亡国の王子に下賜された神子

枝豆

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穢れた国

目覚め

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ポカポカした温もりに包まれて目が覚めた。

「…キカ。サキカ。」
夢を見ていた。
レオが私を抱きしめている夢。

ああ、起きたくない…。ずっとこのままポカポカに包まれて眠っていたい。

ユサユサと揺さぶられて、覚醒しそうになる。

「もう教授!もっと優しく起こしてくれたっていいじゃない!!」
「…サキカ。サキカを起こすのは俺だけじゃないの?」

うん?
この声は?
教授じゃない。聞いたことある声だけど…。

パッと瞼を開けた。

薄茶色の緩やかなウェーブした髪、同じく栗色の大きな瞳。
まるでモデルさんのようなカッコいい外国人。

「レオ!!」
「良かった、目が覚めた。」

レオ、レオ!としがみついた。
夢じゃない!そこにちゃんとレオがいた。

「良かった!見つけてくれた!!」

相変わらずほとんど裸みたいな格好で、レオと一緒にベッドに横たわっていたらしい。
恥ずかしさより嬉しさが込み上げてくる。

「身体は?どこか悪い所はない?」

あっ、そうだ。手を見て足を見て、ちょっと動かして。
「もう大丈夫みたい。」
良かった、きっとセブール湖の水が癒してくれたんだ、そう考えるとホッとしてつい微笑んでしまう。

「ここ…別邸よね?」
見慣れた部屋に馴染んだベッド、ここは別邸の元々私がいた部屋だ。

あれ?私…たしか湖に投げ込まれて。
あっ!思い出した!

「教授は!?」
「…ずっと部屋に入って籠もっていたから、ちょっとわからない。
リマかファッジを呼ぶ。何か口に入れよう。」

そう言われたらなんだか喉が渇いている。
教授はきっと大丈夫。そう思わないと…居ても立っても居られない。

あ、そうだ!レオに言わないと!

「あの、あのね。フィンに会ったの。」
「フィン…?」
「フィンよ、フィン。風の神のフィン!!」

レオに話した。
フィンのイタズラが原因で、神様達が眠りにつくことになった事。
ハマの代わりにハマの友達という人がフィンを探していたけれど、蓋をして見つけられなくなっちゃったこと。

「蓋?」
「あれ?私持ってなかった?金のコップ。」
「ああ、持ってたよ。」

枕元のテーブルにそれはポツンと置いてあった。

「これね、ずっと水を出し続けてたんですって。
ねぇ、これってもしかして…。」
「セブール湖に沈んだ、水を出し続ける壺なら、興国の神器だと思う。ハマが使徒に渡したものだ。」

やっぱりそうだった。

「このせいでフィンは閉じ込められたままだったんですって。」

それからね。世界の秩序のヒントを貰ったの。

「ハマの力で纏めた禍は水に、ペレスの力で纏めた禍は火に、ユレの力で纏めた禍は土に。
そうすれば、フィンが風に乗せてくれるんですって。
禍はね、そうやってこの世界をグルグルと巡っていくものみたい。

それでいいの、って。
あっ、違う。間違えちゃダメって。」

「ダメ?何がダメ?」
「ハマの力で纏めた禍を燃やしたり埋めたりしちゃダメだよって。」

だから、レオ。

「私たち行かなくちゃ。坑道の中に埋められている黒砂を石にして水に入れないとダメなのよ。」


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