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吽
学
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「夜の学校」への恐怖心というのは、誰もが一度は抱いた事があるのではないでしょうか。
日中の様相とは異なった、おどろおどろしい雰囲気を醸し出しているその様は、畏怖の念を集めてしまいがちです。
恐れが集う場所には、古来より良くないものが集まるとされています。
子供たちの学舎である学校。はたして夜になると何が学舎に来ているのか。
今回はそんなお噺しをご紹介しよう。
E美はピアノのコンクールを控えていたため、レッスンがない日は学校に遅くまで残って練習していた。
この日も遅くまで練習しており、気づけば下校時刻が過ぎるかすぎないかギリギリの時間だった。
季節は真冬で、この時間にもなるとあたりは真っ暗になる。急いで帰り支度をし、音楽室の鍵を返却するために職員室へと向かった。
廊下へ出ると、非常灯の緑色と非常ベルの赤色だけがあたりを照らし、すでに誰もいない様を表していた。
「早く鍵返さなきゃ」
夜の学校のもつ独特の雰囲気は、昼間の学校とは全く異なったなんともいえない恐怖感がある。
E美は職員室へと向かって足を進めた。3階の一番奥に位置する音楽室から1階の職員室へと向かう。
職員室は生徒玄関付近にあるため、鍵を返却したらすぐ帰路につける。
早くはやくと焦る心から、歩くというよりも小走りに近い速度になる。なるべく周りを見ずに、階段へ急ぐ。
廊下へを急ぐE美の足音と、蛇口から滴る水滴の音だけが響く。すると突然、ギィィィ…という音が聞こえた。
ちょうどトイレの前を通過しようとした時である。その音はトイレの中から聞こえた。
恐らく、個室の扉が開いた音である。
「えっ…」
E美は一瞬立ち止まってしまった。誰もいないはずの真っ暗なトイレから聞こえてきた音。
電気もつけずに、この暗闇の中トイレにいる誰か。
ヒヤリと冷たい汗が流れる。
職員室へ急ごうと前を向き直すE美の耳にヒタ、ヒタと誰かがゆっくり歩く音が聞こえた。
トイレの中から、こちらへと向かってくる足音が。
全身に悪寒が走ったと同時に、私は再度足を動かしていた。
これは見てはいけないものだ。直感的にそう感じた。
もはや小走りなんていってられない、全力で走った。階段を駆け下り、一階へ。
そのまま職員室へと向かう。職員室から漏れ出す明かりが見えると、安堵が募る。
乱れた呼吸を整えつつ、自分がいま来た廊下を振り返る。
何もいない。
聞こえるのは自分の荒れた息づかいのみだ。呼吸を落ち着かせる、明かりの漏れる職員室の扉を開けた。
「失礼します」
真っ暗な職員室が眼前に広がる。明かりなどは一切ついておらず、深淵の闇だけがそこには広がっていた。
「なん…で?だっていま明かりが…」
恐怖と驚きで動くことができないE美の耳元で声が聞こえた。
「逃げられないよ」
夜の学校。昼間と異なり、誰もおらず、誰の声もせず、暗闇を照らすのは非常灯くらいです。
昼間の雰囲気を知っていれば尚更、恐怖心というものを煽ってしまいそうなものですね。
そんな恐怖心が集ってしまう学校に、はたして何が寄ってきてしまったのか。
普段の友達ではない、この世のものではないお友達が、来てしまったのかもしれない。
さあ居残りなどせず、今回のお噺しはこれで終わるとしよう。
日中の様相とは異なった、おどろおどろしい雰囲気を醸し出しているその様は、畏怖の念を集めてしまいがちです。
恐れが集う場所には、古来より良くないものが集まるとされています。
子供たちの学舎である学校。はたして夜になると何が学舎に来ているのか。
今回はそんなお噺しをご紹介しよう。
E美はピアノのコンクールを控えていたため、レッスンがない日は学校に遅くまで残って練習していた。
この日も遅くまで練習しており、気づけば下校時刻が過ぎるかすぎないかギリギリの時間だった。
季節は真冬で、この時間にもなるとあたりは真っ暗になる。急いで帰り支度をし、音楽室の鍵を返却するために職員室へと向かった。
廊下へ出ると、非常灯の緑色と非常ベルの赤色だけがあたりを照らし、すでに誰もいない様を表していた。
「早く鍵返さなきゃ」
夜の学校のもつ独特の雰囲気は、昼間の学校とは全く異なったなんともいえない恐怖感がある。
E美は職員室へと向かって足を進めた。3階の一番奥に位置する音楽室から1階の職員室へと向かう。
職員室は生徒玄関付近にあるため、鍵を返却したらすぐ帰路につける。
早くはやくと焦る心から、歩くというよりも小走りに近い速度になる。なるべく周りを見ずに、階段へ急ぐ。
廊下へを急ぐE美の足音と、蛇口から滴る水滴の音だけが響く。すると突然、ギィィィ…という音が聞こえた。
ちょうどトイレの前を通過しようとした時である。その音はトイレの中から聞こえた。
恐らく、個室の扉が開いた音である。
「えっ…」
E美は一瞬立ち止まってしまった。誰もいないはずの真っ暗なトイレから聞こえてきた音。
電気もつけずに、この暗闇の中トイレにいる誰か。
ヒヤリと冷たい汗が流れる。
職員室へ急ごうと前を向き直すE美の耳にヒタ、ヒタと誰かがゆっくり歩く音が聞こえた。
トイレの中から、こちらへと向かってくる足音が。
全身に悪寒が走ったと同時に、私は再度足を動かしていた。
これは見てはいけないものだ。直感的にそう感じた。
もはや小走りなんていってられない、全力で走った。階段を駆け下り、一階へ。
そのまま職員室へと向かう。職員室から漏れ出す明かりが見えると、安堵が募る。
乱れた呼吸を整えつつ、自分がいま来た廊下を振り返る。
何もいない。
聞こえるのは自分の荒れた息づかいのみだ。呼吸を落ち着かせる、明かりの漏れる職員室の扉を開けた。
「失礼します」
真っ暗な職員室が眼前に広がる。明かりなどは一切ついておらず、深淵の闇だけがそこには広がっていた。
「なん…で?だっていま明かりが…」
恐怖と驚きで動くことができないE美の耳元で声が聞こえた。
「逃げられないよ」
夜の学校。昼間と異なり、誰もおらず、誰の声もせず、暗闇を照らすのは非常灯くらいです。
昼間の雰囲気を知っていれば尚更、恐怖心というものを煽ってしまいそうなものですね。
そんな恐怖心が集ってしまう学校に、はたして何が寄ってきてしまったのか。
普段の友達ではない、この世のものではないお友達が、来てしまったのかもしれない。
さあ居残りなどせず、今回のお噺しはこれで終わるとしよう。
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