亡国の王子に下賜された神子

枝豆

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穢れた国

丸め込まれる?

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セドリック王子はレオに会わせてはくれないらしい。
ちょっと微笑んで、
「ここがどこだと思ってますか?中立であるべき教会ですよ。
それは、サッカラン教会がラグーの意志を肯定している証だと思いませんか?」
と言う。

むむ、言われてみると…。
イヤイヤ、騙されるな、私!

「あなたを信じる事は出来ませんし、私は貴女を守護者だとは認めません。
神子と守護者の絆は絶対だから、私はレオの…。」
その言葉をセドリック王子に遮られた。

「それは誰が言いました?レオボルトですか?神殿の人ですか?
それが嘘だと思ってみたことはないのですか?」

…えっ?嘘?
「そんな事思う訳ないじゃないですか…。まさか、そんな事は…。」
「ないなんて言えませんよね?だってあなたはこの世界の事は何も知らなかったのだから。
目の前に差し出された言葉をただ信じるしかなかった。」

ナモン神官長さんが私を騙そうとしていた…。
イヤイヤ、騙されるなぁ!
しっかりしなきゃ!!

「違います。私は確かにレオと特別な絆があった。それはこれまでの旅で確かめていて…。」
「貴方に力を入れて与えられるのがレオボルトだと確かめてみましたか?」

…レオだけ…?
…確かに、言われてみたらそれはない。

わたしが力を使うときはいつもレオが側にいて、レオがいつも私に触れていて…。

「どうやら確かめてみた訳ではなさそうですね。神殿は信じるに値しないのですよ、神子は誰なら信じられますか?
連れて来たアカデミーの教授にでも話を聞いてみたら信じられますか?」

そうだ、神子の研究者をしている教授なら、きっとレオが特別だと言ってくれる!!
「そうですね、教授なら信じられます。」
「わかりました。連れてきましょう。」

ニヤリ、セドリック王子が口角を上げた。

外に誰かいたらしく、セドリック王子が扉を開けて誰かに指示を出している。
すぐに来ますよ、と言った通りに、程なくして教授が部屋に入って来た。

「教授!!」
入ってきた教授に縋りつこうとして、セドリック王子に止められた。
私の腕はしっかりとセドリック王子が掴んでいる。

「…サキカ、大丈夫でしたか?」
教授はどこか不安そうで、表情が固い。
だけど暴力にあった様子は無さそうに見える。
「私は大丈夫です。何か飲まされたみたいで少し頭が痛かったですけれど、今は収まりました。教授こそ少し顔色が悪いですよ、大丈夫なんですか?
レオは?リマとファッジは?」
「サキカはこんな時でも優しいんですね。私は大丈夫、レオ達もみんな無事です。」

良かった、ホッとしたら、涙が出て溢れた。
「泣いている場合ではありません。しっかりしなさい。」
「…はい。」
ゴシゴシと目を擦る。
泣いたって始まらない。

「…教授、この人に説明してもらえますか?レオが守護者だと、私はイェオリのレオに与えられたんだって…。」

教授は少し俯いて、だけどキリッとした眼差しを私に向けた。
そして、言い聞かせるように私に話し始める。

「出来ません。研究者としてウソはつけません。」

えっ!?
「…教授…?何を言ってるの?」
嘘、嘘だ。

「それが現実ですよ、サキカ。」
いつもの、冷静で時に冷たくも感じる教授だ。
「嘘!!違うわ!!」
信じられない。裏切りだ!!

「…違いません、サキカ。
嘘をついたのは神殿の方です。」

…嘘、嘘だ。

「サキカ、賢き時代から来た神子、どうかこの世界のために、現実を知って下さい。」

…教授?

「守護者はレオでなくてはならないのではありません。」

「嫌!そんな話聞きたくない!!」
「サキカ!!ちゃんと聞きなさい!!
あなたはぜったい理解出来る。理解できますから!!」
「嫌!!レオよ、わたしの守護者はレオなの!!」

「サキカ、駄々を捏ねてもムダです。
ええ、レオはあなたの守護者です。
それは間違いないでしょう。

良いですか、よく聞きなさい。
良いですか?今の状況を考えなくては成りません。今が全てですよ。
現実から目を背けてはいけません。
現実を見なさい!!」

…現実?

私達はラグーの王子に捕まって、私はみんなから離されて…レオはどこか別の場所に居て…。

そうだ、居させられて?

真っ直ぐに教授を見た。

「良いですか?サッカランにブランはいません。レオは頼るべきものがいないところに神子を連れてきた来たのです。」

…そうだ、ここに私達を助けてくれるブランはいない。
レオは孤立してて…。

教授が頷いた。

「どうやら理解出来ましたね。レオが絶対唯一の守護者と。」


でも、違うと決まったわけでもない。
セドリック王子が守護者だと決まった訳でもない。

しなければ。研究者として確かめなくてはならないのですよ。
しっかりしなさい、サキカ。
今、為すべき事はなんですか?現実を見て知ることです。
この世界を変える力を持っているのは誰ですか?
信じなさい、自分の力を。」

うん、と頷いた。私が為すべき事なんてひとつしかない。
レオを助けなくてはならないのは、他でもない、神子だ。
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