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21.5 モノローグ [贖罪の足枷]

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足枷の制約の答えが載っています。
まだ答えが出ていない人で自力で辿り着きたい人は回れ右を推奨します。
~~~~~~~~~~~~~~~


[咎人の足枷]
これは罪人を収監する為の魔道具だ。
元来、心根の優しい獣人の忌避される限界に設定された物だ。

番の雄は雌の為なら死すら厭わない。
その為、制約により自殺を禁じられる。

番の雄は雌の為なら同族をも傷つける。
その為、制約により獣人に害を成せなくさせる。
同じ意味で触れている者から魔法の波長が出ないように作られている。

虚偽を言えなくさせる。
この一点に置いて製作者はこだわった。
今は亡き息子を思って。

若くしてチューバッカ王国の最高の技師と謳われた鼠人のジェリー。
番と魔道具作成が生き甲斐だった。
その彼にも息子がいた。

その息子は帝国との戦争によって命を落とした。
帝国の騎士に目の前で命乞いをされた。
ジェリーの息子はそれを受け入れた。
「去れ」と告げ背後を振り向いた時に斬りつけられ亡くなった。

その様子を偶然見ていた兵士からそれを聞かされた。
その悲しみは偶然取り掛かっていた[咎人の足枷]に向けられた。

心は移ろう物だ。
その時の真実が後の真実とは限らない。
ジェリーはそう思った。
息子の命を奪った騎士も最初は本気で思ったのかも知れない。
甘さを見せた息子の背中を見て気が変わったのかも知れない。
ジェリーはそう思った。

これは製作者のジェリーしか知らない。
虚偽の応答が出来ない、そう説明してあった。
足枷を付けた時点での心根を制約の対象にしている事は他の誰も知らなかった。
マリーが自分の心を守る為に、思い込み信じた事が制約の対象になろうとはジェリーにも想像出来なかった筈だ。

呪いの如き嘘が真実になるとは。

戦争である事は理解している。
自分の息子の油断が原因だと理解した。
だがその思いは魔道具へとぶつけられた。
狂気に身を委ねなかったのは番たる者がいたからだろう。

時が過ぎ息子への想いは懐古へと変わった。
憎しみは魔道具へと注ぎ終わった。
戦争を未だに仕掛ける帝国には嫌悪感しかなかった。

だが帝国産の魔道具には興味があった。
分解して仕組みを理解出来た物もある。
分解と同時に機密保持の為に壊れる物もあった。
だが無闇に作動させて被害を出す訳にもいかない。

そんな時に旧知の友人の息子が番を見つけたと耳にする。
それが帝国の士官だと。
そしてその者を[咎人の足枷]を嵌めて囚えたと聞いた。
ジェリーは国王に責付いた。
魔道具への興味も有った。
それ以上にその者の言葉が気になった。
どの様な懺悔をするのか気になった。
意識を失った時点での心根が気になった。

そして尋問の結果を聞き興味はその者へと向くことになった。
捕らえられて仕方なく述べられたのではない。
その者は王国に懺悔をしながら剣を取った。
死を享受しながら剣を振るった。
屈辱を陵辱すら覚悟しながら戦いに身を投じた。
その理由を思いを聞きたかった。
息子の為に。

そしてジェリーは必然たる邂逅の時を迎えた。
だがその思いは何処かへ飛んでしまった。

危うい。

それが第一印象だった。
ネジが飛んで壊れかけの魔道具を思わせた。
放っておけば望んで王城の中を一人で歩くだろう。
そして泥に塗れる事を願い、汚濁に呑まれる事を望むだろう。
そう思った。

だからジェリーは慌てて自分の巣に匿おうとした。
マリーの奥にある心根を唯一知っていたから。
魔道具の知識を有していたのは僥倖だった。
だから居場所を作った。

この事はマリーには話していない。
ジェリーはただ純然に幸せを願っていた。

純粋で傷つきやすく一途な娘の幸せを。


そして後日マリーから報告を受ける。
偶然その仕組みを読み解き、その結果、問題があると。

「自分の心まで騙せる嘘つきはそういない」

そう一蹴してマリーをへこませた。

[咎人の足枷]の在庫はあったが手ずから作った。
思いを願いを込めて作った。
娘の思いを名に込めた。
この足枷を外す時にその願いが叶う事を祈った。

虚偽の部分だけを劣化改造した[贖罪の足枷]を。


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