上 下
33 / 53

第33話 レイドボスを倒せ

しおりを挟む
「ふふ、ここはアリスにお任せを。
 ヘルファイヤ!!」

 ドガアンッ!!

 アリスの爆炎魔法がダンジョンの壁ごとオークの群れを爆砕する。

 ガラガラガラ……

 魔法の威力に耐え切れず、崩落する天井。
 アリスの魔法の威力はさらに上がっているようだ。
 今回はレイニさんがこの77層を含め数フロアを貸し切っている。

「わお☆
 相変わらずヤバすぎだし!」

 ゆゆも負けじと爆発から逃れたモンスターを倒していく。

「はあっ!」

 ザンッ!

 剣を構えたままクルリと空中で一回転。
 鋭い剣閃がゴブリンを真っ二つにする。

「どや☆
 新技、ゆゆカッター!」

 剣を構え、大きくポーズを取るゆゆ。
 弾みでふわりとスカートがめくれ上がる。

 ”ゆゆかっけ~!”
 ”やっぱゆゆの魅せ技はスゲーな”
 ”みえ……みえ”

「にひ♪ だからスパッツだって言ってるっしょ!」

 ゆゆのフォロワーは相変わらず盛り上がっているが……。

「ほらほら、先を急がないと使徒の皆様が飽きてしまいますよ?
 バーストレーザー!」

 ヴイイイイインッ

 ズッドオオオオンッ!!

 アリスの閃光魔法が一直線にダンジョンの壁を貫く。

「ふふっ♡」

 右手の人差し指と中指をぺろりと舐めるアリス。
 ドキリとするような流し目をドローンカメラに送ると、すらりとした脚を見せつけるようにダンジョンの奥に向かって走る。

 ”えっっっっ!!”
 ”アリスの新路線いいぞ~”
 ”ゆゆ、ちょっと魅せ攻略しすぎじゃないかな~。
 アリスみたく圧倒的な破壊力を見せて欲しい”
 ”時間かけ過ぎだよね”
 ”いやいや、魔法だけじゃ面白くないっしょ?”
 ”ほらほら、仲良し二人の配信なんだからケンカしない”

「もふもふ」

 俺はいつも通り、ふたりの倒したモンスターをクリーナースキルで魔石に変えていく。

「うは! 今日のアリスっぴちょいドS!?
 だがそれがいい!!」

 ゆゆはアリスのキャラ作りと思っているようだ。
 嬉しそうに身体をくねくねさせると急いでアリスの後を追う。

「…………」

 だが俺は、少しだけ違和感を感じていた。
 前回のダンジョン配信に比べ、ダンジョンの破壊度合いが大きい。
 攻略後にまとめて直すのかもしれないが、壊れたダンジョンはそのままだ。

 モンスターに対しても意図して高威力の魔法を使っている気がする。

 プロデューサーであるレイニさんの指示なのか、それとも……。

 先ほどからアリスの足元に付き従っているピンクカーバンクルのマジェのことも気になる。

(気のせいか……?)

 マジェを見ていると、なぜか全身がぞわぞわするのだ。
 と言い換えてもいい。

「もふもふ」

 どこかすっきりしない違和感を抱えたまま、俺は二人の後を追うのだった。


 ***  ***

 オオオオオオンッ

 ダンジョンの最奥にいたレイドボスは、事前にレイニさんから告げられていた通り巨大なタコ型モンスターであるクラーケン。
 ……なんでレイニさんはレイドボスの種類まで事前に分かるのだろう?

「へへ、当たらないし!」

 天井までの高さが15メートル以上はある、大広間の壁面を埋め尽くさんばかりの巨体。
 だが、その巨体が災いして攻撃に鋭さはない。

 ビシュッ!

 触手の突きをあっさりとかわしその上に乗ると、そのまま駆けあがるゆゆ。

「ゆゆカッター!!」

 ザンッ!
 どさり

 ゆゆの高分子ガラスブレードが一閃し、大人の胴体より太い触手を切り飛ばす。

 じゅるじゅる

「うぇえ、やっぱし!」

 だが、類まれなHPを誇るレイドボスだ。
 切られた触手の断面がすぐに再生していく。

「……バーストレーザー」

 間髪入れず、アリスの閃光魔法が放たれる。

 ヴィイイイイイイインッ!

「っとぉ!?」

 ちりっ!

 一直線に伸びてきた赤い閃光を辛うじてかわすゆゆ。

 ドンッ!

 再生しかけていた触手は焼き切られ、クラーケンの本体に大穴が開く。

「っっ、アリスっぴ、ナイス!!」

 サムズアップするゆゆだが、その額には冷や汗がにじんでいる。

「もふ……」

 今のは危なかった。
 かわすタイミングがわずかでも遅ければ、ゆゆに当たっていたかもしれない。
 一応、探索者が使う魔法には対人威力を抑えるリミッターがついており、ゆゆの着ている制服の魔法防御力も高いが、元の威力が桁違いだ。

「もふ(気を付けて、アリス)!」

 念のため、アリスに警告を送る。

「ふふ、ゆゆのこと信頼してますので」

 俺のメッセージを一瞥すると、蠱惑的な笑みを浮かべるアリス。

 ……やはり様子がおかしい。
 キャラづくりだとしても、他人に危害を加えてしまいそうになったのに、平気な顔をする子じゃなかったはずだ。

 みきゅっ

 アリスの足元に纏わりつくマジェは、相変わらず澄ました様子でこちらを見ている。

 ”うわ、あっぶね~”
 ”せめて魔法を発動させる前に声を掛けなきゃ”
 ”今日のアリス、ちょっとおかしくね?”
 ”いやいや、ゆゆこそアレくらい攻略パートナーとして感じてくれないと”
 ”そもそも対決、だし!”
 ”危ない事をしていいわけじゃないだろう?”

 コメントも少し荒れ気味だ。
 少なくとも第一回対決のような和気あいあいとした雰囲気はない。

「さあゆゆ、早くとどめを刺しますよ」

「う、ういっ!」

 その後もゆゆとアリスの危なっかしいコンビネーション攻撃は続き、
 何とか無事にレイドボスであるクラーケンを倒すことが出来たのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

配信の片隅で無双していた謎の大剣豪、最終奥義レベルを連発する美少女だと話題に

菊池 快晴
ファンタジー
配信の片隅で無双していた謎の大剣豪が美少女で、うっかり最凶剣術を披露しすぎたところ、どうやらヤバすぎると話題に 謎の大剣豪こと宮本椿姫は、叔父の死をきっかけに岡山の集落から都内に引っ越しをしてきた。 宮本流を世間に広める為、己の研鑽の為にダンジョンで籠っていると、いつのまにか掲示板で話題となる。 「配信の片隅で無双している大剣豪がいるんだが」 宮本椿姫は相棒と共に配信を始め、徐々に知名度があがり、その剣技を世に知らしめていく。 これは、謎の大剣豪こと宮本椿姫が、ダンジョンを通じて世界に衝撃を与えていく――ちょっと百合の雰囲気もあるお話です。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

【ダン信王】#Aランク第1位の探索者が、ダンジョン配信を始める話

三角形MGS
ファンタジー
ダンジョンが地球上に出現してから五十年。 探索者という職業はようやく世の中へ浸透していった。 そんな中、ダンジョンを攻略するところをライブ配信する、所謂ダンジョン配信なるものがネット上で流行り始める。 ダンジョン配信の人気に火を付けたのは、Sランク探索者あるアンタレス。   世界最強と名高い探索者がダンジョン配信をした甲斐あってか、ネット上ではダンジョン配信ブームが来ていた。 それを知った世界最強が気に食わないAランク探索者のクロ。 彼は世界最強を越えるべく、ダンジョン配信を始めることにするのだった。 ※全然フィクション

最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話

亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

処理中です...