亡国の王子に下賜された神子

枝豆

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双子の街

覚悟

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子爵様に会いに行く前の日の晩、ジョージアさん達はバロスさんの家に人を集めてくれた。

来てくれた人、ひとりひとり丁寧にレオの手を借りて浄化をしていった。

「おっ、腰の痛みが消えた!」
「あら、身体が軽いわ。」
口々にみんなが体調の変化を訴えてる。その表情がとても輝いて見えるのが嬉しかった。

最後にまとめて石にして出して見せた。
鶏卵ひとつ分、それだけのものがこの小さな街に溢れていたのだ。

「…残念ですけれど、この街は禍が溢れていました。
しばらくは大丈夫かもしれませんけれど、直ぐにまた元の状態に戻ります。原因が排除されない限り、少しずつ少しずつ禍は集められていくでしょう。
では、取り除かなければならない原因はなんだと思われますか?」
と尋ねる。

誰も答えようとしない。
それを認める事が難しいのはよくわかる。

「どうしてだと思いますか?」
バロスさんに尋ねると、バロスさんは
「嘘をつき、秘密を抱えて、捕縛や追放に怯えて暮らしているからだと思います。」
と答える。

そう。ストレスは万病の元、この街の人々を苦しめているのは、行き来できない街を行き来している事への罪悪感。
本来なら持つ必要がなかった罪悪感だ。

「なぜそれでも秘密を守り続けるの?」
単純な疑問。
こんな馬鹿げた法律に黙って従ってしまったのは?そして中庭の存在を頑なに秘密にし続けた理由は何?

答えは簡単。
「向こうに大切な人がいるから。」
「向こうに大切な人がいる人を知っているから。」

「ブランからの提案です。中庭の存在を公にしましょう。
そして皆で罰を受けて罪を償いませんか?」

レオの言葉に皆が黙り込む。
…罰を受けるという事は、捕縛されて、追放されるという事。

初め聞かされた時はみんなが驚いた。私だけじゃなく、教授もジョージアさんも、だ。

だけども思った。
秘密を守り続けることが禍を集める事になるなら、それは守るに値する秘密じゃないんだ、って。

「私も渡りますよ。南にレオがいるんだから。」
すこしでも不安は取り除いて欲しいから、ニッコリ笑って見せた。

「僕は既に渡った。こちらに大切な神子がいるから。守護者としてのプライドだ。僕は常に神子の側にあり続けなければならなかったんだから。」
レオの堂々とした説得は続いた。

「神子と守護者を捕縛できるならしてみればいい。街を渡った事が罪だというのならば、この街の全ての人が咎人だ。
皆で街を出る覚悟を持てば、このおかしな法律をやめさせる事が出来る。」

これは、赤信号、みんなで渡れば怖くない、だ。
ひとりでも多い方がより効果的になる。
だから必死になったと思う。
中庭も、みんなで渡れば怖くない。
…きっとみんなわかってくれる。

「この街からみんなが出る覚悟をみせるのは、自分の暮らしと健康の為よ。
このまま怯えて暮らしていくなんてもうやめませんか?
人の暮らしを守れない領主なんて要らないし、住んでるだけで病んでいく街なんて要らないわ。
立ち上がりましょう?そしてこんな馬鹿げた法律を無くしましょう?
みんなが安心して暮らしていくために。」

明日、覚悟ができた人は教会前の広場に来て欲しいと伝えた。

同じことを南の温泉でも、北の浴場でもやった。

最後にサリーさんの所に行った。
サリーさんは既に街のみんなから話を聞いて覚悟を決めていた。

「このまま泣いてばかりいたら、お腹の子にもよくありません、それには…やっぱりこの子には父親が…。」

行政長官の息子は、どちらかいえば非難されてもおかしくはない立場の人でもある。

「リュシルーを庇いたい守りたいという気持ちはもちろんあります。
…だけど、私はお腹の子も守りたい。
3人で共に生きる道があるならば、諦めたくはないです。」

「大丈夫ブランが約束する。絶対にサリーを護る。
みんなにとって輝く光の道があることを信じてくれ。」

はい、とサリーさんが頷いた。
「明日、堂々とリュシルーに会いに行こうと思います。」

強くて綺麗な瞳だった。
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