指さすだけだった。
プロポーズした時は、驚いて茫然としていたが固くなに拒んできた。
その表情はとても辛そうな表情で…
ジュニアールはその表情を見て、セシレーヌが何か大きな誤解をしている事を感じ取った。
このままではいけない…
この想いは決してあきらめない。
ジュニアールはそう思った。
数日後。
晴天の空の元、セシレーヌは小高い丘の上にある木々の美しい霊園にやってきた。
静かな森の中にある霊園は、亡くなった人を弔う場所にはとても相応しい。
場所によっては海も見渡せてとても良い景色である。
セシレーヌは先ず家族が眠るお墓に手を合わせた。
白い十字架に綺麗な白いバラの花で作ってある花輪が飾ってある。
セシレーヌはそっと手を合わせた。
そっと顔を上げたセシレーヌは、髪を耳にかけて顔をハッキリ見せてみた。
「お父さん…お母さん…。奇跡って、本当にあるんだね。…」
そっと胸に手をあてたセシレーヌは、小さく口元で笑いを浮かべた。
「この心臓をもらった事も、奇跡だと思っていたのに…。あのまま死んでもいいって思っていた。…でも生き返った時、本当はとっても嬉しくて…」
ふと、悲し気な目を浮かべたセシレーヌ…。
「でも…私は嬉しくて喜んでいたけど…。国王様は、すごく悲しんでいた…男の人が、あんなに泣いている姿を見たのは初めてだった…。私が助かった代わりに、大切な人を失って悲しんでいる人がいる事を知って。…私は、悪い事をしたんだって思ったの。…この国で一番偉い人の、心から愛する人の命を奪って生きている…。私は、殺人者と同じだと思ったの…」
悲しげな目のまま、セシレーヌはそっと空を見上げた。
「…心臓があれば、目を覚ます奇跡だってあたかもしれない。…それを私は奪ったんだよね…」
ギュッとセシレーヌが唇をかみしめると。
バキっと、近くの木の枝が折れて落ちてきた。
「あ…」
折れた木の枝を見て、セシレーヌはハッと真っ青な顔をになった。
「…私は…国王様とは真逆な人間だもん…」
右手を見つめたセシレーヌは、遠い昔を思い出した…。
それは今からもう25年ほど前の事。
セシレーヌの家はそこそこの資産家だった。
父は有能な外科医で母も弁護士だった。
優秀な2人の間に産まれて、セシレーヌは母と同じ弁護士になりたいと思っていた。
だが母が重度な心臓病だと知り、父と同じ医師を目指す事を決めた。
その時、セシレーヌはまだ7歳だった。
家族仲良く笑いの絶えない家で、グリーンピアトの港街に大きなお屋敷をたてて住んでいた。
使用人が3名いて、住み込みで働いていて家族の様に暮らしていた。
そんなときだった。
セシレーヌの父に逆恨みをした者が、屋敷に火をつけて放火したのだ。
逆恨みの原因は大切な家族が亡くなった事だった。
セシレーヌの父は助からない患者に最善を尽くして、できる事をして来た。
だが既に末期の患者で手の施しようがなかった。
いくら説明して納得してもらえないまま、とうとう患者は亡くなってしまった。
悲しみを乗り越えられない家族が、セシレーヌの父を逆恨みして屋敷に火炎瓶を投げ入れ放火した。
火災に気づいて非難する中、火の回りは早く逃げ場を失いそうになるくらいだった。
そんな中、セシレーヌの父は母とセシレーヌを必死に守って助けてくれてた。
母は腕と背中にやけどを負って、セシレーヌは右頬と右目と右手に大やけど負った。
母とセシレーヌは命を取り留めたが、2人を助けた父は大火傷を負って亡くなってしまった。
亡くなる前に「2人が無事でよかった」と言い残して亡くなった…。
屋敷を失ったセシレーヌだったが、父が残してくれた資産で母と2人でも十分に暮らして行けるお金は残っていた。
元気になり母は弁護士として無理がないように仕事をして、セシレーヌを育ててくれていた。
だがセシレーヌが大学生になった頃。
母は心臓病が悪化して倒れて、そのまま亡くなってしまった。
セシレーヌは医師になって母を助けようと決めていたが、その思いも叶わずだった…。
母が亡くなってから一人で目標に向かっていたセシレーヌ。
順調に進んでいたが、発作で倒れてしまいそのまま心臓移植を受けて助かることが出来た。
喜びと同時に、深く悲しみで傷つけた人がいる事に自分を責めずにはいられないセシレーヌだった。
家族のお墓参りを済ませたセシレーヌは、そのまま王家のお墓へとやって来た。
王家のお墓は最も高い位置に祭ってある。
王家のお墓にやって来たセシレーヌはそっと手を合わせた。
「王妃様…私に、心臓をくれて有難うございます。…王妃様の大切な人を悲しませた…私は、この罪を背負って一生生きてゆきます…」
カサッ…。
何か物音がして、セシレーヌはハッと驚いて顔を上げた。
「セシレーヌさん…」
声がして振り向くと、そこにはジュニアールがいた。
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