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神様になる方法

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ふふふふふふ。

ついに俺が放った最強の刺客、スライムが動き始めたようだな。


俺は初めてのダンジョン入場時にスライムを投入、さらにホムンクルス達魔王軍が撃つ弾丸(スライム)をダンジョンにばら撒き続けた。


そう、相手は五星とかいう枠組みにいる、なんかすごいダンジョンなのだ。

層の数なんと98層。1層だけで凄まじい数の魔物がいたのだ。最後の方の層にはどんな化け物がいるのか想像がつかない。

今でこそ戦力は充実し始めているが寡兵は寡兵。敵軍と比べると数の差がありすぎる。

まともにぶつかっても勝てるわけがない。そんなわけで俺が考えたのは、このスライムを使いダンジョンをまるごと乗っ取り、内部から滅茶苦茶にすることだ。


手段は問わない。斬首作戦、ダンジョンシステムのハッキング、成り替わり、内乱などとにかくダンジョンを滅茶苦茶にして機能不全にするよう俺は命令した。


これまでのダンジョン攻略は、敵の目を惹きつける為のお遊びだ。その証拠にこちらの最高戦力である法務省6課はそこそこな頻度で出撃しているが、全力ではない。戦力の温存だ。


スライムがダンジョンを崩壊させてからが本番だ。

俺たちが本気を出して全軍出撃する際、敵はまともな組織的な抵抗もできずに終わるだろう。




それでは、顔も見ずに倒した61層司令官討伐報酬!魔法確ガチャだ!





ガタンッ




金色のカプセル!きた!久しぶりのSSRだ!










SSR『天才魔術師の工房』


それはマッドサイエンティストの研究所横に出現した。

工房の第一印象はゴミ山だ。とにかく大量の物で工房は埋め尽くされている。だが不快感や異臭は無い。

壁際に置かれた本棚の中はぎゅうぎゅうになるまで本が詰め込まれ、入りきれなかった本が床に散乱している。

床は怪しげな道具などが積み重なって山ができており、前に進むにも一苦労だ。

おそらくこのゴミ山も、天才魔術師からしたら宝の山なのだろうか。

俺は本棚から適当に一冊手に取る。保存状態は良好。シミや汚れひとつない。

だが予想通りなんて書いてあるのか全く読めない。未知の言語だ。数多くの図や絵、魔法陣で説明されているが解読不明。

俺は調査に来たマッドサイエンティストに対して、この部屋の道具を勝手に使わないこと、とにかく慎重に扱うように命じた。




その後、大量のスパコンと言語学を学んだことのあるマッドサイエンティストの活躍により、俺が手に取った本の題名だけを解読することに成功した。




さて、本の題名は何かというと。



『神の鋳造方法』


うわ。(ドン引き)

もうだめだよこれ、題名だけでやばい物だということがわかる。

鋳造って。神を人間の手で作り出すってこと?ヤバいよマジで。不敬とかそういうレベルじゃない。
あと、誕生とか生誕とかじゃなくて、鋳造って言葉を選んだことに悪意を感じる。

おい、やめろ!マッドサイエンティストども、これを解読しようとするな!…え?したくてもできない?言語が複雑な上に、何種類もの言語が使われていて、これ以上解読不能?

良かった。いや何もよくないが。



しかし、この魔術師は神を作り出そうとしたのか?
何とも恐ろしい。








今日のログインボーナスは3連ガチャコイン!
おいおい、ちょっと回数が減ってるぞ?もっと回させろ!




ガタンッ





R『吸水タオル』
C『全自動たこ焼き製造機』
C『遮光カーテン』



…?吸水タオルがRなのか?CやUCじゃなくて?

出現したのは青いタオルだった。見た目は触り心地が良さそうな、どこにでも売ってあるようなタオル。

だがRなのだ。普通のタオルではないだろう。



鑑定!



●吸水タオル

現代の家庭に必須なアイテム!あらゆる液体を無制限に吸い込む吸水タオルです!

これまでのタオルとは一線を画す最新技術を採用し、水はもちろん、ジュースや油などあらゆる液体を吸収します!お掃除からキッチンまで、日常生活に欠かせない万能アイテム!

もう信じられないくらい水を吸います!

お手入れも簡単で、長持ちするので経済的です。一度使い始めたら手放せなくなること間違いなし!




なるほど、ただ単によく吸うタオルか。



このタオルはダンジョンやショッピングモール内に落ちている魔物の血液を拭き取る為に使われることとなった。

掃除を命じたホムンクルス曰く、信じられないくらい血を吸うとのこと。タオルを絞る時見て欲しいというので、俺は生け贄の棺が設置されてある場所に向かった。

この血は生け贄の棺に排水され、誰かさんに捧げられる。一体誰に捧げられているんだ?


まあ考えても仕方が無い。
そうして、ホムンクルスがタオルを絞る。


どばばばばばばばばばばばばばばばばばばっばば





するとタオルから滝のように血が排水された。

は⁉ど、どうなっているんだそれ⁉


「ほら?すごい血を吸うでしょ?しかもこれ全然重くないの。吸う前と重さほぼ同じなんてすごくないですか」





質量保存の法則が崩壊してる!今更だけど。










それでは、無料ガチャ!



ガタンッ




UC『マトリョーシカのパラドックス』




マトリョーシカは、ロシア伝統の人形だ。

パックリと二つに分けることができ、中には一回り小さい人形が入っている。その人形も割ることができ、また中には人形が、その中にも人形が入っている。
どんどん小さくなるのだが、一体何がパラドックスなのだろう。




出現したのは、鮮やかな色彩で彩られたマトリョーシカが並んでいた。

見た目は本格的なマトリョーシカだ。色も味があり、装飾も丁寧。高級品だな。

俺は慎重に一つずつマトリョーシカを開けていく。中から更に小さなマトリョーシカが現れる。

俺は深く考えず、パカパカとマトリョーシカを開け続けた。


うーん、特に何もないな。パラドックス、つまり矛盾という意味だが、一体何が矛盾しているのか。





俺はマトリョーシカを片付けようと、人形を元の位置に戻そうとする。手に持った人形を人形の中に戻そうとした。

しかし異常発生。人形が中に収まらないのだ。確かにこの人形は先程までこの中に収まっていたはずなのに、どうして入らないんだ?

調べてみると、明らかに中に入っていた方の人形の方が大きくなっているのが分かった。

混乱した俺は一番外側の人形と、最後に開けた人形の大きさを比べることにした。普通に考えれば、外側の人形の方が大きいはずだが、なんと内側の人形の方が大きくなっていたのだ。



開ければ開けるほど大きくなるマトリョーシカ。外側よりも中身の方が大きくなるマトリョーシカ。意味不明な現象に俺は混乱した。なるほど、これがパラドックス。

そして、開けることで大きさが増していくマトリョーシカが、ジッと俺を見ているような気がした。

その不気味さにびびった俺は、ガラクタ置き場の奥にマトリョーシカを置いた。






その後、マッドサイエンティストにより悪魔の兵器、マトリョーシカ弾が開発された。

弾丸が敵の肉体に着弾後、弾丸内部に埋め込まれたマトリョーシカが次から次へと大きくなり、内側より破裂される悍ましい兵器だ。


これがゴーレムのような硬い敵によく効く…不気味だよ!














第61層 中層暗黒魔術師団幹部 視点


「ほ、本気なのかダンジョンマスターは⁈」


深夜にも関わらず召集された緊急会議。伝達係が言うには戦だと言う。侵入者について何か不測の事態でも起きたのかと考え、会議に出席した。
そこで暗黒魔術師団長、ヘル師団長は、信じられないことを話し始めたのだ。


「あぁ、先ほど命令が降った。中層暗黒魔術師団は、60層に拠点を構える中層暗黒騎士団に対して攻撃を仕掛けよとな」




「ついにボケ始めたか。」
「確かに暗黒騎士団は嫌いだが、何もそこまで…」
「暗黒騎士団はいつか皆殺しにしたいと考えていたが、よりにもよって今なのか?」
「我らに味方を攻撃せよと言うのが⁈」
「何を考えておられるのだ…」



「ダンジョンマスター様は、このダンジョン孤立現象の解決のため、空間魔法に特化した魔物を作り出すらしい。それにはDPが足りないそうだ」


「クソ、あんな無駄遣いばかりするから…」




思わず愚痴が出てしまう。
ダンジョンマスター様はただでさえ無駄遣いが酷かったのだ。

費用を考えないダンジョンの無謀な拡大、連日連夜パーティの開催、賭博、ダンジョンマスター同士で行われるオークションの購入費、DPとの交換で手に入るアイテムの入手。数えればキリがない。

最近になってお気に入りのダンジョンマスターができたらしく、そのダンジョンマスターの為に数多くのDPを使っていた。

ついに貯金も無くなってしまったのか。




「待ってください。ならDPの為なら、ダンジョン内の魔物を狩ればいいだけの話では?そもそも、何故よりによって暗黒騎士団を…」





そうだ、DPが欲しいのなら、ダンジョン外より持ち込み、自然繁殖しているモンスターを狩ればいい。最悪の場合、末端の兵士を自害させればいいのだ。


だが、暗黒騎士団は違う。このダンジョンで5本の指に入る大規模な戦力だ。この暗黒騎士団を潰せば、戦力の低下は避けられない。

さらに言えば、暗黒騎士団は皆、スキル『決意』を保持している。

この決意は意志の力が強ければ強いほど、法則やルールを打ち破ることができるのだ。

ダンジョンマスターの持つ絶対的な命令権にも逆らうことが出来るだろう。つまり、ダンジョンマスターの『一切抵抗せずに黙って暗黒魔術師団の攻撃を受けろ』などの命令も無視できる。


つまり、我々は全力で抵抗する暗黒騎士団と真っ向から戦わなければならないのだ。


それに、暗黒騎士団はこのダンジョンが作られた初期の頃からダンジョンマスターを支えたのだ。そんなダンジョンに貢献してきた騎士団を潰すだと?

ダンジョン内が大混乱に陥るだろう。


「私たち暗黒魔術師団と暗黒騎士団が争っているのを楽しむだけかもしれん。ダンジョンマスターならありえる」


「そもそも、空間特化の魔物を生み出すということも本当かどうか怪しい。単に暗黒騎士団が粛清したいだけかもしれんな」


皆、口々に文句を言う。俺だってそうだ。この戦い、勝っても味方から同胞殺しと言われるだけじゃないか。名誉は地に落ちるだろう。





ヘル師団長は、ひどく顔をゆがませながら口を開いた。


「………やるしかない。我々はダンジョンマスターの創造物。ダンジョンマスターに逆らうことは出来ない。我々に拒否権はないのだから」




「既に作戦は決められている。数日後に中層暗黒騎士団との合同訓練として61層に誘い出す。その後奇襲し、中層暗黒騎士団主力を殲滅。第60層に攻め込む。同時刻、上層、下層魔術師団も暗黒騎士団へと攻撃を始める」


「なお、本作戦は最高機密だ。絶対に61層以外の者に話すな」



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