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布団三枚目 おんじんたいじに

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………?…なんだ?眩しい。最近眩しく感じること多いな………って、

「…そうだよ、ドラゴン………」

そうだ、思い出した。
俺は何故か森の中にいて、色々あって、ここが異世界だと理解した上で寝て……それから、ドラゴンと戦っ……そこで気がついた。
……ここはどこだ?

目を開けば白い天井。顔を横に向ければ小さなチャストに、恐らく今自分が寝ているであろう、正直余り寝心地は良くないベット………。
手を上に伸ばす。
地球にいたときとは似ても似つかないゴツゴツとした手。バランス良く筋肉のついた腕。白ベースに黒と青の模様が気に入ってる和服の裾。………今まで気づかなかったが、よくよく考えてみればこの体は俺であって俺じゃない。この体は、俺のの姿だった。
慣れ親しんだ体なのに何故、今までかなかったのだろう。
答えは簡単だ。
眠かったから。それ一卓。

落ち着いているようで落ち着いてない俺の思考は一端止めて、身体を起こす。
ギシ…とベットが軋む音がした。怖いな。

「……っんー。身体が痛いな…。」

余り覚えていないが頭の強打とステータスに書いてあった気がする。今は確認する気にならないが、あとでちゃんと見ておこう。
身体を起こしてみると腰下辺りを締めていた灰色の帯は緩められてして、履いていた下足はベットの傍に揃えて置いてあるのに気がついた。
誰だ。こんな親切な奴は。



―ガチャ………


そんな事を思っていたら、小さな音を立ててこの部屋に一つしかない扉が開いた。
その向こうから出てきたのは一人の少女…。
なんだこのテンプレ、とは思ってはいけない。

「あ、気がついたんですね?よかったです。どこかお加減が悪いところはありますか?」

ふんわりと笑ったその少女は、膝下の淡い青のワンピースを身に纏い、その上から白のカーディガン?を着ていた。髪は明るめの茶色で、三つ編みにして右肩から前へ流していた。
顔はまぁ、可愛いのだと思う。俺からしてみれば外見なんて気にする必要も無いと思うが。ぶっちゃけてしまえば人の名前も顔もよく覚えられない。……面白い名前とかだと覚えられるんだがな?

「あの?」

ずっと俺が黙りっぱなしだったので不安になったのだろうか。目の前の少女は眉を下げ少し怪訝そうに、しかし不安げに瞳を瞬かせた。

「…ああ、すまない。調子は凄くいいが……君が俺を助けてくれたのか?」
「良かった…どこか悪かったらどうしようかと……。あ、いえ!助けたのはわたしではなくて、「ねぇちゃん!!」あら、駄目よ。お客様の前でしょう?」

少女が開けた扉から人影が覗いた瞬間、子供特有の高く細い声が響いた。
ねぇちゃん、ということは弟だろうか。茶髪に気の強そうな目は俺を睨んでいた。
そんな子供を少女は嗜めて俺に目礼する。気にしなくていいと目で伝えたが、伝わっただろうか。笑顔で頷いたところを見ると伝わったのだろうが。

「ねぇちゃん!ソイツ、どうなったんだ?!」

小さな人差し指をピッと伸ばして俺を指す少年。歳は10歳程だろうか。つり目でキツそうな目だが、台詞から察するに素直な子なのだろう。俺には弟とかいなかったから、余計に微笑ましく感じる。

「あぁ、これから聴くところだったのよ。」
「…お前が俺を助けてくれたのか?」

少女にしがみついている少年に聞いてみる。すると、少年は少女の服から手を離し、一歩進み出て胸を張った。

「おう!」
「…そうか、助かった。ありがとな。」

最後は二人に向けて言った。
俺を助けてくれたのは少年らしいが、恐らく見つけたのが少年。ここまで運んだのが誰か…もしや二人か?そして手当てしてくれたのは少女だろう。

「いえ、わたしはただ手当てしただけですから………ところで、なんであんな場所にいたんですか?」
「あんな場所?」
「おう!にぃちゃん、うちの前の道端で倒れてたんだぜ?」


それは可笑しい。
少年が嘘をついているようには見えないが、俺が倒れたのは森の中だ。けっして家先の道端ではないはずだ。……何が起きたんだ?考えてみればドラゴンが倒れた俺を殺さないわけないし、考えれば考えるほど分からなくなった。ま、いっか。考えてもわからないもんは分からないからな。考えるだけ無駄だ。

「…そうか。だが、俺も良く分からないんだ。気付いたら森の中にいて、また気付いたらここにいた。」
「まさか記憶が……?!」
「…いや、記憶はある。あるんだが……」

記憶喪失ではないとおもう。
昨日の夕飯はカップヌーだったことも覚えてる。因みにシーフードだ。

「ううん…?よくわかりませんね。」

少女は唸るが俺にも良く分からないからしょうがない。

「なぁ!にぃちゃん、それよりさ……」

少年が、俺の前に来て口を開いた。
その活発そうな目をキラキラと輝かせて………




×××




気がついたら誰かの家でした事件から一週間。
俺はまだ恩人である少年少女の家にいた。

一日目はそのままベットで眠りについた。
二日目はこの世界の常識を教わった。
18で成人らしい。俺、成人済か。
三日目は家の手伝いをした。
四日目は自らの能力の確認をした。
スキルに隠蔽が増えてた。
五日目は近くの森で狩りをした。
六日目は出くわした魔物を狩った。
そして今日………


「本当に行っちゃうんですか?」

目の前の少女はその目に涙を浮かべたが、決して泣きはしなかった。

「にぃちゃん、もっといろよぉ…」

少女の服の裾を掴んで泣きながらそう言った少年。ねぇちゃんを見習え。

「…ああ。ありがとな。アーク、エリアス。」
「っ、エメクさん…」

エリアスと呼ばれた少女は涙をついにその頬に流した。目元がうっすらと赤く腫れている。
俺は何も答えることが出来なかった。

「っ!わたし、わたし……!」

ゲームならばここで俺についていく、という場面だが、「ここに居ますからっ、何時でも帰ってきていいですよっ!」まぁ現実じゃあそんなことはない。弟もいるしな。そもそもついていくと言われても俺は了承しなかっただろう。危ないし。

「…あぁ、な。」
「っ、はい!………ね!」

最後は敬語ではなく対等な言葉で。
それから、笑顔で送り出してくれた。
うん。やっぱり笑顔のほうがいいな。そっちのほうが「…可愛いな」………声に出てたか?

「……ッ!!!!その顔は……は、はんそく………」


顔?俺はよく無表情で表情が読めないだとか無愛想だとか言われるんだが………あと喋ってみると面白いとか。
今の俺はどんな顔をしてるのだろうか。鏡でもあれば良かったか?ま、いっか。

「っ!にぃちゃん!!」
「…おう?」
「おれ、おれ、にぃちゃんみたいな大人になるよ!」
「…お、おう?」
な!」
「…おう。、な。」

今度こそ、俺はこの居心地のいい家から飛び出した。…と言ってもエリアスに転移でここの外まで送ってもらったんだが。何故かあの家の傍には他の住宅がなかった。変の場所だなと二人に聞いてみたが笑って誤魔化されたので、諦めた。
そうそう、転移が出来るのは相当な魔法の使い手じゃないとできないって言ってたよな。エリアスってすごいんだなーと今更ながらに実感した。
俺は魔法適正みたいなスキルが無いんだが、魔力操作とかで何とかならんだろうか。試してみよう。
まぁ、そんなことよりも。
フワッとした曖昧な浮遊感が身体を襲う。それから何秒かして平衡感覚が戻ってきた。
転移は完了らしい。酔わなくて良かった。

さぁ、期待に胸を膨らませて目を開け………






「…おぉぉ?!」






なんだ、ここは………。
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