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12話 大天狗
しおりを挟む「あ~、背中が痛い…」
「やっぱりなかなか治りませんね。病院に行った方が良いとは思うのですが…不自然な骨の折れ方をしていたので見せると何があったか疑われてしまうのですよね」
「なるほど、色々と辛いね…」
そうなると人間の私は妖怪関連で怪我をしても専門の人に見てもらえないという事なんだ。結構きついな…
「まぁ、仕方ないと思います。普通なら馨恵さんはあそこで死んでたと思います」
「え、そうなの?!」
私は驚きと共に大きな声を出してしまい背中に響きその場にうずくまった。痛すぎる…それにしても死んでたってそんなに酷かったのか。
「あ、安静にしててください!背骨が折れてしまい心臓に突き刺さる直前でしたので僕がどうにか骨を治しました。もう大丈夫ですよ。命の保証はします」
「楚が居てくれて助かったよ…」
「駆けつけた時は本当に驚きましたよ。でも、萩のそのネックレスが無ければ確実に死んで居たでしょうね…玉藻前の狐火の暑さは太陽の暑さと同じぐらいですし」
「え、あの火そんなに強かったの?!」
「はい」
そんなこんな、いろんなことを聞き私はもうこれから死んでしまうのではないと思ってしまいそうだった。これからが心配だな…
ふと、ピンポンという音が聞こえすぐに楚が玄関へ行ったのだが、聞こえてきたのは楚の叫び声だった。
何事かと玄関の方まで這いつくばって行ったのだが…
「あ、馨恵さん!ご無事で何よりです!」
「師匠?!」
「本当、ビックリしましたよ大怪我したと聞いて」
「それを一体何処で…」
楚が教えたのだろうかと思い私は楚の方を見たが頭を左右に降るばかりだ。じゃあ、誰が教えたのだろう…それに、なぜ楚は叫び声を?
「馨恵さん。こ、この人妖怪です。あの大天狗ですよ!」
「大天狗って?」
「あはは…言われちゃったら仕方ないね。俺はだいようかい大天狗だよ」
そう言うと幸人は背中から大きな黒い羽根を出した。私は脳が追いつかずその場に倒れた。聞こえてくるのは楚と幸人の呼ぶ声だけ…
「本当、びっくりだよ。あの茨木童子がここに居るなんて…酒呑童子が居たから何となく居るんじゃないかなと思ってはいたけど。本当に居たなんてね」
「僕もビックリですよ。千年だってまた大天狗様とこうやって話をできるなんて…光栄です!」
話し声が聞こえ私は目を開いた。体が重いと思ったら上に鈴が乗っている…何故鈴は私の上で寝ているのか。
「あ、馨恵目を覚ましたですわ」
「馨恵さん?!」
話していたであろう楚と幸人が私の元へ飛んできた。鈴を起こして痛い体を起こそうと思ったのだが…もう痛くない。
「背中なら俺が治しておいたよ。こう見えて、治癒は得意だからね。馨恵が人間で良かったよ」
「幸人…本当、助かる…」
私はまだ私の上に座る鈴に抱き着くように倒れた。色々とありすぎてまだ頭の整理は出来ていないが何となく分かってきた。
「そう言えば、大天狗様と馨恵さんってどんな関係なのですか?」
「幸人は私の師匠だよ」
「馨恵は俺の初恋だよ」
などと、ねぇと顔を見合わせる私と幸人。その言葉が信じられなかったのか楚は驚愕な顔をしている。
「師匠って何ですか?!初恋って何ですか?!」
「えっとね…私が妖怪好きになったのは幸人のおかげでもあるんだよ。あ、会社の元同僚ね」
「俺は馨恵さんに告白をしたけど、あっさり振られたんだよ。私には推しがいると」
「あ、なるほど…」
あははと苦笑いする楚。よく考えると大天狗が私に告白していたのか…それはちょっと嬉しいかも。と、不気味な笑い方をする私だった。
「所で、玉藻前が最近復活したって聞いたんだけど…」
その話を振られ、私達は俯きがちに黙った。それを見た幸人はため息をついて突然私の頭を撫でた。
「やっぱりね…俺がもっと早く異変に気づいていれば」
「大天狗様、玉藻前は今じゃ強大な力を持っています。それでも僕は」
「分かっているよ。俺も俺で馨恵さんと一緒に住んでいるのは許さないけど、かつては仲が良かったと言われてきたからね。多分そうなんじゃないかな」
「もしかして幸人協力してくれるの?!」
「勿論。馨恵さんを危ない目に合わせたくはないし、玉藻前の足止めぐらいにはなれると思うよ」
それを聞いて私は立ち上がった。玉藻前、酒呑童子、大天狗の戦いが見れる気がして少し嬉しい気持ちもあるのだが…
「なら行こう!さっさと行こう!萩君を助けるために!」
「ちょっと気が早いんじゃ」
「いや、早い方がいいと思います…いつ人を殺し始めるか分からない。人を巻き込むのだけはもう、嫌なんです」
「…分かったよ」
そう言うと幸人は私の首にかかっているネックレスを触った。するとネックレスの宝石は色を変え赤と黒が混ざっていた。これは…萩君と幸人の力?
「馨恵さん。絶対に危ない事はしないで、あの時みたいに」
「あの時?…あ、玉藻前の事?」
「あ、うんそうだよ。じゃあ行こうか」
「はい。でも、僕達玉藻前の居場所分かりませんよ」
「それならもう情報は入ってるよ。天狗は誰よりもそういう話が早いからね、ほら行くんでしょ」
私達はポカンとしていたがすぐに出発した。絶対に萩君を取り返す。
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