亡国の王子に下賜された神子

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歴史のない国

茶色い牛

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次に探すのは、「茶色い牛」
こればっかりはダイくんにもわからないらしい。

「うちは5つ家って言うんだ。だからきっと茶色い牛がいると思う。」
とダイくんが予測を立てた。

「茶色い牛なんてたくさんいそうですけどね…。」
「ううん、この辺りの牛は赤か黒だ。」
とダイくんは言い切る。

その言葉通りに「茶色い牛」はすぐに村の人に伝わった。
この辺りで「茶色い牛」を飼っているのは村長のガジル、そのガジルの家に居候している人がいるんだ、と通りすがりの村人が教えてくれた。

ガジルさんの家は、数十頭の牛と数百羽の鶏を飼っている、農家だった。
やはり木の柵で囲われた家の一角に、小さい繭の家があり、そこが教授の知り合いイヤルさんの家だった。

イヤルさんは急に現れた教授に驚きながらも歓迎してくれた。
数年ぶりの挨拶を終えて、教授がここに来るまで大変だった話をすると、イヤルさんはゲラゲラと笑った。

「俺もだよ。資金を持ってここまできたけれど、何ひとつ買えないし、相手にもしてもらえなかった。
仕方なくルキア国まで戻って、牛を買って牛飼いを連れてまたここに来たんだ。
牛の効果はテキメンだったね。村長自ら俺を村人として迎え入れてくれた。」

アハハっと豪快に笑うイヤルさんはおおらかで優しそうな人だった。
「…で、ベネット、こちらは?」
私達の事を怪訝そうに見ながら、教授に尋ねる。

「神子様のサキカと、その守護者のレオだ。」
教授の言葉にイヤルさんは目を見開いた。

「はっ!?神子?」
イヤルさんは今年のハマの儀式で神子賜りがあった事を知らなかったらしい。
というより、この辺りにニュースを知らせるような媒体は無さそうだ。

「おー、おめでとう。」
イヤルさんはレオに祝福の言葉を掛けて、私の前に膝をついた。

「遠き世界よりようこそお越しくださいました。尊きハマ神の導きにより、このイヤル、神子様の御前に立たせて頂きました事を感謝申し上げます。」

「や、やめてください!そういうのはいりませんから!!」
慌てて私も膝をついて、なんとかイヤルさんに立ってもらおうとした。

「あはは、イヤル、それは無しだ。神子はそうやってたて祀られることは望まないとお望みだ。」
「そ、そうです。お願いです。そういうのはホントっにやめて下さい。」

望まない事を望む、変な言い回しだけど、それが一番しっくりくる。
「ふ、普通でお願いしたい…です。」

イヤルさんは「なんて謙虚な神子様だ!」と感激してしまい、涙まで流しそうな勢いで感動に震えてしまっている。

ホント恥ずかしいから、もうやめて下さい…。
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