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1話 最強高校生-1

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「うふっ…うふふふふふふ」
「ちょっと、不気味な笑いかたしないで。せっかくのご飯が不味くなるじゃない」
「そんな変な笑い方だった?」
「そうよ。周りの目が痛いわ」


 そう言ってアップルティーを飲んだのは私の親友川瀬かわせ 千都世ちとせちゃん。
 私達は同士であり、ちーちゃんは隠れオタクなのだ。外見はどこかの美人OL、しかし内面は大分やばかったり…家の中はどこで買ったのか分からない骨董品こっとうひんばかり。


「でも、ちーちゃんも大分だよね」
「ちょっと、もうちょっとボリュームを落としなさい。あの長い鼻といい…もう最高なのよ!」
「ちーちゃん声大きいよ」


 そうそう、忘れていたがちーちゃんは骨董品オタクでは無い。私と同じオタクなのだ。ちーちゃんが好きなのは天狗。
 ちなみに、私は花栗はなぐり 馨恵かえ。鬼と言っても酒呑童子大好きなオタクなのだ。


「そう言えば、聞きましたかね?今週末のあやコミ」


 あやコミとは妖コミックマーケットの略。毎年妖系のアニメや自作漫画を出していたり、コスプレをしている人がいたりする。
 ちなみに私達はコスプレ側で参加している。実際コスプレ側の方がコスプレイヤーさん達と仲良くなる事が多かったりするのでこっち側にいたり…


「勿論。情報は全てかき集めたつもりよ」
「絶対行かなきゃ、酒顛しゅてん様を拝みにっ」


 酒顛しゅてん様はあやコミ界の中で1番と言っていいほどの人気のあるコスプレイヤーさん。毎年物凄くリアルなコスプレを披露している、と言っても完全リアルな妖の方でなく勿論人型として。


「今年は馨恵の好きな酒呑童子なのよね?」
「そうなの!これは絶対に拝まなくては行けない!そして一緒に撮るの!」
「…凄い自信満々に言いのけたけど、酒顛様他のコスプレイヤーと絡む事は無いのよ」
「そうだった…」


 私はその場にぐったりと項垂れた。まるで燃え尽きたように…


「あら、凄い落ち込みよう。ところで、私達はどうするの?」


 私はスマホをいじりカレンダーを出すと少し考えまたスマホを置いた。


「…流石にこの数日間じゃ用意出来ないから過去のコスプレを少し進化させて違う妖怪にしようと思う」
「進化って…私たちがやったのは猫娘やら妖狐やら…マイナーな妖ばかりよ」
「…そうだね…前にやった雪女!あれを使おう」
「あ~、一番人気のなかったあれね」


 今まで食い気味だったちーちゃんは突然やる気を無くしスマホをいじり出した。
 確かに、あの雪女は評判が悪かった。雪女を舐めているのか、と言われてしまった程…けど、あの雪女のウィックを染め直して着物に飾りを付ければ全く別の物に進化すると私の脳内が言っている。


「…今回は鬼でいきましょ」
「は?またマイナーな…それに馨恵が鬼を語るなとか言ってやらなかったんじゃない」
「それは言ったけど…」


 私はスケブを取り出すと雪女の構図が書かれたコスプレ衣装にとりあえずペンを走らせた。
 角を書き、着物の柄を彼岸花に一変させたり飾りを付け加えたりする。私は二つの描きあげるとちーちゃんにスケブを見せた。


「…あんたやるじゃない」
「そんな、褒められても…」
「こんなの数日間で作り終えるわけないでしょ!着物を1から作り直させる気?!」
「いやいや、待って…着物は真っ黒に染めるの」
「真っ黒に?」
「うん、この雪の結晶。全てペンで書いてあるの。だから黒に染めれば雪の結晶は見えることは無い」
「…あんた最高。じゃあ飾りは私に任せて、馨恵は着物とウィックね」
「え…なんで、私がたいへんな方を…」
「文句は言わない。さっさと家に帰って作り直すよ!」
「は、はーい」


 私はこの数日間雪女の衣装を染め、角付、染め、柄作りを繰り返した。そして、ついにこの日がやってきた…


「うん、今までよりいい出来だと思う」
「そうね。私達の割には頑張ったんじゃない」


 長く真っ黒い髪を軽く簪で抑え後の余った長い髪は垂れたままの黒と赤の着物に身を包んだ私。長く白い髪を軽く巻き、少し雪女の面影はあるのだが全く別の鬼に見えるちーちゃん。
 私達は衣装に着替えメイクをした全く別人のように見える自分たちに感激しあった。この数日間よくやった、私。


「ちーちゃんにおっけいもらったところであやコミに出陣致す」
「そうね。とりあえずこの長めの着物を引きづると危ないから撮影場所までは持って歩いてね」
「はーい」










「…ちーちゃん、暇です」
「私も暇です」


 私達はただただ他のコスプレイヤーさんを見つめているだけだった。私達はなんでこの日のために頑張ってきたのだろうか…


「ちーちゃん…わしは他のコスプレイヤーさんを撮りに行きたいっす」
「…そうしましょ」


 私達は諦めその場で退却する支度をしていると突然呼ばれた気がし振り返った。


「あの、写真いいでしょうか?あ、退却するのでしたら邪魔ですし…」
「いいよ!」
「あ、え…ありがとうございます」


 私は戸惑い焦っていた少年の手を掴んだ。さらに戸惑いを見せていたが、少年は私から一歩下がり頭を下げた。いい子だな…それに、珍しい白髪美男…多分高校生ぐらいだろう。


「じゃあ、少し怪しげな感じでお願いしてもいいでしょうか?」
「はい!」


 私とちーちゃんがポーズをとると男の子は写真を取り出した。鬼が好きなのか妖怪自体が好きなのかは分からないが凄く楽しそうだった。
 私はこう言うのを求めていたのだよ。などと考えていると少年の友達なのか黒髪の美男が現れた。友達も美男とか…ありがとうございます。


「突然引き止めてしまってすみません」
「いや、こっちとしても嬉しかったし...」
「なら良かったです」


 白髪美男は少し戸惑い私たちの元を去って行った。


「ちーちゃん…私はこれを求めていたの」
「はいはい、それじゃ退却するよ!」
「うん…あの子達美男だったね…ぐふっ」
「…顔どうにかして頂戴」
「はーい」


 私達が無駄話をして話していると突然後ろから黄色い歓声が聞こえ私達は振り返った。


「ねぇ、君たち早く退いてくれない」


 そこに居たのは白髪の鬼コスプレをする人…この人…酒顛だ。
 けれど、早く退いてくれは無いんじゃないかと思ったり…これには流石にちーちゃんが怒るかな。


「は?なんだその言い方」


 私はちーちゃんが罵声を浴びせると思っていたが声を掛けたのは違う者だった。先程の黒髪美男の子。


「坊ちゃんが口を挟むことじゃないよ」
「ほう、坊ちゃん…じゃあ低脳鬼もどき」
「もどき?鬼を知らない癖に語らないでほしいな」
「ちょっと、しゅうこれ以上は」
いばらは黙ってろ」


 楚?…男の子にしては変わった名前だ。でも、最近はキラキラネームとか居るから普通なのかな。
 などと考えていると心ここに在らずだった私は異変に気づいた。この場所…あやコミ会場であってそうではない、辺りが凍り付くような恐ろしさを感じた。


「何これ…どういう事?」


 ちーちゃんも異変に気づいたらしく騒いでいた。というより酒顛の取り巻きや他のコスプレイヤーさん達が消えている。ここに居るのはちーちゃん、酒顛、美男2人に私だけ。


「ここは狭間だよ。妖怪好きのためのイベントなら分かるんじゃないか?」
「勿論知ってる。でも、信じ難いわよ」
「萩、流石にやりすぎだから。それに力を見せつけなくていいから」


 と、楚君が言うと突然周りの壁のようなものが崩れ落ち元の会場に戻っていた。これってモノホンなんじゃ…。


「仕方ない。皆さんこの事は忘れてくださいね」


 楚君は呆気に取られている酒顛の額に手を当てると酒顛はその場に崩れ落ちた。ちーちゃんも…これは記憶を消されるやつでは…


「ちょっと待った!」
「なんだ。質問は受け付けねぇよ」
「君たち本物なの?」
「おい、質問は受け付けないって…」


 その場に崩れ落ち手を着く私を見て萩君と楚君はギョッと目を見開いて私の元に近づいた。


「な、なんで泣くんだよ」
「萩が怖かったですか?」
「いや、違うの…感動で」
「感動?」


 楚君は訳が分からないというように慌てふためいた。確かにこの行動はこの二人にとっては信じられないかも知れないけど、妖大好き人間は誰だってこうなると思う。


「神様ありがとう」
「萩このお姉さんどうするの?」
「そんな事言われてもな…じゃあおまえ俺の嫁になれよ」
「…はい?」


 私と楚君はその思いがけない言葉にポカンとした。けれどこんな好機逃す訳には行かない!


「も、勿論!私でいいなら!」
「お姉さん!本気にしなくていいから」
「え、本気じゃないの?」


 と、またうるうる目になる私を見てまたあたふたしだした楚君。こう見てると可愛いな…


「いや、俺は本気だ。よく見たら綺麗な顔してるしな…でも、俺の嫁となっちゃどうなるか分からないぞ」


 それはもしやあれやこれやと…ドキドキな生活に?!


「多分勘違いしてると思うけど萩の言ってるどうなるかは…」
「どうなっても構いません!」
「じゃあよろしくな花栗 馨恵」
「わ、私の名前…」


 などと楚君の話を聞かずに答えを出してしまった私は後々後悔するのであった。

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