若松2D協奏曲

文化祭

富田視点

「嫌だよ、何これ！」
「何って宣伝？」

実行委員の須藤に振られた俺の仕事は、「客寄せ」だった。

身体の前後に段ボールをつけて、そこに幾つかの袋が貼り付けられている。
それを着て校内を練り歩く。

それはいい、それは。

須藤が差し出したのは、スパイダーマンの全身スーツ。
ちなみに須藤が来ているのはスーパーマンの全身スーツ。

「脈略ないだろ、なんでコレ。」
「たまたま新田の家にあった、ハロウィンのコスプレ。」
「ハロウィンは１０月だろ！今は９月！」
「…良いじゃん、別に。」

スパイダーマンとスーパーマンが前後に段ボールをくっつけて校内を歩くなんて、ただでさえ狭い廊下で迷惑だろ！

「ちゃんと言えよ…恥ずかしい、って。」
くそっ！見透かされてるし！

「だからスパイダーマンなんだろ、顔隠しちゃえば誰もお前だって気付かない。」

…確かに。
顔丸出しのスーパーマンよりはマシ…。
って！流されるな！俺！

「嫌だよ。」
「良いから、早く着替えて！始まっちゃうよ。」

その時…。

「うわ、凄い！」
女の子達の声が聞こえて振り向くと、キャットウーマンの全身スーツを着た、超絶スタイルの良い女が立っている。
マスクで半分顔が隠れているけれど…。

「…新田？」
スゲー。
手足が長くてスタイルが良いのは制服でもわかってはいた。
外国人の血が入っているから、日本人離れした綺麗な顔立ちも、見ている。

それがキャットウーマンのコスプレをしてる。

「…どう？」
と新田がくるりと体を回してみせた。
「…うん。いい。似合う。」
…というか…。
溢れ出そうな言葉を飲み込もうとしたのに、須藤が黙ってなかった。
「…エロっ。」
バンっ！と背中を叩いて黙らせる。

段ボールは絵里に付けてもらう事にした。
身体のラインが出過ぎてる。

「…着替えてくるわ。」
新田があそこまでやってて、俺がやらない訳にはいかなくなったじゃねぇーか。