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第6章 新しいお店を始めよう!

第6-3話 開店! ヴァンさんの癒しのレストラン

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 2週間後……

 ヴァンさんがオーナーとなるカフェレストラン、”プレジール”は、無事オープンの朝を迎えていた。


 隣の空き家は、元カフェのため、厨房設備はそのまま使える。

 1階の店舗部分を、白い石壁を持ち、海辺にある小さなレストランをイメージする外装に改修、2階は屋根を可動式にしたオープンスペースに改造。

 こじんまりとしつつも、色々なお客様に楽しんでもらえる、おしゃれなカフェレストランが完成しました!

 この辺りのデザインはカフェに夢見る女子であるポゥとエル、あと大人の女性としてヴァンさんの意見を取り入れたちょう力作である!

 ……僕? 商店街や王国に提出する事務書類を頑張って作成していました。


 ともかく、総額数十万センドを掛けたカフェレストラン、完成です!

 隣の”グラスとポゥの快復ストア with エル”とは、1階部分をつなげてバックヤードからすぐにを互いに手伝いに行けるようにしてるので、お客さんが多い日でも安心です。


 ***  ***

「やた~! セリーンさん渾身の制服……カワイイよぉ」

「にひひ……アタシの脚線美が映えるデザインだよねっ♪」

 ふたりが着ているのは商店街の仕立て屋さんに作ってもらったカフェの制服……白を基調に、セーラー襟と半袖の袖口にラインが入っており、ポゥは朱色、エルは青色とふたりのイメージカラーに合わせてある。

 ふんわりと広がるスカートには、同じく太めのラインが入り、先端には可愛いレースが付いている。
 スカートの両サイドには少し深めのスリットが入り、ちらりと太ももが覗くのが目を引くポイント。

 ポゥはニーソ、エルは生脚と、ふたりの好みに合わせてあり、足元はおそろいのコインローファー。
 頭の上には髪の毛が落ちないよう、白のベレー帽をかぶる。


 なんといいますか……可愛すぎて怖い。


 今日は開店日という事で、快復ストアはお休みにし、全員でこちらで働く予定だ。

「ふふ~、ポゥちゃんもエルちゃんも似合ってるわよ~」

「グラス君もその執事服、似合ってるじゃない」

 僕も髪をオールバックにし、黒の執事服で決めているのだが……とても恥ずかしい。

 そういうヴァンさんは、制服の基本デザインは同じなものの、スカートはロングにし、緑色のエプロンを付けている。
 漂う癒しのオーラに、思わず眠ってしまいそうだ。


「えへへ、どうかなっ! グラスもその服、カッコいいねっ!」

「にしし……グラス、スリットばかり見ちゃって、えっち。 そちらも似合ってるね」

「ありがとう……ふたりとも、と、とてもかわいいよ」

 いつもの調子で褒めてくれるふたりに、僕の頬も熱くなってしまう。


 さあ、カフェレストラン、”プレジール”、開店です!


 ***  ***

「うおお、すごくお客さんが来る……!」

「いらっしゃいませ~、新規4名様、8番テーブルですっ!」

「ヴァン、7番テーブルスペシャルランチ4つで!」

「はいはい~、うけたまわりね~」

 僕の店に新しく加入したおっとりふわふわ美人お姉さんが、カフェレストランを開店するらしい……いつの間にか王都中を駆け巡っていた噂のお陰か、カフェレストラン、”プレジール”は大盛況だった。

 開店から数時間は経っているが、行列は途切れることを知らない。

 ……むむぅ、これはバイトの子を何人か採用しないと大変だな……そう思うくらい、お店は繁盛していた。


「スペシャルランチ、美味しかったなぁ、また来ようぜ!」

「うんうん! あとなんだろうね……食事だけじゃなく、すごく癒される雰囲気というか……友達にも紹介するよ!」

 食事を終え、帰っていくお客さんの顔もみんな笑顔だ。

 ヴァンさん特製の食事が美味しいのはもちろんだが、実はこのお店、余ったポーションやエーテル、そして万能薬の薬液を薄め、アロマ的にふんわりと店中に漂わせているのである。

 そのため、HPもMPもステータス異常もほんのり癒してくれるという、最強の癒しスポットでもあるのだ……!

 その後もお客さんの波は続いたが、午後3時を過ぎるとさすがに落ち着いてきた。

 食材もそろそろ切れそうなので、あと1時間くらいで閉店かな、そう思っていると……。


「は~い、シャロンさんですよ~。 かわいい女の子が同伴してくれるという噂のお店はここかな?」

 ゴン!(無言のグーパン)

「ふぎゅっ!」

「はは、騒がしくしてごめんねグラス君……ふたりだけど、いいかい?」

 相変わらずなノリで現れたのは、勇者パーティの魔法使いシャロンさんと、勇者アロイスさん本人だった。

「アロイスさん、シャロンさん! 来てくれたんですね! こちらにどうぞ!」

 開店日に来てくれるとは……感激した僕は、おふたりを2階のテラス席に案内する。
 アロイスさんとシャロンさんって、もしかして付き合ってるのかな……お似合いだもんな。

 僕とポゥも、はたから見たらこう見えるんだろうか……思わず妄想してしまいます。

「ん~、このケーキセット美味しい!」

「……それに、このふんわりと漂う癒しの空気……回復アイテムの薬液を薄めて撒いているのか、いいアイディアだね」

 アロイスさん、シャロンさんにも楽しんでもらえているようだ。

「ふぅ、今日は開店祝いに来たのもあるんだけど、グラス君たちに一つお願いがあって」

「お願い……なんでしょうか?」


 ふと、アロイスさんが真面目な表情になり、お願い事項を切り出してくる。

「冒険者ギルドの噂で聞いてるかもしれないけど、ここ数か月……迷宮での回復アイテムのドロップ率が低下するという現象が起きている」

 それはいろんな冒険者から聞いた話だ……おかげで回復アイテムの相場が上昇し、冒険者ギルドや王国物流部が乗り出して、価格が上昇しすぎないよう、気を配っていると聞く。

「さらに、一部の迷宮で回復魔法の消費MPが上昇したり、初級回復魔法が発動しない……と言った異常事態が発生しているらしい」

 !? それは僕も初耳だった……そんなこと、あり得るのだろうか?
 妨害魔法の中には、相手の魔法を封じる術もあるが、消費MPを上昇させる術なんて、聞いたことが無い。

「極めつけは先日、王国軍の駐屯地で、ポーションを使った人間がダメージを食らうという事件まで発生したんだ」

「今回、正式に王国から調査依頼が出てね。 俺たちもいくつか怪しい場所に目星をつけてるんだけど……」

「”アイテムの精霊”達と信頼関係を結んでいるグラス君に、調査への協力を頼みたいというわけさ」

「忙しいところ申し訳ないんだけど、お願いできるかい?」


 アロイスさんの口から語られた衝撃的な事件……ポーションが使用者にダメージを与えただって?

 そんな現象見たことも聞いたことも無い……ポーションの精霊たるポゥに悪影響が出ないだろうか……。

「もちろん大丈夫です! ぜひ調査に同行させてください!」

 その後、細かい日取りをみんなで相談し、3日後に調査へ出発することになったのだった。
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