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21話 季節の変わり目
しおりを挟む「暖かくなってきたね…」
私は窓の外を眺めながらそう言って窓を開けた。冬の時のは違い少し温かな食う気が入ってくる…のだが…
「やっぱり寒いかも」
窓を閉めるとすぐにストーブの前に向かった。季節は春と冬の中間、3月の後半。
外は大分温かくなってきて厚着をしなくても出ては行けるぐらい…でも、さむがりな私にとったら冬と同じ。
「ほら、ココアだ」
「あ、ありがとう」
私は萩君からココアを受け取った。匂いにつられて来たのか鈴もいつの間にかストーブの前でココアを飲んでいる…この子いつから居たんだ?
すると突然ピンポンという音がリビングに響いた。朝っぱらから誰だよとキレた私の代わりに萩君が出てくれた。
廊下から話し声が聞こえるがなかなか入ってこない…私は気になり寒いが廊下を見た。
「あ、馨恵さん!久しぶり!」
「なんだ、幸人か…」
「葛の葉も居る」
「葛の葉?!」
私は小狐の姿で飛び込んでくる葛の葉を受け止めた。これだよこれ…あの時から私はこの毛皮の虜だ。
そう言えば、あれから3週間ほど過ぎたんだよな…最近のように感じる。
「馨恵、あれからなにが怒ってない?」
「うん、何も無かったよ。それはもう怖いぐらい」
「訪れない…」
「ん、誰か来るの?」
葛の葉は私の腕から降りるとリビングに向かった。そしてストーブの前に…寒かったんだ…
「はい、これお土産」
「何これ?」
わたしは大きな紙袋を広げ中から箱を出した。大きく京と書かれている…
「京都に行ってきたんだよ」
「もしかして…京ばあむ?!」
「そうそう、前に馨恵さんが気になるって言っていた気がしたから買ってきたんだ」
「幸人、やるじゃん!じゃあ、みんなで食べよう」
私は京ばあむを大事そうに抱え込みリビングに持ってきた。
気になったのか鈴は私の元に駆け寄ってきて開封しているところをズット見ている。
「京ばあむとはまた美味しそうなものを」
いつの間にか葛の葉さんは元の姿に戻って私の元まで来ていた。やっぱり妖ってそう言う現代のスイーツとかには疎いのかな…
私は戸棚から黒色の小皿を何枚か出すと人数分切った京ばあむを乗せた。緑と白の京ばあむが小皿の色と合っていて美味しそうに見える。
「はい、切り分けたよ」
私はリビングのテーブルに京ばあむを持って行った。みんな着席している…結局みんな食べたいのね。と思いつつ私も着席…京ばあむは人生初めて食べるんだよな。
私は手を合わせると京ばあむを一口サイズに切って口の中に入れた。
「…凄いしっとりしてる。抹茶って言うのもまたいいね」
「そうだなですわ。こんなに美味しいものが京都にあると思って無かったですわ」
「今の京都じゃ沢山あるよ。八つ橋は無論、抹茶のアイスだとか」
「八つ橋なら修学旅行で食べた事がある」
「あ、そっか…修学旅行って秋だったんだよね?」
「嗚呼」
萩君は食べながらもコクコクと頷いた。みんな美味しそうに食べるな。京都は高校の修学旅行以来行ってないんだよな…
「京都…久しぶりに行ってみたいな」
「そう言えば、ここにあれがあるんだけど」
幸人は私の言葉を待っていたかのように6枚のチケットを出した。私はチケットを貰うと驚愕の雄叫びをあげた。こ、これは…新幹線プラス旅館の?!
「そろそろ酒呑童子達は春休みになるし、その時にでも行ってみないかい?」
「行く、絶対行く!」
「私も行きたいわ」
「大丈夫、葛ちゃんの分もあるから」
「そのいい愛称は嫌いですわ」
あ、葛の葉嬉しがってる。尻尾の動きがやばいっす、大妖怪さん…
そうしてみんなの意見が重なり私達は京都へ行くことになった。萩君、楚、幸人、鈴、葛の葉、そして私、このメンバー初めての旅行だ。
これはめいいっぱい楽しまないといけない…でも、何故だか胸騒ぎがする。
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