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(12)かくまい人と幼なじみ ②
しおりを挟む父を亡くしたお鈴を見舞う名目があったため、軽く労いの言葉をかけてから、左近は役宅のすみずみを回った。
ついでに、可愛らしいと評判の若い下女も見物に行ってみた。
すると、いまに火がくべられようとした竈のなかで、無造作に積まれた薪のあいだに何かが挟まっている。
咄嗟に下女を呼び止め、竈のなかを探ってみると、件の吟味記録が出てきたそうな。
「盗られていた書物が、持ち主の家の竈に捨てられていた、と」
一連の話を傍で聞いていた重蔵が、おもむろに口を切った。
「籠は食事を作るために、朝と晩は必ず火をつける。それを踏まえたうえで帳簿が無事だったということは、竈に放り込まれたのは昨晩の食後から夜更けごろだろう。一昨日から私の家で過ごしていた勝之進どのにはできぬ」
「ただ、誰が竈へ投げ込んだのかがわからん。いいや、分からんでもないが、厳密には断言ができん」
左近は腕を組みながら、悩ましげに首を捻っていた。
帳簿を開いてみれば、取り調べをした罪人の記録が綴られている。
記録日に日を通してみると、およそ五年前の吟味内容をまとめたものだと分かった。
(また五年前のことか)
勝之進が仇討騒動に巻き込まれてからというもの、五年前の物事を見聞きすることが多くなっている。
この仇討騒動に、五年前の麻疹流行が関わっているとみてよかろう。江戸で大病が流行った年には、必ずと言っていいほど偽薬や詐欺の類が横行する。
薬が発覚すれば厳しい罰が下るが、それ以上に、紛い物を売って得られる利益が大きいためだ。
「また、五年前のことか……」
勝之進が胸の内で呟いた台詞を、重蔵がぽつりと口にした。
◇
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