ホスト異世界へ行く

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第九章 魔界層編

神龍の祠

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「冷た」

首筋にひんやりと冷たさを感じて目が覚める。

「何ですいて、痛っ」

どうして上から水がと右手を動かすと激痛が走った。

「ああ……そっか」

一瞬自分が置かれた状況が判断出来なかったけど痛みと寒さで意識がハッキリして思い出した。

「落盤したんだった」

魔王や赤髪が頂に向かったあと俺も洞窟内の作業に加わって黙々と手作業で除雪している最中に落盤事故が起きた。
咄嗟に手の届く範囲にいた城仕えたちは岩石の向こうへ突き飛ばしたけど、指揮をとっていたクルトも含め無事に逃れられただろうか。

「魔法を使わなくても崩れるとか」

脆いことは先に聞いてたけど手作業でも崩れるとは。
これだけ話していても誰の声も聞こえてこないということは少なくとも周りに生存者は居ないようだ。

「折れてんのか。この痛み」

体のありとあらゆる所が痛いけど一番は左腕。
寒いのに痛みで冷や汗が出るほどで回復ヒールをかける。

「……やっぱ駄目か」

恐らく今居るのは洞窟の半ば辺り。
奥に行くほど魔素が阻害されて魔法が使えなくなるとクルトが言っていたけど、聖魔法を使おうとしても地球に居た時のように無反応。

「参った。添え木になるような物なんてないぞ」

辺りは暗闇。
地面を手探りすると冷たい雪やゴツゴツした石があたる。
洞窟の壁や天井が崩れたんだから岩石しかなくて当たり前か。

洞窟内に響く独り言。
調整アジャストメントも使えなくなっていて寒い。
落盤で外からの冷気が遮断されて寒さが軽減されていることが唯一の救い。

なるべく腕を動かさないようケープの内側に着ていた服を脱いで応急処置としてそれを使い左腕を固定する。
激痛で冷や汗をかきながら応急処置をして暗闇に慣れてきた目で辺りを見渡した。

「……死ぬな。ここに居たら」

除雪をしていた方角を塞いでいる大小の岩石。
元は洞窟のだっただろうそれが道を完全に塞いでいるから戻ることができない上に、振動でも与えられたら今にも崩れてきそうだ。

「仕方ない。進もう」

足元はゴロゴロ転がってる岩や雪で最悪の足場だけど、ここで助けを待っていても道を塞いでいる元天井(壁)が崩れてくればどちらにせよ命の保証はない。

地面の雪と天井の間にある空間を身を屈めながら進む。
中間を超える少し前辺りから天井との間に隙間が見られるようにはなっていたけど、この辺りは身を屈めながらでも進めるだけの空間があって良かった。

痛みと寒さを堪えながら奥へ奥へ。
洞窟の奥にある祠の場所は広場のようになってると魔王から聞いていたから、その場所に一縷の望みをかけ進んで行った。


「…………」

落盤があった場所から数十分ほど行ったところで外から雪崩込んだ雪も綺麗になくなって、壁に手をつけ足許に気を付けながら歩いて辿り着いた場所に息を飲む。

「すご」

広場の中央に聳える巨大な石碑。
その他にも左右に一段小さな石碑が並んでいる。
洞窟内だというのに人工的に埋めてあるのか地面には草が生えていて、巨大な石碑の傍には立派な大樹もある。

祠というから寺や神社にある小さな建物のような物を想像してたけど、この広場自体が神龍の祠なんだろう。
魔道具を使っているのか、作業をしながら通った洞窟内の頼りない灯りと違って外に居るかのように明るい。

神龍と歴代の魔王に仕えた祖龍王たちの墓場。
安全そうな場所で気持ち的に安心したのもあるだろうけど、神聖な雰囲気がある落ち着く場所でホッとする。

「少しここで休ませて貰います」

神龍の墓石だろう巨大な石碑の前に行って跪き先に断りを入れてからその場に座って体の怪我を確認する。
擦り傷、切り傷、痣はあらゆる所にあるけど、一番大きな怪我は閉鎖骨折をしている左腕のようだ。

「あの落盤で生きてただけでも奇跡か」

城仕えを突き飛ばした後は瓦礫を避けるだけで精一杯。
咄嗟のことだからどう避けたのかさえ覚えてないけど火事場の馬鹿力とでもいうのか、身体能力だけで瓦礫から逃げられた自分を褒めてやりたい。
地球で暮らしている時の俺だったら間違いなく瓦礫の下敷きになっていただろう。

「疲れた」

地面に寝転がる。
強い痛みが麻痺して分からなくなってきたのと同時に意識が朦朧としてきた。

生き残ったはいいけどこれからどうしようか。
魔法が使えないから転移で脱出することもできないし、空腹になっても異空間アイテムボックスから食べ物を出すこともできない。
無事に逃げられた人が助けを呼んでくれるだろうか。

「……落盤が起きたことを知ったらフラウエルが心配しそう」

巨大な石碑の傍はなぜか少し暖かい。
朦朧とした意識では解決策は思いつきそうにない。

「神龍と歴代の祖龍王たち……みんなの寝床に侵入してごめん。……このまま少しだけ眠らせてくれ」

神龍と歴代の祖龍王が眠る祠。
魔族にとって神聖な場所で眠るなんて不届き者と言われても仕方ないけど体力も意識ももう限界。

「……みんな無事であってくれ」

そんなことを願いながら意識を手放した。





「……ん?」

眠りについて幾時間か。
頬を擽る感触と甘い香りで目覚める。

「……蛇?か?」

目の前でとぐろを巻いているのは羽が生えた黒蛇たち。
その黒蛇だけでなくモフモフの動物たちが俺の体に身を寄せていることに気付いて驚く。

「目覚めたようだな」
「……誰?」

声が聞こえた方に顔を向けると神龍の石碑を見上げ俺に背中を向けている黒ケープ姿の背の高い男が立っていた。

「その果実を食べるといい」
「果実?……あ、ありがとう」

黒蛇が頭の上に乗せて渡してきた白い果物。
白い苺か?鑑定も使えないから何なのか分からないけど。

「果実は好きではないか」
「ううん。そうじゃないけど」

見知らぬ人がくれた見知らぬ物を口にするのが怖い。
警戒するのは当然だと思う。

「警戒せずとも毒ではない。その果実は怪我に効く。すり潰して腕にも塗ってあるが、目覚めたならば食した方が早い」
「そういえば腕……もしかして治療してくれたのか?」
「みなが助けるよう煩いのでな」

みな?……この黒蛇や動物たちのこと?
狼のような動物からリスのような小動物まで様々な種類が居るけど、たしかにそれぞれが俺に体を寄せていて心配してくれているようにも見える。

「食べたくなければ食べずともいい。痛みが続くだけだ」
「いや、食べる。治療してくれたみたいだから信じる」

腕に巻かれていた布。
男が治療してくれたんだろうそこから黒蛇に渡された白い苺と同じ甘い香りがしていて、すり潰して腕に塗ったというのも本当だったことが分かって口に運んだ。

「うん。やっぱ苺……痛っ!」
「痛むだろうが耐えろ。じきにおさまる」

痛みを思い出したように激痛の走った腕。
騙されたのかと恨みたくなったものの不思議なことに激痛がしているのは骨折している左腕だけで、毒などを食べさせられた訳ではなさそうだ。

腕を押さえて激痛に唸る俺を見ている動物たち。
俺がどんなにもがいても逃げずにただジッと寄り添っていた。

「おさまったようだな」
「……な、なにが起きた?」

激痛を堪えて数分。
驚くことにあれだけあった擦り傷や切り傷や痣が全て消えて骨折していた左腕までも完全に治っている。

「言っただろう。怪我に効くと」
「言ってたけど完治するとは思ってなかった」

鎮痛剤的な効果があるのかと思っただけで、まさか白苺に怪我を完治させるような奇跡の力があるなんて思うはずもない。

「驚いて前後が逆になったけどありがとう。助かった」
「その体は脆すぎるようだ」
「え?まあ、頑丈な魔族と比べられたら脆いけど」

お礼には触れることなく流されて魔界層に来てから何度言われたか分からないという言葉に答える。

「私からすれば魔族も大差はない」
「ん?その言い方だと魔族じゃないように聞こえるけど。地上の精霊族でもないよな?魔層を通れないはずだし」

名前も知らない男。
名前どころかケープのフードをかぶっているとあって顔はもちろん髪や瞳の色すらも分からないけど。

「私からもこれを渡しておこう」
「とことん俺の疑問を無視してくれてますね」
「刻が来るまで会うつもりはなかった」
「刻?……なんの話?」

という疑問すらスルーした男は手のひらを握って開く。
何もなかったその手のひらに現れたのは小さな三日月。
どうやって出したんだ?マジシャン?

「あれ?この形って前にも見たような……あ、謎の」

夢か現実か分からない場所に拘束されていた男。
あの男がくれた三日月の玩具と同じ物だと話している最中に投げられ慌てて受け取ったと同時に眩い光で目がくらむ。

【ピコン(音)!音声モード。神魔シン・ユウナギのステータスを更新。特殊恩恵〝天命〟を手に入れました。同時に特殊恩恵〝天命〟〝Dead or Alive〟〝カミサマ(笑)〟〝魔影〟が融合。新たな特殊恩恵〝始祖しそ〟を手に入れました】
紫蘇しそ?……あ、始祖しそか」

拘束されてる男から貰った時は部屋に戻ってからの更新だったけど、今回は受け取ってすぐステータスが更新された。

「特殊恩恵が増えたってことは見知らぬ人もあの白髪の謎の人の仲間なのか?捕まって拘束されてたみたいだけど」

あの男と違って胸を圧迫されるような威圧感はないけど、特殊恩恵を与えられる種族なんて早々居ると思えない。

「二人はなんの種族なんだ?特殊恩恵を与えられる種族が居るなんて聞いたことがないから一般的には知られてない珍しい種族だよな?あとあの男は無事に逃げられたのか?」

地上層の人族とエルフ族と獣人族。
魔界層の魔人族と竜人族と龍族。
それがこの世界に存在する種族だとエミーから教わったけど、魔王曰く数が少ない種はただ知られていないだけで地上層にも魔界層にも居るらしいから、白髪の男もこの男もおおやけには知られていない珍しい種族なんだろう。

「真実を知りたければ力をつけよ。さすれば自ずと辿り着く。今しばらく眠れ。じきについが迎えにくる」

そう言って俺にかざされた手のひら。
自然に力が抜けて床に倒れると黒蛇や動物たちも離れて黒ケープの男の傍に行く。

「我々の愛する美しく愚かな寵児ちょうじよ。訪れし刻に再度相見あいまみえよう。運命を決めるのはお前だ」

白髪の謎の男も言っていた言葉。
またその意味を聞くことが出来ないまま意識は途切れた。





「目が覚めたか」
「……フラウエル?」

目を開けて真っ先に見えたのは魔王の顔。
手を握っているのとは反対の手で髪を撫でられる。

「よくぞ生きていてくれた」
「生きて……あ!みんなは無事なのか!?」

あのあと助けに来て祠から運び出してくれたのか、飛び起きた場所は上官用の天幕の中だった。

「残念だが数名は下敷きとなって命を落とした」
「……そっか。あの規模の落盤で犠牲者が出ない訳ないよな」

洞窟内で作業をしていたのは数十人。
手前、中間、俺が居た奥側と分かれて作業していたから、場所によって落盤に巻き込まれずに済んだ運がいい人と不運にも巻き込まれて命を落とした人とに分かれた。

「クルトは?指揮してたんだけど」
「生きている」
「……何か言い方が変」

大丈夫や無事という言い方じゃなくという言い方に含みを感じる。

「クルトはどこに居るんだ?」
「別の天幕だ」
「顔を見に行く」

ソファから立ち上がると腕を掴まれる。

「今は治療中だ」
「怪我したのか?」
「ああ」
「怪我の状態は?すぐに治療は済むのか?」
「心配ない」

俺の腕を掴んだまま見上げている魔王。

「……嘘をつくのが下手なことを自覚した方がいい」

心配ないって顔じゃない。
すぐに治療が終わるような軽い怪我ならそんな深刻な顔してないだろうに。

「本当のことを言え」
「……すぐにでも治療が必要な状態だが、今は魔素が阻害されていて魔法が使えず魔回復ダークヒールをかけてやることができない。魔人界へ連れ帰ろうにも調整アジャストメントのかかっていない体ではもたない」

根負けしたのかこれ以上は隠せないと思ったのか正直に状態を話す魔王。

「魔道具があるだろ?」
「天幕の外はもう魔道具の効果だけで防げる天候ではない。健康な体ならいいが弱った者を連れ出せば死期を早めるだけだ」

そんなに?
思っていた以上に深刻な状態のようで掴まれていた腕を払って天幕の出入口に向かう。

「待て。行ってどうするつもりだ」
「分からない。でもここで大人しく時間が経つのを待つなんて出来ない。助け合うって誓ったばっかりなのに」

再び引き止める魔王に訴える。
血盟の儀式で誓い合ったのはつい昨日のこと。
医療師でもない俺が行ったところで何もできないだろうけど、どちらにせよここで大人しく待っていても状況は変わらない。

「……止めても無駄か。外套を着てついて来い」

先に天幕を出る魔王のことをケープを羽織って追いかける。
外に出ると少し先さえも見えないほどの猛吹雪。
この中を魔人界へ連れ帰れないというのも納得できた。

別の大きな天幕に入ってその光景に唖然とする。
布を敷いた床に寝かされている数十人の城仕えたち。
包帯を巻かれた姿で痛みに唸っている者もいる。

「半身さまお目覚めでしたか。ご無事で何よりです」
「お怪我がなく安心しました」

怪我人の他に居たのは山羊さんと赤髪。
仲間が深刻な状況になっている時に言いたくないだろうに、二人は俺が無事だったことを口にして頭を下げる。

「クルトの容態が心配なようだ」
「お話することは出来ませんが構いませんか?」
「はい」
「では奥へ」

山羊さんに案内されたのは天幕の奥。
布で仕切られた中には仮面が居て魔王と俺を見て頭を下げる。

「……脚が」

城仕えと同じく床に敷いた布の上に寝かされてるクルト。
体にかけられている布から出ているはずの両脚がない。
頭や右顔に巻かれている包帯も血で赤く染まっていた。

「クルトの傍で作業していた城仕えがいうにはお前を助けようと奥へ走って行ったらしい。俺も作業をしていて音が聞こえ駆けつけたが、見つけた時には岩石の下敷きになっていた」

どうして俺を助けようとしたのか。
傍で作業をしていた城仕えが無事なんだから俺を助けようと奥に来なければ巻き込まれずに済んだのに。

「魔人界へ戻れば魔王さまの魔回復ダークヒールで治せる怪我ですが、魔法の使えない今は麻酔で眠らせ天に祈ることしかできません」

クルトの隣に座った俺にそう話すのは仮面。
ここに居てクルトの容態を見ていたんだろう。

「なんで昨日初めて会ったばかりの俺を助けようとしたんだ。走る方向が逆だろ。助けるよりも逃げろよ。……クルトも城仕えも大怪我をしてるのに何もしてやれないことが悔しい」

麻酔で眠っているクルトの頬を撫でて自分の無力さを悔やむ。

【ピコン(音)!音声モード。特殊恩恵〝始祖〟の効果により能力を強制解放。特殊恩恵〝不屈の情緒不安定〟の効果により全パラメータのリミット制御を解除、全パラメータを限界突破リミットブレイク。ただいまより特殊恩恵〝神魔に愛されし遊び人〟の効果、神魔モードに移行します】

聞こえてきた中の人の声。
……能力を強制解放?

「もしかして」
「半身さま?」

ハッと気付いて手のひらに魔力を集める。
まだ魔法は使えないはずなのに普段と変わらず魔力が体を流れるのを感じとれた。

「クルトの両脚は!?持って来てないのか!?」
「半身さま。どうなさったのですか」
「説明はあと!脚はどうした!」
「落ち着け半身。天候が戻り次第魔回復ダークヒールをかけるつもりだったのだから当然持って来ている」

仮面の代わりに答えてくれた魔王は隅に置かれている氷水に浸けられた両脚の入った袋を指さす。
岩石に潰されて酷い有様になっているけど、ありさえすれば元に戻してやれる。

「クルトの脚がどうかしたのか?」
「回復する」
「どうやって」
「暗夜を彷徨う魔族たちに魔神の御加護を。範囲魔回復エリアダークヒール

手のひらを組み祈ると全開で解放された魔力。
俺から放出される魔力は光となって天幕に広がって行く。

「ど、どうして魔法が!」
「そんな馬鹿な。阻害されたままだというのに」
「この範囲魔法は半身さまですか!?」

驚く仮面と山羊さんの声。
城仕えたちの治療をしている赤髪の声も聞こえる。

「面白い。神が定めた不可能にすらあらがうか」

魔王はそう言って笑い声を洩らす。

「なぜ半身さまは魔法が使えるのですか?」
「俺にも分からないが、今この場で魔法を使える者は半身しか居ない。ここは任せよう」

暇を持て余した神々。
クルトを、みんなを助ける力を俺に。

「……半身……さま?」

回復を続けて数分。
両脚が戻ったクルトが目を覚ます。

「もういい。クルトで最後だ」
「あ……そうなのか。良かった」

魔王から肩を叩かれて回復をやめる。
回復することに集中していて後ろを見ていなかったけど城仕えたちは先に回復していたようだ。

「半身さま!ご無事でしたか!」

何がおきたのか時間差で思い出したらしくクルトはガバッと起き上がった。

「半身さま。ありがとうございます」
「どう感謝をお伝えすればいいのか。半身さまのお蔭で仲間を失わずに済みました。深謝いたします」
「我々魔族のためにお力をお貸しくださり感謝いたします」

俺の隣に跪いて礼を口にしながら頭を下げる四天魔の三人。
冷静な態度でいたけど内心は気が気でなかったんだろう。

「俺からも礼を言う。お前が居なければ天候の回復を待たず多くの者が命を落としていただろう。心より感謝する」
「ううん。少しでも役にたてたなら良かった」

魔王にも礼を言われてそう答える。
回復できたのは俺の能力が解放された時に生きていた人だけ。
全ての人を救うことは出来なかった。

「私からも感謝を。ありがとうございます」
「クルトもありがとう」
「助けていただいたのは私の方ですが」
「俺を助けようとしてくれたんだろ?それに対しての感謝」

布の上に跪いて感謝を口にしたクルトを見て安堵する。
しっかり治ったようで良かった。

「半身さまをお護りすることも四天魔の役目。それが逆にお救いいただくなど恥ずべき失態を犯しました。魔王さま。いかなる処罰もお受けいたします」

魔王に頭を下げたままのクルトを見て『まさか本当に罰したりしないよな?』と魔王の顔を見る。

「では処罰を申し渡す。明日の披露式、救われたその命で半身の身支度に精を出すよう。休む時間などないと覚悟しておけ」
「……はっ。誠心誠意お仕えいたします」

くすりと笑って言った魔王を見上げたクルトは口元を綻ばせてもう一度頭を下げた。


「それにしてもまさに落盤が起きた場所で作業をしていたはずなのに傷一つないとは。お前が逃がしてくれたと証言していた城仕えたちですら傷を負っていたというのに」

元気になった城仕えたちが布などを畳んで片付ける中、魔王は確認するように俺の頬に手のひらを寄せて撫でる。

「俺も無傷じゃなかった。腕の骨は折れてたし怪我もしてた」
「してた?」
「助けてくれたんだ。祠に居た人が」
「祠に人が居たと言うのか?」
「うん。男と動物、じゃなくて魔物たちが居た」

俺も無傷では済まなかった。
祠であったことを説明すると魔王は考える仕草を見せる。

「一体どこで誰に会い何を見たんだ」
「ん?」
「俺たちがお前を見つけた時には魔物はもちろん人など居なかった。その者や魔物は一本しかない道を俺たちとすれ違うことなくどのようにして洞窟から出て行ったと言うんだ」
「転移したんじゃないか?」
「祠では魔法を使えない」

あ。そうだった。
洞窟の外では魔法が使える時でも洞窟の奥では使えないと言っていた。

「でも本当に居たんだ。痛過ぎて意識が朦朧としたまま眠ったあと目が覚めたら黒ケープを着た背の高い男や羽が生えた黒蛇とかの魔物が居て、怪我が治るから食べろって白苺をくれた。それを食べたら本当に骨折も傷も治った」

どう出入りしたのか分からないけど居たことは事実。
説明する俺を魔王や四天魔は怪訝そうな表情で見る。

「夢魔の仕業でしょうか」
「いや。半身は精神力が高い。俺の魔法ですら跳ね返す時があるくらいだ。並の夢魔では魅了すらできないだろう」

山羊さんと魔王は深刻な顔。
赤髪と仮面とクルトは心配そうな顔。
事実を話しただけなのに何でこうなった。
たしかに白苺で怪我が治ったなんて夢のような話だけども。

「そもそも神龍の祠に草など生えていない」
「え?生えてたけど?多分あれが神龍を祀ったものだと思うけど、大きな石碑の傍には大樹も生えてた。まるで外に居るみたいに明るかったし、魔族にとって大切な場所って言ってたからしっかり整備してあるんだなって思ったんだけど」

草どころか何百年何千年と経っていそうな大樹もある鳥の鳴き声や風が吹いてきそうな場所。

「たしかに整備はしているが草や木などない。明かりも魔道具を使ったランプだけだ。外のように明るいはずがない」
「……本当に?」
「わざわざ嘘をつく必要もないだろう。魔族ならば神龍の祠がどのような場所かくらい知っている」

そう話した魔王はもちろん四天魔の四人も嘘をついている様子はない。

「半身さま。魔物が居たというのも有り得ないのです。魔族は出入りできますが、魔物に荒らされないよう入口には魔道具を使った魔物避けの結界がはられていますので。しかもその魔道具の結界は歴代の魔王が代々引き継いでかけたもの。もし魔物が居たなら魔王さまよりも強い魔物ということに」

赤髪にもそう言われて大きく首を傾げる。

「……じゃああれはどこ?祠の奥は広場になってることを先に聞いてたから一番安全そうなそこを目指しただけなのに」
「分かりかねます。洞窟内の道は一本ですので」

神隠し?異次元?狐に化かされた?
俺はどこに辿り着いて誰に助けて貰ったんだ。

「クルト。もう動けるか?」
「はい。半身さまの上級魔回復ダークヒールで回復しております」
「では四天魔だけ着いて来い。半身を連れて祠へ行く」
『はっ』


調整アジャストメントが使えないから小型ランプのような魔道具を持って向かった洞窟。
俺が意識を失っている間に落盤した岩石類は外に運び出されていて祠に続く道は既に片付いていた。

「ここが神龍の祠だ」
「……違う。ここじゃない」

辿り着いた祠は俺が見た場所とは全く別の場所。
魔王が言っていた通り明かりは魔道具を使ったランプの灯りだと分かるし、地面は草ではなく石畳で整備されているし、如何にも洞窟の中という薄暗い印象。

「突然の事故で混乱していたのかも知れませんね」
「そうなのかな。混乱して見た幻覚だとは思えないけど」

納得は出来ないものの実際に本物の祠はこうして俺が見た場所とは違うんだし、赤髪が言うように混乱パニック状態で見た幻覚だったのかも知れない。

「いや。俺は半身が見た物が幻覚だったと理解させるために連れて来たのではない。恐らく半身は本当にどこかへ導かれ、導いたその者から助けられたのだろう」

石碑を見上げていた魔王はそう話して振り返る。

「半身の話の中で気になる部分があった」
「気になる部分?」
「魔族ならば知っているはずだ。神龍の容姿を」

四天魔に言って再び石碑の方を向いた魔王は石碑の上の壁を指さす。

「あ!色は違うけど俺が見たのもあの蛇!地上では羽が生えた蛇なんて見たことがないから珍しい魔物だと思ったんだ」

石碑に描かれているのは太陽と月と羽が生えた白蛇。
あの黒蛇にそっくりで言うと四天魔はパッと俺を見る。

「たしかに半身さまは羽の生えた黒いと仰いましたね」
「ああ。書物に記されているのは白龍ということだけで、実際の神龍は俺たちが知る祖龍と違って蛇のようであることは書かれていない。ここへ初めて来た半身がそれを知るはずがない」

え?あれが神龍?
石碑の絵だと羽が生えた蛇にしか見えないけど。

「黒蛇と聞いて最初は気づかなかったが、歴代の祖龍王は全てが黒龍。能力の高い祖龍王が一匹として竜人に生まれ変わっていないのは魔神の元へ還るからだとすれば」
「……半身さまを導いたのは神族になった祖龍王と魔神」
「俺もその答えに辿り着いた」

はい?え?

「えぇぇぇぇぇ!?あの男が魔神だったってこと!?いやでもそんな神々しい感じじゃなかったぞ!?たしかに特殊恩恵を与えられる種族なんて珍しいとは思ったけど!」

疑問を尽く無視する黒ケープの男。
俺にはその印象しかない。

「特殊恩恵を賜ったのですか!?」
「え?うん。前にも拘束されてる白い髪の男から貰ったことがあるからその人と同じ種族なんだろうとしか思わなかった」

驚く赤髪に以前にも貰ったことを話す。

「さきほど魔法を使えたのは与えられた特殊恩恵の効果か?」
「うん。正確には黒ケープの男から貰った特殊恩恵と俺が元から持ってた特殊恩恵が融合して出来た新しい特殊恩恵だけど」

聞かれて答えると魔王は笑い出す。
なにがそんなに面白いのか。
独り大笑いしている魔王は空気の読めない子。

「ようやく理解できた。お前があの日召喚した大天使はその白い髪の男から貰った特殊恩恵だったのだろう?それもお前が元から持っていた特殊恩恵と融合して出来た新たな特殊恩恵」
「うん」

黒ケープの男から貰ったのは〝天命〟。
白い髪の男から貰ったのは〝天啓〟。
どちらも融合して新しい特殊恩恵に変わった。

「精霊神と魔神から愛された奇跡の者。魔王さまのお言葉は寸分たがわず正しかったようです」
「ああ」

赤髪に頷いた魔王が苦笑して俺に跪くと四天魔もその隣に並んで跪く。

「な、なんで跪くんだ」
「創造神の寵児ちょうじよ。数多あまたのご無礼を。魔族の犯した罪は魔族の王である私の命でお許しくださいますようご慈悲を」
「は!?なに言ってんだ!」

魔王が跪いた姿を見たのは初めて。
どうして俺に跪くのかも分からないし、魔王の命でとか慈悲とか全く意味が分からない。

「創造主である主神の子と魂の契約を結ぶなどという不敬。天罰を与えられても仕方のない重大な過ちを犯しました。ですが私以外のこの世界の者に罪はありません。どうか私の魂を永久とわの無に還すことでお許しいただきたい」

……なんで。
俺たちの魂の契約は誤りだったってことなのか?
異世界最強が跪き頭を下げないといけないようなことなのか?

「……俺は神の子なんかじゃない!ただのヒトだ!」

声を荒らげて否定した瞬間に魔道具のランプが割れて一瞬で暗闇に変わる。

『ボクたちの愛しい子』

聞こえてきたその声。
あの時のように闇の中に射した一筋の光が広がって行く。

「……二人は精霊神と魔神なのか?」

光の中に居たのはいまだ拘束されたままの白い髪の男と黒ケープの男。

『やっと気付いてくれた』
『教わったというのが正しい』
『そうだけど』
『それが証拠にまだ何も思い出してはいない』

そう話す二人。
本当に精霊神と魔神だったってことか。

「俺が二人の子供っていうのは?元は地球人だぞ?」
『それはお前が自分で思い出さなければならないことだ。私たちが口にしたところで今のお前には聞き取れないだろう』

聞き取れない?
話しても翻訳されないってこと?

『お前が私たちの子であることは事実だ』
「じゃあ事故で亡くなったっていう両親は?祖母は?」
『全部教えてあげたいけどそれも君自身が思い出さないといけないことで、ボクたちでは教えてあげられないんだ』
「神さまなのに?」
『だって…………だから』
「またの前が聞こえない」
『うん。やっぱり君が自分で思い出さないと駄目なんだ』

なるほど。
魔神が言った『聞き取れない』とはこのことか。
たしかに何か話しているのにそこだけが聞き取れない。

「俺が二人の子供っていうのが事実なら、魔王と俺の魂の契約も本当に過ちだったってことになるのか?」
『ううん。それはない。驚いたけど』
「え?いいの?フラウエルは魔神側の王なのに。精霊神と魔神の子なのに中立でいなくていいのか?」

地上層の神が精霊神。
魔界層の神が魔神。
天地戦で戦う者同士なのに。

『お前は中立ではないのか?』
「え?」
『魔族の敵でも精霊族の敵でもないのだろう?』
「うん。勇者にも魔王にも生きて欲しい。みんなにも戦ってほしくない。地上にも魔界にも大切な人たちがいるから」

どちらかなんて選べない。
どちらにも大切な人が居る。

『それでいいよ。君の役目はそれじゃない』
「役目?俺が召喚された理由はそのがあるから?」
『それもボクたちでは教えられない』
「これも自分で思い出さないと駄目なのか」

匂わす程度は話せても核心部分は話せないようだ。
随分と厄介な決まりごとを作ったものだ。

「精霊神と魔神の子って言われてもピンと来ないけど、俺は地球人じゃなくて元々この世界の人だったってこと?」
『私たちもお前もこの世界の者ではない』
「それも違うの!?」
『この世界は、いや、この星は私と精霊神が作った星の一つというだけで、神の私たちもその子であるお前も神界の者だ』

えっと……今居るここは神が作った星の一つで神が住んでるのは別のって場所だから、二人の子である俺も当然神界の人で……いやでも俺はその神界って場所じゃなくて地球で暮らしてたんだけど……うん、混乱してきた‪(  ˙-˙  )スンッ‬

『君が居た地球もボクたちが作った星の一つだよ』
「この星って地球と同じ次元にあるのか!?」
『ううん。違う次元にある』

ますます混乱するぅぅぅぅう!
馬鹿には理解が追いつきそうにない。

『それも君が全て思い出せば分かる』
「そっか」

俺が忘れているらしいを思い出せれば自分が何者かも役目とは何なのかも分かるってことだな。

「分かった。そこは自分で思い出せるよう努力する。それより魔王との魂の契約は解除しなくていいってことだよな?」
『私であれば不殺で契約を解除してやれるが、その言い方を聞くに解除したくはないのか。一方的な契約だっただろう?』

魔神から問われて大きく頷く。

「最初は勝手に契約されただけだったけど、今は一緒に居るのが居心地いいと思ってる。不思議とフラウエルとは合うんだ。似てるところもあるし、居なくなったら寂しくなると思う」

いまだに愛だ何だって感覚は分からないけど、誰よりも俺の好む距離感に合うし、面白い奴だとも思う。

『そうか。では与えよう』

魔神がそう言うと闇に三本目の光が射す。
広がって行く光の中に現れたのは……魔王。

「……半身!」

走って来た魔王は俺をギュッと腕におさめる。
相当心配をかけてしまったみたいだ。

「突然姿を消して驚いた」
「ごめん。呼ばれたみたいで」
「呼ばれた?」

あれ?
二人に気付いてない?
あんなに煌々と照らされた光の中に居るのに。

『魔王フラウエル』
「……御二方はもしや……創造神」
『君たちがいう精霊神と魔神はボクたちだ』
「やはり。大変なご無礼を」

腕を離して魔王は二人にスッと跪く。 

「全ての生命の源である創造神よ。神の子と契約してしまったことを深くお詫び申し上げます。お怒りになるのも当然のことをいたしました。ですが天罰は過ちを犯した私だけに。この世界の者たちに罪はございません。何卒なにとぞ神のご慈悲を」

俺の時と同じことを言って頭を下げる魔王。
この世界で跪き頭を下げる行為は『貴方に私の首(命)を捧げます』という誓いで、貴族や騎士などもこうして忠誠を誓う。

ではないのか』
「…………」
『魔族の王でありながらの許しを乞うのか』

そういえばそうだ。
俺の時も『この世界の者』って言ってた。

「魔族にとって精霊族は敵ではありますが、例え敵であっても私の行動で共に天罰を受けるのではあまりにも理不尽。私のしたことの責任は私一人にあります」

本当にこの魔王さまは……。
魔王という唯一無二の自分の命で魔族も精霊族も助けようとする魔王のどこが血も涙もないと言うのか。

「フラウエルだけで駄目なら俺も一緒に殺ってくれ」
「半し、いや、神の子」
「やめろ。俺が誰でも半身はフラウエルだし、フラウエルの半身は俺だろ?生涯変わらないって言った居場所を早速奪うな」

魔王の半身の座は生涯変わらない俺の居場所。
そう約束したじゃないか。

『誤解してるみたいだけどボクたちは怒ってないよ。君たちは元からついの存在だし、魔王も半分ボクたちの子だから契約しても不敬ではない。天罰も与えないから安心していい』
「俺たち兄弟なのか!?」
『生命の根源を辿ればそうだね。ただ、それを言ったら全生命が兄弟になるけど。星も人型種も魔物種も植物種も最初はボクたち二人が作ったんだから』

……人類みな兄弟どころか全惑星みな兄弟!
一生誰一人として結婚できない!

「質問することをお許しくださいますか?」
『答えられないこともあっていいなら』
「はい。私がというのはどういうことでしょうか」
『ボクたちの子が作ったのが君なんだ。だから半分』
「半身が私を作ったということですか?」
『違う。ボクたちの子は彼だけじゃない』
「理解いたしました。ありがとうございます」

要は孫か。
たしかに神の子(の孫)。
いやでも元々はみんなが神の子?

『お前は特殊な存在として生を受けた。魔神と精霊神の子であるこの者のついとして。私たちから話すことはできないが、この者が全て思い出した時にお前のことも分かるだろう』
「え?フラウエルの出生にも俺の記憶が関係あるのか」

それ相当重要な記憶じゃないか。
ただの元ホストにどれだけの重荷を背負わせるのか。

『もう時間だ。こうして封印で抑えては居るが、今のお前たちがここに長く居ては精霊神の気で魂ごと消滅してしまう』
「精霊神の気?魔神の気の方が極悪そうだけど」
「半身。俺はお前の無頓着さが時々羨ましい」
「え?」

精霊神の方がピュアで魔神の方が邪悪っぽいのに。
と思って言うと魔王から真顔で言われる。

『構わない。無礼者であれば精霊神で慣れている。この者は我々の子の中で唯一精霊神にそっくりだ。似ているぶん他の子より憎らしくもあり愛おしくもある』

おい、なんか色々と言われてるぞ精霊神。
相変わらず拘束されてるし目元も布でぐるぐる巻きにされているけど(気を抑えるためらしいけど)、本人も愛されているのか憎まれているのか微妙な気分なのか見えている口許は苦笑。

『魔王フラウエル。顔をあげよ』
「はっ」
『お前をここへ導いたのは力を渡すためだ』
「私にもお力をいただけるのですか?」
『正確には私が与えるのではない』

魔神が握って開いた手にあったのは三日月。
俺にくれた物と同じ。

『これはある者から預かっていたお前の能力。それを返そう。我々の寵児ちょうじがお前が居なくなっては寂しいというのでな』
「……半身が?」

フードから唯一見えてる口許をニヤリと歪ませた魔神。
魔神さまの仕返し来たァァァ!
やっぱさっきのことを根に持ってるんじゃないか!

『ボクからも一つだけ力をあげる』
『精霊神。一方を強くしてはバランスが崩れる』
『この子は今までの魔王とは違う。地上の人型種を恐怖で支配しようとしてない。魔族のために魔王って存在であろうとしてるだけ。ボクたちの愛しい子が英雄であろうとしてるように』

そう話す精霊神の元にゆっくり降りてきた光。

『君にも〝天啓〟をあげる。どう変化するかは君の心次第。できればボクたちの愛しい子を助ける力であって欲しいと願う』

魔王が二人から三日月を受け取ると眩い光が包む。

『さあお帰り。この力を与えたことはボクたちだけの秘密だ。世界を混乱させないよう誰にも話してはいけないよ』
「はっ」
「分かった。約束する」

もう戻る時間のようだ。
意識が少しずつ遠くなって行く。

『魔王フラウエル。お前は私の血を色濃く継いでいる。願わくばこの手でお前を無に還すことにならないよう務めよ』
『ボクたちの愛しい子。運命を決めるのは君だ』

魔神と精霊神の声を聞きながら意識は途絶えた。

 
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