若松2D協奏曲

枝豆

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文化祭

花音視点

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文化祭が始まった。
といっても、私はすぐにブースから抜ける事になった。

「こんなに偏るなんて!」
富田くんが描いてくれた電車の絵の売れ行きが他のを凌駕してた。

翠の楽譜のように比較的ナチュラルなデザインの中で、富田くんの電車の絵は男の子達は必ず買ってくれた。
美術部の仲間が描いてくれたロボットは男女問わず人気。

この2つはあっという間に無くなりそう…。
残していた100枚はこの2つのデザインをプリントする事にして、私と悠太くんは化学室へと移動してた。

「ったく2人で100枚とか無理だろ!」
ブースに必要な人を残して、部活や委員会でも当番がある人を除くと、私と悠太くんしか残らなかった。

「こんなに混むなんて、嬉しい誤算だよねぇ。手が空いた人から来てくれるし、とりあえず頑張ろっ?」

グチグチしてても仕方がない。やれるだけやろうと決めた。

「…色違い、だな。」
「だね。」

黒で作った電車の絵、黒はもう残り少ない。
バスケ選手のシルエット画も黒だったから。

「赤か…青、だな。」
あと緑も残っているけれど、それはロボットで使う。
「うーん、残りの黒と混ぜて紺…とか?赤と青混ぜて紫?」
「紺にしよっ。」

インクを混ぜ合わせていると、
「花音、お客さん。」
と廊下から声がして…。

「大和さん!」
「…こんにちは。手伝うよ。」
優ちゃんの後ろから覗き込んでいるのは店長の大和さんだった。

「…だれ?」
悠太くんが不思議そうに聞いてきた。
「…画材店の店長さん。」
「やった!プロ!」



「凄いね。少し見ただけでも繁盛してるの良くわかるよ。」
「おかげさまで。自分たちもビックリしてます。」

大和さんと組んで、無地のバッグに絵柄を載せていく。

そのまま優ちゃんが残ってくれて、悠太くんと少し離れたところで、もうひとつの絵柄を作ってくれている。

とりあえず載せて、乾かす。
乾いたらアイロンを掛けて…。明日用になっちゃうかも。

「花音あんなに不安そうにしてたけど、これならいけるんじゃない?1000枚。」

あー、心配してくれてたんだな。
そっか、だからか。
お休みなのにわざわざ来てくれたのか。

大和さんの指は太くて長い、男の人の手だ。
だけれど、とても繊細に動く器用な指。
つい見ちゃうのはなんでなのかな?

「うちでもやろうかな、ワークショップ。」
「大和さんなら、どんな絵にします?」

会話しながらも大和さんの手が休まる事はない。

普段、事務室にいる事が多い大和さん、売り場にいることが多い私。
話せるのは売り場に大和さんが来てくれた時だけになる。
接客しながらだから、こんなにゆっくりは話せない。

だからかな?
なんか楽しい。


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