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穢れた国
決意
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宝物庫からは全ての神器が見つかった。
盗られたものをさもそれらしく引き上げて見せたわけではない事がはっきりとし、その事が父を打ちのめした。
象徴となる太陽王のメダル、武の名誉となる太陽の剣、そして神子と守護者。
これらが揃えば、国を興すのには十分だ。
神子が望めばその全てを差し出すのがこの世界に生きる者の義務だ。
神子マークを盾にヨーシャー王が要求した属国化を拒む事はどの国にも出来なかったように。
「ブランディールの復国を認めてでも、ラグーは浄化を願わなければならない、違いますか?父上。」
「…ダメだ。」
父の言葉に耳を疑う。
ラグーにとって、セブール湖の浄化はなによりも優先されるべき事だ。
侵略者の誹りを受けてもブランディールを平定したのは、ヨーシャーのいうがまま代償を支払い続けているのは、そのためではなかったのか?
「奪い取ったものを返すだけですよ、父上。迷うことなどないのでは?」
「それでは足りない、それだけではダメなのだ。
土地は分けれても、人は分けられぬ。ラグーに産まれラグーで生きている者に、ブランディールの民になれとは言えない。
かつて私の祖先はそれをブランディールの民にした。
その結果はお前もよく知っているだろう。
表向き国はひとつでも民の心はバラバラだ。
再度私がそれを口にすれば、ラグーの民は決して私を王として認めてはくれないだろう。」
「じゃあ、どうするのですか?」
一体父はどう対処するというのか?
「…セドリック、すまない。
ブランディールとラグーはひとつ、これは絶対だ。
神子と守護者を手に入れるには、ラグーの全てを委ねる覚悟が必要だ。」
「えっ!?…それはどういう事…?」
父がおかしくなった、狂ってしまったと思った。
なんて事を言い出すんだ!?
「ブランディールの全てはラグーに帰す」という200年前のラグー王の決めた掟に従うならば、ブランディールに下賜された神器を宝物庫に納めたのと同様に、神子と守護者をラグーに納めてしまえばいい。
なんで神子に国丸ごと差し出す必要があるのか?
まだ、何も成し遂げていない異世界人に、どんな遠慮をしなければならないのか。
「そんな事までしなくても…。では私が神子の伴侶になれば良いのでは?」
その時の、俺を蔑むような父の目を私はきっと一生忘れる事はないだろう。
それほどまでに父は失望感を隠さなかった。
「馬鹿な事を言ってるのはお前の方だ。
女神子の伴侶は守護者のみだ。
神子は守護者を求め、守護者は神子に与える、それがハマの神意だ。
ハマの意志がないお前が守護者になぞなれるはずはない。
何よりも、女神子には子を成して貰わねばならない。
女神子から産まれる子の力は絶大になる。
全ては世界の均衡のためだ。」
イェオリに使者を、直ぐにでも神子をお迎えできるように準備を、と言った父の言葉に弾かれて、臣下達は慌ただしく動き始めた。
しかし、使者がイェオリに向かう事はなかった。
直ぐに神殿から公布があったからだ。
神子は守護者を従えて、見聞を広めるために旅に出る。
全ての者に神子への接遇を禁じる。
神子より願いがあれば其れに応えるべく行動することはその限りではない。
恙無く神子の旅が遂行される様、周知徹底すべし。
旅の目的地は旧ブランディール。今はラグーのレブロン地方と呼んでいる地域。
神子が向こうからラグーに来るのだ。
その神子の力を借りれば、ラグーは自由を得られる。
…どうやって?どうすれば…。
そんな時、セドリックに近づいたのが、ラウール伯爵だった。
ラウール伯爵はコールの採取とコールを原料としたコークスの製造を任されている、国の産業を支えている重鎮のひとり。
「セドリック王子、なんとしても神子の守護者、せめて伴侶となりなされ。なに、さほど難しい事ではありません。
貴方ほどうってつけの人物はおりません。
神子様もブランの男爵なんかより、王子の方がいいに決まっております。見栄えも資質も貴方様の方がふさわしいのですから、選ばれるのは貴方様です。
それに万が一ダメでも良いではありませんか。失うものを考えれば、試す価値はあると思いますよ。
ラグーの未来のために、立つのですよ、セドリック王子。」
神子の守護者に…?
迷いはありつつも、全てを神子に差し出す父を止めなければならないという想いもあり、ラウールの申し出を受ける事にしてしまった。
ラウールは神子を囲う手筈を完璧に整えてくれた。
ラウールに言われた通り、父には内緒で隊を整えてザッカランの教会に陣取った。
司祭パジェットの協力を得て、準備万端に整えた。
恐ろしいほどに呆気なく、神子は我が手の中に落ちた。
落ちた、と思っていた。
盗られたものをさもそれらしく引き上げて見せたわけではない事がはっきりとし、その事が父を打ちのめした。
象徴となる太陽王のメダル、武の名誉となる太陽の剣、そして神子と守護者。
これらが揃えば、国を興すのには十分だ。
神子が望めばその全てを差し出すのがこの世界に生きる者の義務だ。
神子マークを盾にヨーシャー王が要求した属国化を拒む事はどの国にも出来なかったように。
「ブランディールの復国を認めてでも、ラグーは浄化を願わなければならない、違いますか?父上。」
「…ダメだ。」
父の言葉に耳を疑う。
ラグーにとって、セブール湖の浄化はなによりも優先されるべき事だ。
侵略者の誹りを受けてもブランディールを平定したのは、ヨーシャーのいうがまま代償を支払い続けているのは、そのためではなかったのか?
「奪い取ったものを返すだけですよ、父上。迷うことなどないのでは?」
「それでは足りない、それだけではダメなのだ。
土地は分けれても、人は分けられぬ。ラグーに産まれラグーで生きている者に、ブランディールの民になれとは言えない。
かつて私の祖先はそれをブランディールの民にした。
その結果はお前もよく知っているだろう。
表向き国はひとつでも民の心はバラバラだ。
再度私がそれを口にすれば、ラグーの民は決して私を王として認めてはくれないだろう。」
「じゃあ、どうするのですか?」
一体父はどう対処するというのか?
「…セドリック、すまない。
ブランディールとラグーはひとつ、これは絶対だ。
神子と守護者を手に入れるには、ラグーの全てを委ねる覚悟が必要だ。」
「えっ!?…それはどういう事…?」
父がおかしくなった、狂ってしまったと思った。
なんて事を言い出すんだ!?
「ブランディールの全てはラグーに帰す」という200年前のラグー王の決めた掟に従うならば、ブランディールに下賜された神器を宝物庫に納めたのと同様に、神子と守護者をラグーに納めてしまえばいい。
なんで神子に国丸ごと差し出す必要があるのか?
まだ、何も成し遂げていない異世界人に、どんな遠慮をしなければならないのか。
「そんな事までしなくても…。では私が神子の伴侶になれば良いのでは?」
その時の、俺を蔑むような父の目を私はきっと一生忘れる事はないだろう。
それほどまでに父は失望感を隠さなかった。
「馬鹿な事を言ってるのはお前の方だ。
女神子の伴侶は守護者のみだ。
神子は守護者を求め、守護者は神子に与える、それがハマの神意だ。
ハマの意志がないお前が守護者になぞなれるはずはない。
何よりも、女神子には子を成して貰わねばならない。
女神子から産まれる子の力は絶大になる。
全ては世界の均衡のためだ。」
イェオリに使者を、直ぐにでも神子をお迎えできるように準備を、と言った父の言葉に弾かれて、臣下達は慌ただしく動き始めた。
しかし、使者がイェオリに向かう事はなかった。
直ぐに神殿から公布があったからだ。
神子は守護者を従えて、見聞を広めるために旅に出る。
全ての者に神子への接遇を禁じる。
神子より願いがあれば其れに応えるべく行動することはその限りではない。
恙無く神子の旅が遂行される様、周知徹底すべし。
旅の目的地は旧ブランディール。今はラグーのレブロン地方と呼んでいる地域。
神子が向こうからラグーに来るのだ。
その神子の力を借りれば、ラグーは自由を得られる。
…どうやって?どうすれば…。
そんな時、セドリックに近づいたのが、ラウール伯爵だった。
ラウール伯爵はコールの採取とコールを原料としたコークスの製造を任されている、国の産業を支えている重鎮のひとり。
「セドリック王子、なんとしても神子の守護者、せめて伴侶となりなされ。なに、さほど難しい事ではありません。
貴方ほどうってつけの人物はおりません。
神子様もブランの男爵なんかより、王子の方がいいに決まっております。見栄えも資質も貴方様の方がふさわしいのですから、選ばれるのは貴方様です。
それに万が一ダメでも良いではありませんか。失うものを考えれば、試す価値はあると思いますよ。
ラグーの未来のために、立つのですよ、セドリック王子。」
神子の守護者に…?
迷いはありつつも、全てを神子に差し出す父を止めなければならないという想いもあり、ラウールの申し出を受ける事にしてしまった。
ラウールは神子を囲う手筈を完璧に整えてくれた。
ラウールに言われた通り、父には内緒で隊を整えてザッカランの教会に陣取った。
司祭パジェットの協力を得て、準備万端に整えた。
恐ろしいほどに呆気なく、神子は我が手の中に落ちた。
落ちた、と思っていた。
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