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第21話 秘密~真相編~
第21話 秘密~~真相編
しおりを挟むうーん。と藍里は手帳を見ながら唸っていた。
(さてさて……矛盾は見つけたけど…証拠がない……。)
テーブルに肘をつき、髪の毛をクシャリと掴みながら、眉間に皺を寄せる。
「藍ちゃん!藍ちゃんってば!」
陽菜の声に引き戻された藍里はハッと我に返った。
「どうしたの?」
「どうしたのって………もう私たちの番号札呼ばれたよ?朝ごはん取りに行こ?」
「あ……。」
その言葉で藍里は今の状況を思い出した。
朝食を摂るところだったのだ。
「行っちゃうよ?」と陽菜の言葉と共に4人が先にスタスタと取りに行き、藍里は慌てて後を追った。
漂ってくる出汁の匂いが鼻を擽り、それと同時に キュルル…。とお腹が鳴りだした。
盆の上に乗せられた白飯と焼き鮭、卵焼きにほうれん草のおひたし。そして、わかめと豆腐の味噌汁が藍里の目の前に現れ、食欲をそそるのには充分であった。
「あれ?みそ汁の具……。」
その時だ。輝が味噌汁を見張った。
その様子を見たオーナーの沼井は、首を傾げながら「何か問題でも…?」と訪ねた。
輝は顔を上げると…
「いえ、大したことではないんですが、書かれていたお品書きと違うなと思たっただけで……。」
と、眉毛を下げて弁解しているかのように答えた。
「あぁ……その通りでございます。本来ならば、本日のみそ汁の具は、しめじとワカメでございました。……ですが………お客様方の場合、昨日の件があったので、キノコは少々口にし難いかと思いまして……勝手ながらこちらで変更させて頂きました。」
「あ…。そうだったんですね。お気遣い、ありがとうございます。」
陽菜が少しホッとしたような顔で胸をなでおろした。
どうやら、その気遣いは正解だったらしく、陽菜の手が僅かに震えているのを、藍里は見逃さなかった。
「………なぁ。ひとつ聞いてもいいか?」
食事を受け取る直前、哲也が沼井に唐突にそんなことを言い出した。
「ええ。わたくしめで、分かることであればなんなりと……。」
「ここ、看板の動物とかいるのか?」
「へ?」
「たまにいるじゃねぇか。看板犬とか、看板猫とか。」
「あぁ………いえ、今までにそんなものは……そもそも、わたくしめが動物が得意ではなくて……子供の頃から1度だって飼ったことがございません。」
「……………そうか。いや、聞いただけだ。じゃ。」
そう言い残した哲也は、お盆を両手でしっかりと持つとテーブルの方へと向かった。
その様子を見て首を傾げながらも藍里は、沼井から食事を受け取り、皆が座っている場所へと向かった。
はにかんだ顔で、箸を持った状態で手を合わせると
「いただきます!」
と言って白飯に箸を付け始めた。
「藍里。後で話がある。ちょっと残ってろ。」
「え?」
白飯を1口食べようとした、まさにその時だ。左隣からそんな声が聞こえ、振り向くと哲也が座っていた。
哲也は、横目で確認するかのようにこちらを見ると、僅かに頷いてから、味噌汁を啜った。
(なんだろう?)
藍里は、哲也の言葉を気にしながらも、掴んでいた白米を口の中に入れて、食事を進めた。
「……それで、なんだったの?哲也。」
朝食後、陽菜達を先に帰した藍里は、約束通り哲也と食堂に残った。
周囲を伺うと誰もいない。
話を盗み聞きされる心配はないだろう。
しかしそれでも哲也は、少し言いにくそうな顔をしながら、藍里の方を見る。
「……実はさ、昨日風呂に入る前に、地下室見かけたんだ。んで、好奇心というかなんというか……とにかく、何となく気になって、そこに入ってったんだわ。降りてく途中、酷い匂いがしてきて…それが徐々に強くなって…何度も吐きそうになった……。…そこで、その臭いの原因らしき所から、アシナガヌメリっつーキノコを見つけたんだ。」
「あしながぬめり??」
「……昨日、陽菜と一緒に見ただろ。あのキノコ…。」
「あぁ。あれか……。」
哲也の言葉に、藍里は眉間に皺を寄せる。
あの光景は、陽菜よりかは平気とはいえ、やはり思い出したくないものである。
「……けど、あの沼井の言葉からすると、矛盾が生じるんだ。」
「矛盾??なに?」
首を傾げた藍里に、哲也は身を乗り出して、周りに聞こえないように口を手で覆った。
それを合図であるかのように、藍里も身を屈めて耳を哲也に貸した。
「 。」
「………!?」
哲也の発した言葉に目を丸くする。
藍里は、椅子の背もたれに寄りかかって、『はぁ……』と、息をつく…………。
も し か し た ら…………
藍里はスっと立ち上がるとゆっくりとした足取りで食堂を出た。
「お、おい!藍里!?」
哲也が立ち上がって藍里を呼び止めたが、
藍里は聞こえていないのか、足をとめず、歩き続けていた。
やがて、ホテルの中庭まで行くと藍里は枯れ木の前に立ち、ダン!!とその木に向かって拳を力強く叩きつけた。
しかし、木は鈍い音を立ちつつも、あいりの鉄拳がまるで意味をなさないかのようにずっしりと立っていた。
(そんな………だけど、だとしたら辻褄が合う………!けど…………だけど………!!)
「私の推理が………どこかで………間違っていて欲しい……!!」
繋がった真実が、自分の間違いであることを願うかのように、藍里は声を絞り出すと、ズルズルとその場に膝を着いた………。
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