亡国の王子に下賜された神子

枝豆

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ハマの儀式

守護者

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大きな板を囲って4人で座り込んだ。
丸く薄いクッションは尻の下に引いて胡座で座る。
風呂に入っている間に、板の上には沢山の料理が並んでいた。

「ささやかだが、ハマの祝福を受けた者達への祝膳だ。食べながら話そう。」
というナモン大神官長の言葉で、宴が始まる。

形あるハマからの下賜を受けたのはこの3人だけ、全てがイェオリ国に集められた事にきっと意味があるのだとナモン大神官長は告げる。

「この館は神子と神子の守護者が、神子が心を穏やかにする為の短期間だけご使用になられる館だ。」

館を作った時の神子のいた世界の暮らしを模しているのだという。

「このように床に直座りする世界からお越しになられた、ということか?」
アレンが尋ね、大神官長はそうだと答えた。

「世界というよりは国と思った方が正しいようです。先の神子の話ですと、我々と同じく椅子に座る国もあれば、そうではない国もあるようですよ。」

神子が望めばそれなりの調度品を整えるつもりだけれど、短期間しか使わないのでそこまでの要望が無かったそうだ。

まっ、舟で運び込むのも大変そうだし。

「神子はこの世界の理を知りません。ハマの事も、ご自身の力のことも何もです。

おそらく最初は取り乱される事でしょう。
それを宥めて、落ち着いていただくことが守護者の最初のお役目になります。」

「…それが俺だ、と?」
「そうです。神子を湖から引き上げた者が守護者であり、他の者には務まらないのです。」

神子がこの世界に座す限り、守護者との縁は絶対。神子が力を使う限り求め続けて、守護者はそれを与え続けなければならない。

「…何をどうやって与える?」
「一口では…なんとも。神子によって求める物が違うので。しかし女人の神子の場合は、まずは心の安寧と温もりでしょう。」

「…愛せ、と?」
「愛にも色々ありますよ。」
やはり一口にはなんとも、ということのようだ。

「神子にはそのお力で禍を払って頂かなくてはなりません。望めるのならば子も与えて頂かなくてはなりません。」

ヨーシャー国の王族は元々は神子から始まっている。神子の子孫が今のヨーシャー王だ。

「先の神子から200年、かつてここまで神子の不在の間が開いた事はありません。
この世界はヨーシャーの神の息吹によって辛うじて禍を取り溜めてきました。
溜めてしまった禍を無に帰す事が出来るのは神子だけなのです。」
「ただ、神子もそのやり方を知らない?」

そうだとナモン大神官長は答える。

「何もかもが2人での手探りになります。かつての神子達の全てがそうでした。
なので、神子が目覚め落ち着くまでの間、神子の眼目に触れるのはレオボルトだけであらねばなりません。」

身の回りの世話を含めて、神子の世界の全てを守護者が埋め尽くす。
「まるで卵から孵ったひな鳥のようだな。」
というサミーの言葉を大神官長は否定しない。
「そうです、サミュエル。
レオボルトはひな鳥を慈しむ親鳥となり、自分の存在意義を神子に刷り込みなさいませ。
この世界の安寧の一歩はそれに掛かっています。
2人の信頼や絆が強いほど、神子の力は大きくなります。」

…だからどうやって?

「常にお側にいて、誠実である事です。」

そのうちわかる日が来ると、ナモン大神官長は言葉を結んだ。
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