その罪の、名前 Ⅱ

萩香

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PAST/いくつかの嘘

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 布団に潜った遼が、やがて小さな寝息をたて始める。
 疲れていたのかもしれない。ひどく気を使わせていることに、気づいていないわけではなかった。

 ……別れてから、四年と、数カ月。そんなことを考えながら、恭臣は酒を注いだグラスを傾ける。

 卒業するときに、遼をつなぎ止めておかなかったのは自分だ。終わりにしなければならないとわかっていたから、手を離した。
 卒業したら、終わり。……それが、最初からの約束だったのだ。

 本気で調べようと思えば、連絡先ぐらいはわかったのかもしれないが……もう二度と会わない方が、遼のためだと知っていた。

『姉を、愛してるんですよね』

『………そうだよ』

 あのとき、他にいったい、どう答えれば良かったのか。こんなふうに再会するとは、思ってもみなかったのだ。まさか、こんな形で。

 恨まれていても仕方がない。憎まれていたとしても、当然のことだ。たとえどんなに正当化したところで、あの一年、自分が遼を弄んだのは事実なのだ。

 無垢だった体に、快楽を覚え込ませた。人形のように従わせた。

 遼にとっては、おそらく思い出したくもない記憶だろう。そんな相手に、大事な姉を奪われるなんて冗談じゃないとさえ、思っているはずだ。

 遼が自分を否定しないのは……ただ、姉の幸せのため。それがわかっていた。

 痛いほど。

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