異世界 王室料理番

葉月彩香

文字の大きさ
上 下
15 / 24
01

15 食材は…異世界でも基本は同じもの

しおりを挟む
料理の材料を調達のため、アリシェルとともに、買い物へ。
村で作った料理が好評だったので、俺が作るといったら大歓迎された。

色とりどりの野菜や品物が並べられたマルシェ。

ここはヨーロッパの野菜に近い。というか、原種に近いのかもしれない。
自然と、食材を見る目が真剣になる。
いくつか味見をさせてもらったが、ちょっと固くて味が濃くてちょっと、青臭い。
「野性味溢れるかんじってのに近いかな?」
独り言を言いながら、味を噛み締める。

結局、無難なところで、トマトとレンズ豆、エシャロット、キャベツを買うことにした。
なんとなく相場とかを考えると、貰ったお金は12グランは…10万くらい。また、その下をビル、ディアという単位となり、今回買ったのは、6ディア。500円くらいで大量に買えた。
洗面器ぐらいの大きさの籠に入る量を袋にいれてくれた。

そして肉は牛、豚、鶏、鹿、馬かな。
訳わからん肉があったらどうしようかと思ったが、良かった。
肉もちゃんとしていて、保存状態もしっかりしていた。これは魔石の冷蔵の力かな?
その中から、牛肉を買う。赤身がきれいで、塊も変色してない。

アリシェルは、俺が買うもの、興味があるものの品物の名前を教えてくれた。
これで大体、こちらの言葉での食材の名前がわかってきた。感謝。

基本的に、マルシェにおいてあるものは、見知った食材だし、味も想像がつく範囲だったので、ほっとしていた。
俺の仕事は、料理を作る前の、食材を厳選するところから始まるのだから。

家に帰り、やっと夕飯作りを開始する。
アリシェルは、テーブルでこちらをニコニコと見守りつつ、魔石の作業をしていた。

「さてと、気合をいれるか」
コックコートに身を包み、俺の包丁や道具を取り出して、台所にたつ。

材料は、ちょっと、固めのトマト。
俺自身は、熟しているのが好きだけど、村でもここでも、サラダだったり、生で食べるのはあまりないことらしい。
市場で売っていたのも若い野菜が多かった。
野菜自体にアクが強いこともあるが、保存性、衛生面も考えると、熱を通す料理が多くなるのは仕方がないことだと思う。
食中毒は、何より怖い。

トマトを手早くくりぬく。
エシャロットをみじん切りにする。
トントンというリズムに、心が和む。
オイルで軽く炒め、刻んで挽き肉にしたものと合わせてトマトの中に詰める。
メインのトマト・ファルシ。
とりあえず、見栄えがいいし、何より簡単だし、味が決まりやすい。

俺は、料理学校に通っていたわけではないから、基本みたいなことや、歴史とかを知っているわけではない。
一番最初に飛び込んだところで12年、その後はふらふらしながら自分で食べて旨かった店に頼み込んで働いていたから、本当のところはわからないけれど、フランス料理は、ソースとスープの料理だと思う。だが、それは、少量の家庭料理で作るのに向いていない。
コンソメとか、あの琥珀色は野菜を大量に入れてコツコツ出汁をとるようにしないとうまくいかないし、少しだけのソースを作るのは、コスト効率も悪い。
その点、日本料理は少量に向いていて、繊細だ。たくさん作ると大味になるし、煮物など特に煮崩れしてしまう。
少量だけど、見栄えも味もそして、深みもあるものを…俺は、出張料理で、そして日本という土地で鍛えてられてきたのだと思う。

レンズ豆のサラダを作りながら、知らぬまに出てきてしまった自分の世界を思う。

「彰、ちゃんと客の予約の断り、入れてるかな…心配とか騒ぎになってないといいけど…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

記憶の欠けたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで

橘 木葉
BL
ある日事故で一部記憶がかけてしまったミシェル。 婚約者はとても優しいのに体は怖がっているのは何故だろう、、 不思議に思いながらも婚約者の溺愛に溺れていく。 --- 記憶喪失を機に愛が重すぎて失敗した関係を作り直そうとする婚約者フェルナンドが奮闘! 次は行き過ぎないぞ!と意気込み、ヤンデレバレを対策。 --- 記憶は戻りますが、パッピーエンドです! ⚠︎固定カプです

総受けなんか、なりたくない!!

はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。 イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…? どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが 今ここに!!

もう一度、貴方に出会えたなら。今度こそ、共に生きてもらえませんか。

天海みつき
BL
 何気なく母が買ってきた、安物のペットボトルの紅茶。何故か湧き上がる嫌悪感に疑問を持ちつつもグラスに注がれる琥珀色の液体を眺め、安っぽい香りに違和感を覚えて、それでも抑えきれない好奇心に負けて口に含んで人工的な甘みを感じた瞬間。大量に流れ込んできた、人ひとり分の短くも壮絶な人生の記憶に押しつぶされて意識を失うなんて、思いもしなかった――。  自作「貴方の事を心から愛していました。ありがとう。」のIFストーリー、もしも二人が生まれ変わったらという設定。平和になった世界で、戸惑う僕と、それでも僕を求める彼の出会いから手を取り合うまでの穏やかなお話。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

処理中です...