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不甲斐ない男
ティバルの娘
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「ディバルの娘のところにいると思う。」
「娘…ですか?」
「ああ、ティバルの娘は生後の披露目で、国を割る不吉な姫と呼ばれた。
帝や宰相、そしてディバルも娘御を2人の皇子から離して育てることを決めた。
ディバルが城に来ることになり、娘は城の屋敷ではなく、遠くの山荘に屋敷を構えさせられている。」
「そこに…ジンシが?」
「おそらく…は。
フェイが謀反を阻止出来る唯一のジンシを逃すとしたらティバルほどうってつけの者はいない。長く都から離れていたティバルはおそらく毒に染まってはいない。
ティバルの娘はサルザックを戦い抜いた精鋭に守られている。そこにジンシを囲っても何も問題がないはずだ。
将軍なら草もなかなか手を出せないし、フェイの朱雀でさえも難しいだろう。
そこにジンシがいるとなれば、玄武や白虎も手を貸すかもしれない。
フーシン、ディバルに会いに行け!身の振り方はティバルと相談しろ。」
託宣が本当になるのならば、謀反を止めるのはおそらくティバルに違いない。
子供のお使いのようにティバルの下へ行かなければならなくなった。
ティバルとフーシンには殆ど関わりがない。
ティバルはどこかフェイと距離を置いている。いやフェイだけではない、宰相とも各府の長とも一線を画していた。
2人が話したのはあの形見分けの時だけだった。
「ジンシ殿下の垢付きのお品である。」
と絹の巾着袋に入れられた笛を渡されただけ。
…そうだ。形見という言葉ではなかった。垢付きつまりは単なるお下がりという意味に取れなくも無い。
問いただしたティバルはあっけなく口を割った。
「…少し遅い。もっと早く気付くかと思っていた。」
と容赦がなかった。
「脳筋の武官故に、ご容赦を。」
こればっかりは謝るしか出来ない。しかも自分では気付けなかったのだ。
シンエンが示してくれなければ、わからないままだった。
「…シンエン殿か、懐かしいな。」
「お知り合いですか?」
「…うん、まあ。昔の話だ。」
シンエンとの因縁は濁すティバル殿であった。
「シンエン殿はなんと言っている?」
と聞かれて、包み隠さずに答えた。そうしろ、と言われていたからだ。
「…そうか。割れたか。割りたくはなかったんだがなぁ。」
と遠い目をしている。
「おそらくジンシは放っておいては立たない。」
「…でしょうね。」
フッとティバルは嘲笑った。
「…わかるか?」
「ええ、諦めの早い男ですから。歯がゆいくらいにすぐに全てを諦めてしまうのは、ジンシの悪い癖です。」
「立たせるべきか?」
「ええ、でなければフェイと共に国は滅びます。」
「…そうか。」
「策は…其方が練れ。こちらも武骨者の集まりゆえ、智慧はない。」
先ほど脳筋と自虐したのを受けてなのか、ティバルはそう卑下する。
しかしそれはフーシンも同じ。
「策と言われましても…。」
「シンエン殿を頼ればいい。」
ティバルはそう言って笑った。
また子供のお使いよろしくシンエンの下へ派遣されそうになり、フーシンはつい
「知己ならば直に話してはみませんか?」
と勧めてみた。
「シンエンとは袂を分かったのだよ。フーシンが間にはいるからこそ話が出来る。
手間を掛けさせるが、耐えてくれ。」
とまで言われてしまっては使い走りを続けるしか無い。
「娘…ですか?」
「ああ、ティバルの娘は生後の披露目で、国を割る不吉な姫と呼ばれた。
帝や宰相、そしてディバルも娘御を2人の皇子から離して育てることを決めた。
ディバルが城に来ることになり、娘は城の屋敷ではなく、遠くの山荘に屋敷を構えさせられている。」
「そこに…ジンシが?」
「おそらく…は。
フェイが謀反を阻止出来る唯一のジンシを逃すとしたらティバルほどうってつけの者はいない。長く都から離れていたティバルはおそらく毒に染まってはいない。
ティバルの娘はサルザックを戦い抜いた精鋭に守られている。そこにジンシを囲っても何も問題がないはずだ。
将軍なら草もなかなか手を出せないし、フェイの朱雀でさえも難しいだろう。
そこにジンシがいるとなれば、玄武や白虎も手を貸すかもしれない。
フーシン、ディバルに会いに行け!身の振り方はティバルと相談しろ。」
託宣が本当になるのならば、謀反を止めるのはおそらくティバルに違いない。
子供のお使いのようにティバルの下へ行かなければならなくなった。
ティバルとフーシンには殆ど関わりがない。
ティバルはどこかフェイと距離を置いている。いやフェイだけではない、宰相とも各府の長とも一線を画していた。
2人が話したのはあの形見分けの時だけだった。
「ジンシ殿下の垢付きのお品である。」
と絹の巾着袋に入れられた笛を渡されただけ。
…そうだ。形見という言葉ではなかった。垢付きつまりは単なるお下がりという意味に取れなくも無い。
問いただしたティバルはあっけなく口を割った。
「…少し遅い。もっと早く気付くかと思っていた。」
と容赦がなかった。
「脳筋の武官故に、ご容赦を。」
こればっかりは謝るしか出来ない。しかも自分では気付けなかったのだ。
シンエンが示してくれなければ、わからないままだった。
「…シンエン殿か、懐かしいな。」
「お知り合いですか?」
「…うん、まあ。昔の話だ。」
シンエンとの因縁は濁すティバル殿であった。
「シンエン殿はなんと言っている?」
と聞かれて、包み隠さずに答えた。そうしろ、と言われていたからだ。
「…そうか。割れたか。割りたくはなかったんだがなぁ。」
と遠い目をしている。
「おそらくジンシは放っておいては立たない。」
「…でしょうね。」
フッとティバルは嘲笑った。
「…わかるか?」
「ええ、諦めの早い男ですから。歯がゆいくらいにすぐに全てを諦めてしまうのは、ジンシの悪い癖です。」
「立たせるべきか?」
「ええ、でなければフェイと共に国は滅びます。」
「…そうか。」
「策は…其方が練れ。こちらも武骨者の集まりゆえ、智慧はない。」
先ほど脳筋と自虐したのを受けてなのか、ティバルはそう卑下する。
しかしそれはフーシンも同じ。
「策と言われましても…。」
「シンエン殿を頼ればいい。」
ティバルはそう言って笑った。
また子供のお使いよろしくシンエンの下へ派遣されそうになり、フーシンはつい
「知己ならば直に話してはみませんか?」
と勧めてみた。
「シンエンとは袂を分かったのだよ。フーシンが間にはいるからこそ話が出来る。
手間を掛けさせるが、耐えてくれ。」
とまで言われてしまっては使い走りを続けるしか無い。
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