秘密の扉 短編【R】

葉月彩香

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初体験①

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「じゃあな。円山…あとよろしく」

「おう」

 円山がそう言って、離れていく一人の少年に片手で見送っていた。

 

「ま、円山さん!」

「おう、亮太郎か。遅かったな」

 円山はラケットを玩びながら遅れてきた相良亮太郎に声をかける。

「HR長引いて…っ、じゃなくて、あっ、あの…」

 興奮したような相良が円山に詰め寄る。
 な、なんだ?
 相良の尋常でない様子に、円山は首を傾げる。

「あ?」

「あ、あの人っ」

 そう言って、相良は小さくなってしまった後姿を指差す。
 それはまぎれもなく、先ほど円山が話をしていた人物。

「ん?ああ…昌弘か」

 相良は円山の指すほうを見、そして一人の名前を口にした。

「昌弘さんって言うんですか?」

 興奮冷めやらずといった表情で相良がほうっとその後姿を見送った。

 そして、その姿が見えなくなると、改めて円山に向き直った。

「あいつは、俺と同じクラスの佐藤昌弘だけど…どうかしたか?」

「綺麗ですね」

「あ?男だぜ?」

「はいっ!でも綺麗ですっ」

 意気込んで力説する相良に驚いて、ちょっと後ずさりする。

「そ、そうか…」

「はいっ。あの円山さん、昌弘さんと仲良いんですか?あの…紹介してください!」

「は…あ、まぁ…なんだ…紹介してやるよ」

 相良は呆られながらも見事に円山から佐藤への糸口を掴んだのだった。

 

 

「で?相良君だっけ…円山の後輩の…」

「はいっ」

 にこにこと相良が答える。一目で心を奪われた人に出会えて嬉しいのだ。

 相良は円山に紹介してもらい、佐藤の所属する茶道部の茶室に押しかけ、今に至る。

 佐藤昌弘は、格好良いというより、美しい。
 見事なまでのパーツが揃っている。
 その美しい瞳が自分を見ている…それだけで相良は喜びが湧き上がる。

 ああ、茶道部だから、着物も綺麗だろうな…ぽわんと佐藤の姿を思い浮かべると、途端に顔がゆがんでしまう。

「ん……がらくん……相良君っ…」

 佐藤が名前を呼んでいることに気づき、慌てて正気に返る。
 本人が目の前にいるのに妄想に走るなんてなんていう失態…相良は照れたように笑って改めて佐藤に向き直った。

「で、相良君は僕に何の用かな?」

「あ、はいっ、あ、あの…俺、昌弘さんが好きです!」

「ありがとう」

「へ?」

 勢いよく言いきったが、あっさりとした佐藤の反応に相良のほうが慌てた。相良はもっと佐藤が驚くものばかりと思っていたのだ。

「あ、あの…」

「あ、好きだとかなんだとか言われ慣れてるからね…で、どうしたいの?」

「あ、あの…できれば付き合ってほしいなぁ…と…」

「いいよ」

「へ?…ええっ?」

「だからいいよって…」

 驚きながら変な声を上げた相良に、佐藤は苦笑する。

「今、フリーだし」

 そうして驚く相良の首に腕を回す。
 密着する形になって相良が身体を強張らせる。

「俺のこと、抱きたいんだろ?やろうぜ。セックスの相性も大事だし」

「え?え?」

 脱ぎだす佐藤に相良が焦る。

「大丈夫…茶室は鍵かかるし、部室は別だから部員は邪魔しないし…窓には障子だし?」

「あ、あの…」

 なおも焦ったような声を上げる相良に、佐藤が不思議そうな顔をする。

「俺のこと抱きたくない?」

「い、いえ、そうではなく…あ、あの」

「ん?」

「お、俺…初めてなんです!」

「は?男に告白しておいて?」

「は…はい…」

 相良は真っ赤になって俯いてしまう。

「ふ~ん」

 佐藤はわかったようなわからないような言葉を吐いてくすりと笑う。

「あっひぁっ?!」

 相良の口から間抜けな声が出た。
 だが、それもそのはず、なんと、相良の股間をしっかりと佐藤の手が握っていたのだ。

「なんだ、ちゃんと反応してるじゃん」

「そ、そりゃ…昌弘さんが好きですから…」

 あんなふうに誘われて、しかも佐藤の手で触られるとなれば、反応しないわけがない。

「ちょ、あ、あのっ、昌弘さん、揉まないで下さいっ」

 へっぴり腰になりながらも、なんとか佐藤の手から逃れようと叫ぶ相良に佐藤は楽しそうに笑う。 

「相良君って可愛いね」

 そう言うと、佐藤は相良の唇に口付ける。

「ふっ…はぁっ」

 つたない相良のキスに唇を離して佐藤がたずねる。

「もしかして…相良君、キスも初めて?」

「……は…い…」

「え?女とも?」

「…………はい」

「そうか…じゃあ、オイシイとこもらっちゃったな」

 その佐藤の笑顔がとても綺麗で、相良は思わず言葉を失った。

「じゃあ、全部俺に任せて…教えてあげるよ」

 耳元で囁いて、再び佐藤は相良の唇を塞ぐ。
 教え込むように積極的に舌を絡め、相良を誘う。

 くらくらする…
 相良はすでに佐藤の色香にやられて頭の中が真っ白になっていくのを感じていた


 次回 -指導-に続く…か…な……(続くことになりました) 

 
2004/10/11

※翌日更新します
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