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肉っぽい野菜

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家具屋がかなり広いおかげで人数が増えたが窮屈だとは思わなかった。

家具屋に設置してある家具を移動させ、男女でスペースを分けた。カーテンや棚を動かして簡単にだが個室もできた。

プライベート空間が確保できたというのは非常にいい。のんびりと誰の目も気にせずゆっくりくつろげる。




しかし。ガチャから出た厄ネタ6人衆の中で飲食が必要そうなのはアナスタシアと少年A。

銭湯の自販機から強奪した食品ももうすぐ尽きそうだ。残っているのはログインボーナスでもらった缶詰とカワウソが持ってきた缶詰。バーテンダーがお持ち帰りのお土産をサービスしてくれてるおかげで食糧の節約ができているがここ数日で3人も飲食が必要な人員が増えた。


正直まずい。食糧問題が解決していないにも関わらず人ばかりが増える。




期待を込めて、ログインボーナスを確認する。

本日の無料コインは『C確定コイン』だった。

…いや、ええ?C確定コインって。もう少しマシなログインボーナスを寄越せよ。


ため息をつきながらガチャへ向かう。


そこで俺は衝撃的な光景を目にした。



首無しがオレンジジュースでガチャを中心に魔法陣を描いていた。
よく見るとガチャにも幾何学的な模様が描かれている。



お、おまえ!俺が風呂入っている間何してんだよ!



「このみかんジュースは質が良い。高純度の神秘が込められていますね。」


「何をしているんだ?こんなみかんジュースをこぼして。掃除はお前がしろよ。」


「後の話は後程。私がしているのは、なに、簡単なことです。少々ガチャに指向性を持たせているのですよ。」


「指向性だって?」


「はい、欲しいものが少々出やすくなる、そんなおまじないです。」



「おおおお、流石はSSRユニット!ただの怪しくてやばい奴だと思ってたぞ!使えるじゃないか!」



「…あなたは気づいていないのですね。自分の力に。」


首無しがヌッと俺によって来る、何だ今のぬるぬるした、無駄のない動きは。



「あなたには力がある。さあ、その力を意識して、具体的に、強く望むのです。ガチャを回すのです。」



力だって?俺に?
よくわからんが首無しの言うとおりにする。俺が欲しいのは食糧、一人分じゃない、ここにいるみんなが腹いっぱい食べても余るような、そんな量の食べ物。

欲しい、お腹がすいた。もっと食べたい、食べさせてやりたい。

力?わからない。でも、俺に力があるってんなら、さっさと働け!




ガタンッ



 
C『瀬戸内の塩5キロ』


どさっと落ちてきたのは瀬戸内海の塩と書かれた透明な袋だった。中には白い粉が詰まっている。


「…おい。」


「…プラスに考えましょう。人間が生きるのに塩は必要不可欠です。さあ、もう一回。」



今度は無料ガチャ、頼む、出てくれ。




ガタンッ




R『民間用宇宙船搭載野菜工場』


衝撃と共に、一枚の扉が壁に現れる。機械でできた扉だ。


野菜工場!



「ふふふ、望んだものがでましたね。」



俺はボタンを押して中に入る。中は通路になっていて、機械でできた通路だった。さらに俺は何枚も扉をくぐり、奥に到達する。


そこには、縦長のプランターに敷き詰められた、黒い土。天井から降り注ぐ明るい光。冷房の効いた白い部屋や通路とは違う、暖かい空気。


野菜工場といっていたが、あるのは畑だった。

しかし、その畑には何もない。いや、正確には芽は出ている。それだけ。


どうすることもできない。この空間は宇宙船にある野菜工場らしい。この技術を駆使すれば野菜の早期収穫も可能かもしれない。だが、俺は今食べたかったのだ。みんなで、新人歓迎会でも開こうと思ってたのだ。

どうすることも、俺はいつもそうだ。中途半端な運、肝心な時に発揮しない運、どうでもいい時に限って運が良くなる。









あっ、植物成長剤!
そうだよ、確かちょっと前に植物成長剤がガチャから出てきたはずだ!

俺は工場から出て、ガラクタの山から成長剤を探しあてる。

緑色の液体の詰まった注射器。これをもって工場に戻ろうとすると機械馬が警告してくる、この栄養剤は非常に強力です、使うなら一滴だけにしてください。


一滴だけ。そんなに強力なのか?

注射器から液体を土に垂らす。一滴だけを出すように、慎重に



ポタンッ

土と液体が触れた瞬間。



土が心臓の鼓動のように揺れた。



うあああああああ、何だこれ!




土が脈打ち、急速に成長したのはどう見ても植物ではなく、動物の肉だった。

なんともおぞましい、肉が地面から生えるという光景が工場の中に広がっていた。


やっべぇ、成長剤使うべきじゃなかったかな。

とりあえず鑑定だ、頼む、食べられるものであってくれ。


鑑定!



ベーコンキャベツ

●とある食品会社が開発したベーコンのようなキャベツ。キャベツの葉の代わりにベーコンのような葉を伸ばす。
見た目もベーコン、触感もベーコン、味もベーコン。しかしDNAはキャベツであることを示している。食用。

ええ、これがキャベツ?確かにキャベツのように丸いけど、ええ?


俺はベーコンキャベツの葉を一枚ちぎる。
触れた手が油で濡れ、肉の感触が伝わってくる。

食べてみる。噛むと油が口の中にあふれ、がっつりとした噛み応えを感じる。
夢中になって食べた。ひたすら食べた。久しぶりにこんな肉を食べた。体に不足していた栄養を求め無言で食べる。




…今日はみんなでベーコン又はキャベツパーティを開催した。今更だが、歓迎会だ。

ホムンクルスは生まれてはじめてお腹いっぱい食べ、剣闘士は森で狩りをしながら暮らしていたことを思い出しながら食べた。

アナスタシアとカワウソは丁寧に、少年Aは高校生らしく無我夢中で食べていた。
バーテンダーが家具と肉の対価として、一日限定だが卵料理を提供してくれた。
ベーコンエッグは旨かった。

驚いたことにバルムンクと軍人幽霊、首無しにカメラ人間も食べたのだ。お前たち、飯食えたのか。


皆で食糧のことを気にせず腹いっぱい食べた。


本当に美味く、楽しかった。
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