若松2D協奏曲

枝豆

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優しい北斗七星

可愛いが似合う人

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中学の家庭科の調理実習でロールキャベツを作っていた時。
「きゃあぁ!」
隣の班で可愛い悲鳴が上がった。
「嫌ぁ、むしぃ。」
どうやらキャベツの葉の中に虫がいたらしい。
(こっち…大丈夫?)
洗おうと手を出し掛けていたキャベツをじっと見つめてしまう。

「何何?若瀬ビビってんの?」
「んな訳あるか!」
つい口に出してしまったのは、強がり。
ここで可愛く怖いって言えたら?イヤ無理か。

どうせ私には似合わない。

「うるさい!じゃあアンタがやれ!」
キャベツを指さして命令する。
「えっ?なんで?」
「…なにぃ?ビビってんの?」
意地悪さを全面に出して男子に押し付けた。

「まあ、若瀬には似合わないよな。」
「うんそうそう、手掴みでポイってやりそう。」

(どーせ似合いませんよ。自分が一番わかってますよ。)そんな会話を聞こえないふりをしてやり過ごした。



そんな昔を思い出したのは…。

「きゃあ、虫がいるぅ!」
可愛く悲鳴をあげる子の声を聞いたから?

高校に入ってくじで当たってしまった委員会。よりによって園芸委員。
今日は花壇の草むしり。

虫嫌い、蛙も蛇も嫌い、高い所嫌い、暗いの嫌い…。

似合わない、って自分でも思う。
平気になりたいのに、どうしてもなれない自分。

…この子は似合いそう…。
一緒に作業している子をつい見ちゃう。
A組の山本さん。
長い髪をふわりと下ろして、ニッコリと笑う可愛らしい子。吹奏楽部というのもポイント高くしているように感じるのは何故なのか?

見られているのに気付いたのか、どうした?っていう目で見られた。

「あー、山本さん可愛いから虫ダメそうだなぁ、と思って。」
「えー、別に可愛くないし。虫も割と平気。」
「えっ?そうなの?」
「うん、おばあちゃんち農家で。野菜送ってくれるんだけど、かなりの確率でくっついて来るから慣れちゃった。」

へえ、意外。人は見た目にはよらないとはこの事か。

「若瀬さんは?」
「私は…。」
平気って言いたいけど…それはウソになる。
だけど似合わない…。

「若瀬さんみたいな人が苦手だったりすると可愛いかもね。」
「えっ?」
「しっかりしてて、スポーツ万能で、だけどちょっと苦手なものがある…。ギャップ萌え?」
「えー、何それ。」

ふんわりと笑う山本さんにちょっとだけ素を出したくなった。
「…実はあんまり得意じゃない…かも。」
苦手とは言い切れない優柔不断さにイヤになる。

「ふふふ、やっぱり可愛い。」
ヤメテ!可愛い人に可愛いと言われるとなんか照れるから。
「やめてよ、キャラじゃない。」
「あはっ、ごめんごめん。」

そんな事ないよ可愛いよー、なんて押し付けて来ないところが更に山本さんを可愛く見せるってことにきっと山本さんは気付いていない。
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