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第20話 秘密~きっかけ編~
第20話 秘密~きっかけ編~
しおりを挟む部屋に集まった輝と藍里を除く3人。
そんな中、陽菜はまだカタカタと身体を震わせ、肩から羽織っている毛布を両手でギュッと握りしめていた。
「おまたせ。スタッフに頼んで、ホットミルクを作ってもらったんだ。蜂蜜も入れてくれたらしい。飲んで?落ち着くから。」
部屋に入ってきた輝が、青色のマグカップを陽菜に手渡すと、陽菜は両手で包み込むようにそれを受け取り、ゆっくりと体の中へ流し込む。
少し落ち着いたのか、陽菜は1口飲むと『はぁ…』と大きく一息ついた。
ミルクの温かさと、鼻を抜ける蜂蜜の風味がほんの僅かにだが、陽菜に心の余裕を持たせてくれた。
あくまで、そんな気がしただけなのだが、陽菜にとってはありがたかった。
「大丈夫か?怖かったよな…。」
哲也が、隣に寄り添うように優しく声をかけてやる。陽菜は、声は出さずに一つだけ頷くだけであった。
「……にしても藍里の奴、おっせーな。まだ、かかってんのかよ。事情聴取……。」
聖人が、チラリと隣の部屋を隔てている壁を見ながら呟く。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「いやぁ、まさかあなたがここに泊まっていたとは驚きました!!」
そう大げさに答えた外屋敷。
隣いるのは上司だろうか。
茶色のスーツに、細身の男は藍里を怪訝そうに見つめると、息を一つ吐いて話を進めた。
「……つまり、君の友人が足を滑らせて転んだ。その時のタイルが外れて、たまたま下の遺体を見つけたと………。そういう事だね?」
「はい。本当はその子が話した方が早いんですが、なにぶん、ショックが大きくて……話せるような状態じゃないんですよ。」
「まぁ、確かに。女性……しかもまだ若い娘さんに『驚くな』という方が難しいな。」
男は、『どっこいしょ』と声を漏らして腰をあげると、出入口の方へと向かっていった。
「あ!磯部さん!!どちらへ!?」
外屋敷の質問に『一服してくる。』と答えた磯部と呼ばれた男は、外屋敷に
「事情聴取を続けていろ。いいな?」
と、釘をさして立ち去った。
了解!と、言いかけた外屋敷は、敬礼しようとした手を挙げた時に『ドカッ!!』とテーブルに手をぶつける。
「いたた………了解であります!!」
……しかし、軽く手をさすった後にはすぐに何事も無かったかのように、敬礼し直した。
磯部がいなくなり、あとの部下達もいないことを確認した外屋敷は、何故かホクホク顔でこちらに近づいた。
「いやぁ。なんやかんやで協力してくれたじゃないですか!」
と、藍里の背中をバシバシと叩いてくる。
「何がです?」
思い当たることがなく、藍里は思わず目をぱちくりさせた。
「だから!あの事件のこと!!協力してくれたじゃないですか!!」
「ああ。観光客の失踪事件ですか。……協力って……なにかしましたっけ?」
思い当たる節が全くなく、藍里は首を傾げる。
「あれ?てっきり知ってたのかと思いましたが……違いますか?」
それだけ言うと、外屋敷は外に漏れないように手で壁を作ると、藍里にヒソヒソと話し始めた。
「あの遺体………行方不明者の1人だったんですよ!!」
「えぇえっ!?!?」
予測してないことに思わず声を上げる藍里。外屋敷は慌てて、『しーっ!しーっ!』と、人差し指を立てて藍里を落ち着かせた。
「ゆ、行方不明者だったって…!」
「あの、ブレスレットが決め手となりましてね。一番最初にいなくなった、女子大生だったことが発覚したんですよ!」
「……なんでその行方不明者の遺体が………この宿に……?」
藍里は、顎に手をやりながら『うーん。』と唸る。
言いにくそうな表情をした外屋敷は、ゆっくりと口を開く。
「分かりません……だけどここだけの話……行方不明者は全員、ここに泊まりに来てたという情報があるんです。」
「え…?」
「そこからの足取りを掴むために、お客様名簿の拝借もお願いしたんですが、我々も確認する暇もなく『ない。』と言われまして……。」
「……でも、こうして遺体が見つかった。これは、もう家宅捜査してもいいんじゃ?」
藍里の言葉に、外屋敷は首を横に振った。
「磯部さん……さっきの上司が、『見せてもらったけど、やはりなかった』と言われまして……店主も磯部さんじゃなきゃ見せないの一点張りで…。」
「どうして?どうしてそんなに頑ななの?」
「それは、わかりません。ですが、私はその名簿を確認しないと事件が解決しない。そう思っています。………そう言えば、あの店主……最初の時も、磯部さんだけにしか名簿を見せなかったなぁ。」
絶対に何かある。
直感でそう感じた藍里は、目を光らせる。
自分の用事が後になるが、仕方ない。
「名簿を確認した方がいいみたいですね?」
「ええ。ですが、私がひとりで行っても……。」
「任せてください。方法があります。」
藍里は、隠された失踪者の遺体と、この宿の秘密を暴くために、立ち上がった………。
少し、やり方は姑息になってしまうが、仕方ない。
藍里はそう自分に言い聞かせて、カウンターへと向かっていった。
~続く~
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