124 / 152
穢れた国
処分場の兵士
しおりを挟む
下から上がってきたのは3人の男だった。
服装はセドリック王子に付いていた兵士と同じで、些細な違いは防具は身にはつけてはいないだけ。細身のサーベルを腰からぶら下げていた。
真ん中の兵士だけがオジサンで、端の2人はまだ若者、私たちと同じくらいに見える。
「ミア、ご苦労だった。後はこちらが引き受ける。新しい友が来た。仕事に戻れ。」
真ん中のオジサンが静かにミアさんに告げると、男の言葉を聞いたミアさんの体が強張るのがわかった。
「…行っちゃダメ!」
私が呟くよりも先に動いたのは教授だった。
ミアさんの腕を掴み、サッと自分の方へと引き寄せる。
「ミア、行かなくていい。あなたはサキカの…神子様の旅の同行者となったはずだから。」
そうだ、確かに誘った。
バルコニーから飛び降りる時に。
「そう、ミアさんは私達の旅の仲間よ。」
そうキッパリ言い切ると、ミアさんの固かった表情が和らいだ。
一歩足を出して、私もミアさんの隣に立った。
「ミアさんの「友」は私よ。」
睨むように男を見つめる。
オジサンは全く表情を変えない。
「…勝手に決められても困る。ミアにはミアしか出来ない仕事がある。」
「我々にも、ミアにやってもらわないと困る事がある。」
教授が重ねて伝える。
レオがオジサンに話しかけた。
「我々が何者なのかも、ここに来た目的も、あなた達は知っている。違うか?」
オジサンは答えない。じっとレオを見つめたまま動かなかった。
「…あなた方が何者なのかは知らないし、何をしに来たかにも興味はない。
ただ、ここに招かれざる者が来るかもしれない事は聞いている。」
「誰から?ラウール伯爵か?」
「…ここの主だ。お帰り頂くよう申し付けられている。だから黙って從って貰いたい。」
「嫌だ、そう言ったら?」
「…頼む。あなたのためだ。」
…変だわ、力づくでどうにかしようとする気配はない。
敵意はなさそうなのに、全く変わらない表情が私に恐怖を与える。
震えた手をレオがしっかりと握ってくれるから、そこからぽわんっと温かい何かが身体に流れ込んできた。
「ミアは仕事に戻らなくてはならない。貴方がたは出来ればこのまま別邸に戻ってくれ。
ここの事は忘れて2度と戻るな。」
「それは出来ない。」
「それは無理ね。」
私とレオが同時に答えると、困ったようにオジサンが溜息を吐いた。
初めて現れた感情らしきものが困惑。
この状況にそぐわない感情に、こちらも戸惑ってしまう。
「とにかくミアは連れていかなくてはならない。でないと…。」
そこでオジサンが言い淀んだ。
「でないと、どうなる?」
レオが尋ねる。
「…あなた方には関わりがないことだ。」
とオジサンが答えた。
「…ではこうしましょう。私もミアさんと仕事場に行きます。」
本当にこのオジサンは私達に興味がなく、ミアさんを仕事場に戻す事だけに執着していそうな気がした。
だからついて行く、そもそもそれが目的だから。
「お前たちは我々が誰で、なんでここに来たかを知らないと言った。…本当か?」
「…嘘はない。」
「教えてやる。彼女はハマの神子だ。神子がミアの仕事場に行きたい、と願っている。それを叶えるのが守護者の俺の役目だ。だから俺も行く。」
兵士達は驚かなかった。やっぱり知っていたんだなぁ、と思われた。
服装はセドリック王子に付いていた兵士と同じで、些細な違いは防具は身にはつけてはいないだけ。細身のサーベルを腰からぶら下げていた。
真ん中の兵士だけがオジサンで、端の2人はまだ若者、私たちと同じくらいに見える。
「ミア、ご苦労だった。後はこちらが引き受ける。新しい友が来た。仕事に戻れ。」
真ん中のオジサンが静かにミアさんに告げると、男の言葉を聞いたミアさんの体が強張るのがわかった。
「…行っちゃダメ!」
私が呟くよりも先に動いたのは教授だった。
ミアさんの腕を掴み、サッと自分の方へと引き寄せる。
「ミア、行かなくていい。あなたはサキカの…神子様の旅の同行者となったはずだから。」
そうだ、確かに誘った。
バルコニーから飛び降りる時に。
「そう、ミアさんは私達の旅の仲間よ。」
そうキッパリ言い切ると、ミアさんの固かった表情が和らいだ。
一歩足を出して、私もミアさんの隣に立った。
「ミアさんの「友」は私よ。」
睨むように男を見つめる。
オジサンは全く表情を変えない。
「…勝手に決められても困る。ミアにはミアしか出来ない仕事がある。」
「我々にも、ミアにやってもらわないと困る事がある。」
教授が重ねて伝える。
レオがオジサンに話しかけた。
「我々が何者なのかも、ここに来た目的も、あなた達は知っている。違うか?」
オジサンは答えない。じっとレオを見つめたまま動かなかった。
「…あなた方が何者なのかは知らないし、何をしに来たかにも興味はない。
ただ、ここに招かれざる者が来るかもしれない事は聞いている。」
「誰から?ラウール伯爵か?」
「…ここの主だ。お帰り頂くよう申し付けられている。だから黙って從って貰いたい。」
「嫌だ、そう言ったら?」
「…頼む。あなたのためだ。」
…変だわ、力づくでどうにかしようとする気配はない。
敵意はなさそうなのに、全く変わらない表情が私に恐怖を与える。
震えた手をレオがしっかりと握ってくれるから、そこからぽわんっと温かい何かが身体に流れ込んできた。
「ミアは仕事に戻らなくてはならない。貴方がたは出来ればこのまま別邸に戻ってくれ。
ここの事は忘れて2度と戻るな。」
「それは出来ない。」
「それは無理ね。」
私とレオが同時に答えると、困ったようにオジサンが溜息を吐いた。
初めて現れた感情らしきものが困惑。
この状況にそぐわない感情に、こちらも戸惑ってしまう。
「とにかくミアは連れていかなくてはならない。でないと…。」
そこでオジサンが言い淀んだ。
「でないと、どうなる?」
レオが尋ねる。
「…あなた方には関わりがないことだ。」
とオジサンが答えた。
「…ではこうしましょう。私もミアさんと仕事場に行きます。」
本当にこのオジサンは私達に興味がなく、ミアさんを仕事場に戻す事だけに執着していそうな気がした。
だからついて行く、そもそもそれが目的だから。
「お前たちは我々が誰で、なんでここに来たかを知らないと言った。…本当か?」
「…嘘はない。」
「教えてやる。彼女はハマの神子だ。神子がミアの仕事場に行きたい、と願っている。それを叶えるのが守護者の俺の役目だ。だから俺も行く。」
兵士達は驚かなかった。やっぱり知っていたんだなぁ、と思われた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる