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おめでとう電話
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濡れた手をタオルで拭って画面を見た。
そのまま私はキッチンから廊下へと出てから、スマホをタップする。
「もしもし。」
ー優希、誕生日おめでとう。
「うん、ありがと。今仕事?」
ーうん、今閉店したところ。コレからディスプレイ変える。
「残業じゃん。」
ーまあね、何時に終わるんだろ?徹夜かも。
「早く戻って仕事しなよ?」
ーうん、すぐ戻る。
ねえ、今日実家?
ううん、と答えた。
「彼のところ、泊まる。」
ー野上?
「そう。ああ、あのね、健太もいる。」
ー健太?
野上さんと健太が大学の先輩後輩だという事を話した。
ーパーティーしてんの?
「…そうだよ。」
私の誕生日パーティーじゃないけど、それは言わない。
拓郎に心配かけたくない。
きっと今日会えない事を気にしてるから。だから気にしなくて大丈夫だと伝えたかった。
「ほら、もう仕事戻りなよ。私も戻らないと。」
ーちょっと…健太に変わってよ。
「うん、わかった。待ってて。」
廊下を歩いてリビングに顔だけを入れて、
「健太!電話出てくれる?」
と声を掛けた。
「誰?」
「拓郎。」
健太は黙って立ち上がって、廊下に出てきた。
「優希はもう戻れ。」
スマホを受け取りながら、健太はチラリと野上さんを気遣うような視線を後ろに向けた。
健太に言われなくてもそうする。
野上さんはあえてコッチを見ないようにしてるのがわかってしまったから。
うんと健太に答えてリビングに戻って、ペタリと野上さんの横に無言で座った。
すかさず野上さんの腕が私の腰に回された。
驚いて野上さんを見上げても、野上さんの視線はテレビ画面に向いている。
…意外だな。
知り合いの前でこういうスキンシップを取るような人だとは思ってなかった。
さりげなく野上さんの腕から離れようとお尻を浮かせた瞬間から、野上さんの身体にピッタリとくっつくように更に身体が引き寄せられた。
…恥ずかしいじゃん。
磯田くん、目を丸くしてる驚いてるよ?
テレビ画面は磯田くんオススメの可愛い犬の動画で、飼い主さんの座るソファーに上がろうと一生懸命に前足をソファーに乗せて後ろ足でジャンプしてるけど、ちょっとふくよかな身体と短い脚のせいで上手くよじ登れないでいる。
「可愛い」
ポロリと溢れた感想をすかさず磯田くんが拾ってくれた。
「でしょう?この犬、他にも可愛いのいっぱいアップされてるんですよ。」
「えー、見たい。もう見ちゃいました?」
「見たのもあるけど、見てないのもまだあるよ。」
それから健太が戻ってくるまでずっと子犬の動画を見続けていた。
そのまま私はキッチンから廊下へと出てから、スマホをタップする。
「もしもし。」
ー優希、誕生日おめでとう。
「うん、ありがと。今仕事?」
ーうん、今閉店したところ。コレからディスプレイ変える。
「残業じゃん。」
ーまあね、何時に終わるんだろ?徹夜かも。
「早く戻って仕事しなよ?」
ーうん、すぐ戻る。
ねえ、今日実家?
ううん、と答えた。
「彼のところ、泊まる。」
ー野上?
「そう。ああ、あのね、健太もいる。」
ー健太?
野上さんと健太が大学の先輩後輩だという事を話した。
ーパーティーしてんの?
「…そうだよ。」
私の誕生日パーティーじゃないけど、それは言わない。
拓郎に心配かけたくない。
きっと今日会えない事を気にしてるから。だから気にしなくて大丈夫だと伝えたかった。
「ほら、もう仕事戻りなよ。私も戻らないと。」
ーちょっと…健太に変わってよ。
「うん、わかった。待ってて。」
廊下を歩いてリビングに顔だけを入れて、
「健太!電話出てくれる?」
と声を掛けた。
「誰?」
「拓郎。」
健太は黙って立ち上がって、廊下に出てきた。
「優希はもう戻れ。」
スマホを受け取りながら、健太はチラリと野上さんを気遣うような視線を後ろに向けた。
健太に言われなくてもそうする。
野上さんはあえてコッチを見ないようにしてるのがわかってしまったから。
うんと健太に答えてリビングに戻って、ペタリと野上さんの横に無言で座った。
すかさず野上さんの腕が私の腰に回された。
驚いて野上さんを見上げても、野上さんの視線はテレビ画面に向いている。
…意外だな。
知り合いの前でこういうスキンシップを取るような人だとは思ってなかった。
さりげなく野上さんの腕から離れようとお尻を浮かせた瞬間から、野上さんの身体にピッタリとくっつくように更に身体が引き寄せられた。
…恥ずかしいじゃん。
磯田くん、目を丸くしてる驚いてるよ?
テレビ画面は磯田くんオススメの可愛い犬の動画で、飼い主さんの座るソファーに上がろうと一生懸命に前足をソファーに乗せて後ろ足でジャンプしてるけど、ちょっとふくよかな身体と短い脚のせいで上手くよじ登れないでいる。
「可愛い」
ポロリと溢れた感想をすかさず磯田くんが拾ってくれた。
「でしょう?この犬、他にも可愛いのいっぱいアップされてるんですよ。」
「えー、見たい。もう見ちゃいました?」
「見たのもあるけど、見てないのもまだあるよ。」
それから健太が戻ってくるまでずっと子犬の動画を見続けていた。
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