亡国の王子に下賜された神子

枝豆

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王都ヨーシャー

マリー様が教えてくれた事

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少しだけ休ませてもらいながら、マリー様は無知だった私達に色々な事を教えてくれた。

禍を体内に取り入れた時の不快感は、波長の合う人と気持ちや身体を触れ合わせる事である程度コントロールすることが出来る。だからレオに触れて、と言ったのだ。

「別に性交でなくてもいいの。あの方達がそうするのはそうしたいから。」

こういった事に関する事の倫理観の差は、例え口には出さなくてもマイナスの感情を相手にぶつけてしまう。
側妃様とマリー様は無意識のうちに、侮蔑、嫌悪という感情を皇妃様やベル様にぶつける事になった。
また自身を肯定したいと思う皇妃様やベル様も、側妃様やマリー様に同様の感情を返す。

終わりのない負の無限ループの中で、両者の溝は深くなり、いつしか浄化してもらえなくなったのだという。

見下している皇妃達に媚び諂わなければ命を保てない…。
だからギリギリまで我慢し続ける。
母が倒れたら娘が、娘が倒れたら母が、屈辱に耐えて頭を下げてきたそうだ。

おい!妻と娘が苦しんでいるのに、下衆オヤジは何をしている!
だけどきっと怒らせると自分が浄化してもらえなくなるんだろう。
皇帝でさえ見て見ぬ振りをして我が身を守っているのだ。
それでも側妃様とマリー様は周りの人を浄化し続けてきたのだ。

私は休み休みではあったけれど、マリー様の身体の中から禍を取り出す事が出来た。

「久しぶりに身体が軽いです。
神子様のご温情に心よりの感謝を。ありがとうございます。」
とお礼まで言ってくれた。

それから
「神子様の器は凄いですね。まだ数日なのに私の数年分の穢れを一瞬で祓いましたもの。
砂でなく石でドュシエされたのも初めて見ました。体積が全然違いますもの、濃い結晶という事なのでしょう、これならこっそりどこかの鉛の器に隠せます。神子様の先が楽しみです。」
と微笑んだ。

穢れを取り込める器は、限界を越えて禍を取り込んで外へ出すと器は広がるかもしれない、側妃様とマリー様はその事を皇后様のイジメで感じているそうだ。

「確証があるわけでは無いのですが、段々と受け入れられる量が増えているんです。
だから悪い事ばかりではなかったのかもしれません。毎日外に出しているあの方達はその事に気付けていませんから。」
と微笑みさえ見せるマリー様の強さは尊敬に値する。

ここでは政治の駒にされるからと、城に拠ることは望まれなかった。
そして少しでも早く、副作用が出てしまう前に城を辞する事を勧められた。

「副作用?」
「ええ、ぶり返しとでもいうのでしょうか。おそらく今夜あたりお身体が辛くなられるかと思います。守護者に触れてもらって乗り切って頂かなくてはなりません。」

そう、まだ何かあるのか、と不安になった。

「大丈夫です。命を奪うようなものではありません。必ず乗り切れますから。」
と励ましてくれる。

そして学長に会う事はいい事だともアカデミーにいる神子の歴史を研究している教授にも会った方がいいとも教えてくれた。

「とても熱心な研究者ですよ。きっと神子様がお知りになりたい事、全て答えて下さると思いますよ。」

マリー様と出会えた事に、城に来た意義の大きさを実感できた。


昼食会の席に戻ると、マリー様が茶番を申し出た。
「神子様のお力を計らせてくださらない?」と。
それはいい余興になると、皇帝達は喜んだ。

マリー様はついさっき空っぽになるまで穢れは取り覗いたから、当然絞り出して取り出せたのは小さじ一杯にも満たない黒砂だった。

マリー様は落胆し、私は初めて出来たと喜んだ。
ええ、ホント茶番です。

そんなことは知らない皇妃様は神子なんて大したことないのだと狂喜乱舞し、ベル様はこれから先が楽しみだわぁ、と勝ち誇った。
皇帝には私はまだ使い物にはならなさそうに見えたのだろう。
辞去を願い出る前に、さっさと出て行けとばかり厄介払いされた。

どうやって城から出そうかとヤキモキしていたロイドさんは事の展開に唖然としたくらいだ。

「其方の旅の終わりはこの城となる。それまではゆっくりこの世界を知る為の時間と心得よ。」

偉ぶった態度が鼻についたけれど、我慢するしかない。
とにかく副作用が出る前に、一刻も早く急いでここを出なければならない。

「それが最善のあり方ならば、そうさせて頂きます。」
と答えておいた。
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