16 / 33
白椿家のパーティー2
しおりを挟む
人の気配を感じて目を開けると、隣に彰宏さんが立っていた。慌ててその場から離れようとすると力強く手を掴まれた。
「なぜ逃げるのですか?」
その声はどこか寂しそうに聞こえた。紗紀子は何も話せなかった。視線を泳がせ戸惑っていると
「今日は来てくれてありがとう。君に会いたくて開いたようなものなんだ」
とにこやかに笑って言ってきた。その声に不思議と落ち着いてしまう。
(言わなきゃ…誤らなきゃ…)
紗紀子は自分自身に言い聞かせた。
「ごめんなさい…」
出てきた言葉はそれだけだった。怖い。顔を見るのがとても怖い。
(なぜ私に平気で会いたいとかいうの?どうしていつもそんな簡単に他人と話せるの?…どうして…?)
私の中の小さな私が叫んでいた。
「どうかしたのか?」
彰宏さんは困った顔をして見せた。私の言葉足らずのせいで混乱させたかもしれない。
(なんて言ったらいいの?)
頭がパニックになって真っ白になって何も言葉が出ない。
小さくなって震えている紗紀子を見て、彰宏は彼女の友人の話を思い出していた。彼女を襲った過去の話を彼女の友人から聞いたのだった。あまりにも酷い話だと彼は思っていた。それに「親友に裏切られて婚約が破談になった」そんな噂を偶に聞くことがあった。ほかにも多くの彼女の噂も嫌でも耳に入ってくる。信じていた人に裏切られ、他人に後ろ指をさされていた目の前の彼女を哀れに思う。心の大きな穴を埋められないかと思う。
「もしかして、この間のことを気にしているんですか?」
彰宏は彼女の顔色を伺いながらそう聞いた。ちらっと上目使いで悲しそうな顔でこちらを見た。(当たったか)と彼は思った。
「誤らなければいけないのはこちらの方です。無礼に伺ったりして」
「いいえ、ほんとにごめんなさい」
紗紀子はぺこりと頭を下げた。そんな彼女を見てクスクスと彰宏は笑った。
「俺たち誤ってばかりで面白いですね」
紗紀子の顔にも笑顔が現れた。
(慎重に)
彰宏は自分の心に言い聞かせていた。
「なぜ逃げるのですか?」
その声はどこか寂しそうに聞こえた。紗紀子は何も話せなかった。視線を泳がせ戸惑っていると
「今日は来てくれてありがとう。君に会いたくて開いたようなものなんだ」
とにこやかに笑って言ってきた。その声に不思議と落ち着いてしまう。
(言わなきゃ…誤らなきゃ…)
紗紀子は自分自身に言い聞かせた。
「ごめんなさい…」
出てきた言葉はそれだけだった。怖い。顔を見るのがとても怖い。
(なぜ私に平気で会いたいとかいうの?どうしていつもそんな簡単に他人と話せるの?…どうして…?)
私の中の小さな私が叫んでいた。
「どうかしたのか?」
彰宏さんは困った顔をして見せた。私の言葉足らずのせいで混乱させたかもしれない。
(なんて言ったらいいの?)
頭がパニックになって真っ白になって何も言葉が出ない。
小さくなって震えている紗紀子を見て、彰宏は彼女の友人の話を思い出していた。彼女を襲った過去の話を彼女の友人から聞いたのだった。あまりにも酷い話だと彼は思っていた。それに「親友に裏切られて婚約が破談になった」そんな噂を偶に聞くことがあった。ほかにも多くの彼女の噂も嫌でも耳に入ってくる。信じていた人に裏切られ、他人に後ろ指をさされていた目の前の彼女を哀れに思う。心の大きな穴を埋められないかと思う。
「もしかして、この間のことを気にしているんですか?」
彰宏は彼女の顔色を伺いながらそう聞いた。ちらっと上目使いで悲しそうな顔でこちらを見た。(当たったか)と彼は思った。
「誤らなければいけないのはこちらの方です。無礼に伺ったりして」
「いいえ、ほんとにごめんなさい」
紗紀子はぺこりと頭を下げた。そんな彼女を見てクスクスと彰宏は笑った。
「俺たち誤ってばかりで面白いですね」
紗紀子の顔にも笑顔が現れた。
(慎重に)
彰宏は自分の心に言い聞かせていた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる