修道院に行きたいんです

枝豆

文字の大きさ
上 下
94 / 100
オマケ

石がないんです1

しおりを挟む
石がない!
ダリアン島の港湾整備のために石垣を作らなきゃならないのに、そのための石が揃わない。
その石の名前はゴッツウォールという、ちなみにキッテンの城もゴッツウォールで出来ている。
白く固く、磨き上げると美しい光沢を放つ石だ。

「くそっ!売り惜しみだろうな、きっと。」
とエルが悪態を吐き、
「はあー、それしか考えられん。ラブレフの奴は値を釣り上げる気満々なんだろう。」
とステファンが嘆く。

島の整備を任されているエルとステファン殿下がイラついて頭を抱えること数ヶ月。

トーニャが王太子妃に内定し条約締結の噂が出始めた頃から徐々に流通量は減り続け、比例して値が上がり通常の倍近い値段になってしまった。
本決まりになってから買い付けようと思っても全く手が出ない値段になってしまった。

ゴッツウォールの産地として有名なのは、ラブレフ侯爵領のゴッツ山。石はあるところにはある、それこそ山のように。というか山。
つまり採掘を減らし流通を制限し値を釣り上げているのはおそらくラブレフ侯爵…。

「少し脅して供出させてやるか。」
と話すほどまで2人は切羽詰まっている。
少しと言いながら、2人の話は真っ黒で重たい。

ゴッツ山そのものを国有化するとか、適当に罪をでっち上げてラブレフ侯爵を罪人に仕立て上げるとか…。
ああ、合議制ってホント素晴らしい!!
賢明な公爵様方がこんな制裁をお許しにはならない。

しかし、たかが石、されど石。
ダリアン島の造成は港湾工事が終わらないと先には進めそうもない。
港が出来ないと船が付けられない。道も作れないし家も建てられない。
何より春前までに用水路の建設を終わらせないと、林業や農業の計画が更に1年は遅れてしまう。

それより何より。
トーニャの里帰りの時、ステファンはシュタイン王妃に思いっきりケンカを売ってきたらしい。
カルロ国王陛下とシュタイン国王陛下がなんとか穏便に話をまとめ上げたらしいけれど、王妃同士はバチバチに火花をちらつかせていたとかいないとか。
カトリーナ様とケンカ…。考えただけで身震いがする。

気が弱い王様がなんとか踏ん張ってくださっている間に、王妃様の気まぐれが発動するよりも前になんとかしておかないとトーニャがここに嫁がされた意味がなくなってしまう。

この件について色々と手伝ってくれるダーランド補佐官が幾度もラブレフ侯爵に面会を要請しているけれど、話し合いに至らない。

「他からは買えないの?」
トーニャの疑問は私の疑問でもある。
「他の石ではダメなの?」
私の疑問はトーニャの疑問でもある。

「最高級なんだ。肝要な部分だけでもゴッツウォールで作りたい。ゴッツウォールはゴッツ山でしか採れない。」
とお二人は拘りを見せていらっしゃった。

「私に出来ることある?」
と聞いてみても、
「頼むから何もしないでくれ。」
と言われてしまう。

私そんなに頼りない?
でも、何をしたらいいかわからないから、何もしてあげられない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう

楽歩
恋愛
白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳のシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢。 きらびやかに彩られた学院の大広間で、別の女性をエスコートして現れたセドリック王太子殿下に婚約破棄を宣言された。 傍若無人なふるまい、大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、王太子が心惹かれる男爵令嬢には嫌がらせをする。令嬢の有責で婚約破棄、国外追放、除籍…まさにその宣告が下されようとした瞬間。 「心当たりはありますが、本当にご理解いただけているか…答え合わせいたしません?」 令嬢との答え合わせに、青ざめ愕然としていく王太子、男爵令嬢、側近達など… 周りに搾取され続け、大事にされなかった令嬢の答え合わせにより、皆の終わりが始まる。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

処理中です...