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一章
2
しおりを挟むどうしてこんなことに。
────────二日前。
勉強を終わらせて寝る前にゴミ箱へ書きこもうと開いたら届いていたコメント。
〝http://〇〇.net
404でお待ちしております。〟
消した一つ前の書きこみにそうコメントがついていた。
「また?」
ハンドルネームは『KURO』。
これが『404』のアドレス?
ここにアクセスしなさいってこと?
「する訳ないでしょ」
なにか分からないリンクは押さないなんて基本でしょ。
削除っと。
ベッドに転がって今日の愚痴を書く。
それが寝る前の私の日課。
言えないことは全てここに書いて捨てている。
愚痴の殆どは母へのものだけど。
書きこんで寝ようと戻るとまたコメントのマーク。
まさかと確認すると、
〝http://〇〇.net
404でお待ちしております。〟
の文字。
ただの偶然かも知れないけど、書きこむタイミングを待っていたようで些か気持ち悪い。
削除してブロックしようとしたら新しいコメントが増えた。
〝Uの話
アレだよ、U香
こらwww
http://〇〇.net〟
「なにこれ」
コピペしたようなそれ。
まさかと思ってリンクをクリックすると、繋がった先は話に聞いた『404』とは全く違うどこかの掲示板だった。
ひよこ:今日もアレと話しちゃった!
クマちゃん:勇者wほんと尊敬するw
林檎:よく話せるね。私には無理。ムカつくもの。
掲示板じゃなくてチャット?
今の参加人数と書かれているカウンターは19人。
短時間で書きこみされているそれを読んで行く。
うた:嫌いなら話しかけるの止めたら?
ひよこ:駄目だよ!私しか友達居ないしw
クマちゃん:よく言うよ。誰より嫌ってる癖に。
ひよこ:だから楽しいの。褒めてる風に嫌味言うのが。
クマちゃん:あんた最低だwww
雪女:やっと勉強終わったー!
まだログ読んでないんだけどなんの話し中?
書きこんでいるのは『ひよこ、クマちゃん、林檎、うた、雪女』の5人。
参加人数が19人も居るのに他の14人はただ傍観してるだけなのかな。
ひよこ:おつ!Uの話
クマちゃん:アレだよ。U香
ひよこ:こらwww
これだ。
『KURO』って人がコピペしたのは。
一番最新の書きこみまで見たけど『KURO』の名前はない。
このリンクを貼ったのだから『U香』は私のこと。
14人の中に『KURO』が居るのか分からないけど、私に読ませたくてリンクを貼ったことは間違いない。
ひよこは……七海かな。
私は今日、七海としか話していないから。
「だからなに?」
七海は友人じゃない。
私がそうなんだから七海も私を友人と思ってなくて当然。
お互いに腹の探り合いをして当たり障りのない関係を続けているだけ。
「親切で教えてくれたの?それとも嫌がらせ?」
残念だけど、こんなの嫌がらせにもならない。
これを読んで傷つくのは本当の友人だと思っていた人だけ。
私たちは最初から上辺だけの付き合いだからこんなことで傷ついたりしない。
「寝よ」
この程度のことを相手にする気にもなれなくて、ページを閉じて眠りについた。
──────1日前。
今時こんな人も居るのね。
前に並ぶクラスメイト5人を目にして思う。
「七海が可哀想!」
「最低!」
口々に言うのは深雪と久美。
どうやら七海の狙っていた男の子が私に告白したのがコレの理由らしいのだけど。
「友達なんだから知ってたでしょ!?」
「謝りなさいよ!」
知らないよ。
だって七海の好きな人の名前なんて今まで両手じゃ数えきれないくらい聞いたもの。
『〇〇君カッコいいよね』
『✕✕君に告ろうかな』
シュンペイ君、タカシ君、マサル君……などなど。
ちなみに私はその名前の人がどの人なのかも分からない。
クラスメイトの顔や苗字は覚えていても名前まで分からないのも普通でしょ?
「七海はツトム先輩を追ってこの高校に来たのに!」
さっきから出ている〝ツトム先輩〟という名前。
その人が私に告白してきたのだと思うけど……どの人?
「それはいつの話?」
「今日!朝告白されたでしょ!?」
「朝?もしかして下駄箱の人?あれ告白だったの?」
今朝下駄箱で男の子から話しかけられた。
付き合ってる人が居るかと訊かれたから居ないと答えて教室に来たけど。
「なにそれ!馬鹿にしてるの!?」
「ううん」
あんなの告白なんて分からない。
父や兄にだって訊かれたことがあるもの。
付き合ってる人が居るか訊いてきたからって、その人が自分を好きなんて自惚れた考えにはならない。
あの人先輩だったんだ。
敬語使わずに失礼なことしちゃったかな。
1年の下駄箱に居たから同じ1年生なのかと思ってた。
「酷いよ。好きって話したのに」
「私から言ったんじゃないよ?付き合ってもいない」
どうして私が責められるのか分からない。
仮にあれが告白だったのだとして七海があの先輩を好きなのだとしても、あの先輩が告白したからと私を責めるのはおかしくない?
だって私はあの先輩の顔さえも知らない。
言葉を選ばず言えば、あの先輩が勝手に私を好きになって告白してきただけの状況なのに。
まるで私が悪者。
涙ながらに酷いと訴える七海の両隣では琴子と真美が可哀想と慰めていて、他のクラスメイトは泣いている七海に同情的でヒソヒソ言っている。
「ごめんね。でも本当に付き合ってとは言われてない」
「ツトム先輩が友達と話してるの聞いたもん!付き合ってる人は居ないって言われたって!」
「うん。それは言った」
「友達の好きな人なんだから居るって言うべきでしょ!」
「訊かれたことに正直に答えただけだよ」
もう良いかな。
本の続きが気になるんだけど。
読みかけの本に視線を向けると肩を押されて頬を叩かれる。
「今まで七海が友達で居てやったのに何その態度!」
「七海が居なきゃ友達いない癖に!」
巻きこまれて叩かれて。
今まで腹の探り合いをして当たり障りのない関係を続けて来たけど、こうなってしまったのならもう必要ない。
「友達?笑わせないで。私を馬鹿にして優越感に浸ってただけなのにどこが友達なの?」
「なにそれ酷い!私は友達だと思ってたのに!」
「残念だね。褒めてる風に馬鹿にする日課ができなくなって」
あのチャットの『ひよこ』は間違いなく七海。
U香(優香)が私のことだったのも間違いない。
以前七海と2人で話したことも書かれていたから。
「七海が誰を好きなんて知らない。何人の名前を七海から聞いてると思ってるの?誰々はカッコいい、誰々には告ろうかなとか、何十人の中の何番目の好きな人なのよ。本当に好きなら告白すれば?あの先輩が何番目の好きな人なのか知らないけど」
ヒソヒソ話していた周りの子の声はザワザワにかわる。
今度は七海が冷たい目で見られる番。
特に男の子のクラスメイトから。
「……」
「七海!」
教室から走って出て行った七海を琴子と真美が追いかける。
「あんた覚えてなさいよ!?」
「許さないから!」
なにその捨て台詞。
「馬鹿みたい」
深雪に払われてしまった本を拾いながら呟く。
ひねくれてるなあ、私。
でももう友達は要らない。
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