亡国の王子に下賜された神子

枝豆

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穢れた国

転身

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「教授はどうしてしまったんだろう…。」
再び閉じ込められた部屋は夕陽が入り込まなくなり、暗闇へとなり始めた。

「教授なりの何か考えがあるみたいな気もしましたが…。」
僕を宥めるようにファッジがランプに灯りを灯しながら話した。
珍しい黒色粉末を使うランプだった。
種火をつけると赤々と炎が上がり、部屋の中が一気に明るくなった。
「ほう、随分と明るい灯火なんだな。」
僕は初めて見たし、使い方を知らなかったが、旅をしていたファッジには使い慣れたものらしい。
「コークスランプですよ、南や西の国では主流になっていますね。」

「消してくれませんか?今蝋燭を用意させます。」
バジェットがそう言ってランプを睨みつけている。
その様子に不自然さを感じた。
教会に置いてある備品なのに、使うと睨みつけるのは何故なんだ!?と。

「直ぐに蝋燭に変えてください。」
バジェットが付いていた兵士に指示を出す。

「今後コールもコークスの使用も禁じます。直ぐに明かりは蝋燭に変えなさい。さあ急いで!」

訳もわからないといった感じの兵士達は、焦ったバジェットに追い立てられるように部屋から出された。

廊下へ続くドアは鍵が掛かっているのに、そういえばバジェットばどこから現れて、兵士はどこに消えたのか?

「どこに行けるのですか?」
「…私の部屋を通って、教会のどこにでも。」

抜け道というか、そもそも坑道の跡地を教会にしただけだ、とバジェットは教えてくれた。

「では外に出られる?」
坑道の出入り口はひとつではないだろう、そう思って聞いたんだけど、
「出られますが…お勧めは出来ません。神子様を取り戻さなくては。」
とバジェットは言う。

バジェットの変わり様に驚くしかない。

「ラグーのセドリック王子が守護者だとしたいのでは無いのですか?」
「ええ、それが可能ならばそれでも良いと思っていました。
ラグーがヨーシャーの縛りから外れたら、世界の均衡は取り戻せるとも考えましたので。
しかし…無理だとわかりました。
私達は愚かな事をしていたのです。
無知は罪…私は何も知らなかった。しかし知らなかったでは済まされない。」

悔しそうにバジェットが胸の内を吐露した。
聞きようによっては懺悔のように見えなくも無いほど、バジェットは悔いているようにさえ見えた。

…何を憂いている?

ほんの少し前までは、全く違う有様だったのに。
何がバジェット司祭を変えて、打ちのめしたんだ?

「何があった。何があなたの考えを改めさせたのだ?」

「…申し訳ない、私達が浅はかだった事を今知りました。
…禍です。先ほどのあの黒い石です。
無知な民は神子に騙されたのです。
その事をラグー王に知らせなければならない。

いえ、ラグーだけではありません。
世界に知らせなければ…ならないのです。」






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