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11 現実は…はっきり突きつけられるもの
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部屋に入ると、壮年の男性に促され、テーブル席につくことができた。
ふむふむと、アリシェルから受け取った用紙を何枚も眺めた男性は、人の良さそうな笑顔を向けてくれる。
何やら少しだけ希望が持てそうである。
「あの、俺、日本に帰りたいんです。ここは一体どこなんでしょうか」
俺の言葉はやっぱりわからないらしいが、男性は安心するように笑顔を見せてくれる。
「+>^\~・&・&$\+>:\~」
そう言って、大きな用紙を取り出した。
地図だ。
『地図』
アリシェルが地図を指し示しながら言った。
海と大陸、そして筆記体のような文字が描かれている。
…が、見たことのない、地図だ。
ヨーロッパでも、アメリカでも見たことがない地図。三つの大陸、しかも、一つは、海岸線はぼこぼこしているものの、ほぼ正方形に近く、もう一つは長方形。そして、L字に近い形…?
俺が呆然と地図を見つめていると、アリシェルが、長方形の端を指して、
『ここが、グランデール』
グランデールと言ったか?この地図のこの場所が?
え?
さらに、アングラージュ、ランドルーサ、ギグラッシュア…男性が一つ一つ指で示しながら国名を言っていくが、すべて俺の耳を素通りしていく。
日本がどこにもありません。
日本どころか、アメリカもフランスもイタリアもイギリスもありません。
俺は、一体どこにいるのだろうか?
外国だと思ったのに、それですらないのだろうか?
さぁっと自分の顔から血の気が失せていくのがわかる。
手が冷たくなり、視界が狭くなる。
アリシェルが、俺の様子を伺うようにこちらをみる。男性もじっと俺を見る。
俺、35にもなって、この状況に泣きそうです。
『ユウ、ニホンはどこだ?』
アリシェルが、そのようなことを聞くが、俺は、ゆっくりと首を振る。
指し示す場所がないのだ。どこにも。どこにも。
アリシェルと男性がいくつか言葉を交わす。
その間、何度も何度も、地図に何か世界地図との共通点がないか探すが、どこも見つけることができない。
俺は、本当に、一体、今どこにいるのだろうか。どこへ向かえば良いのだろうか。
見たこともない地図を前にして、言葉も出てこない俺。
この地図に描かれていない海の先に、日本は…せめて俺の知っている国は、あるのだろうか。
それとも…?
いや、そんなはずはない。
まさか、でも。
いやいや、だって。
何度も思いが行ったり来たりする。
男性が席を立ち、俺とアリシェルが残された。
アリシェルが俺にもわかるように、ゆっくりと話をしてくれる。
『ユウ、本当にここにニホンはないのか?』
『…ない』
『そうか…』
俺と同じように、肩を落とすアリシェル。
気まずい沈黙をやはり、アリシェルが破る。
『ユウ、これからどうする?グランデールに住むか?』
進路相談だった。
帰れない。
とりあえず、今は、方法がない。
でも、ショックに浸ってもいられない。これからを考えていかなきゃならない。
ガキでもなく、成人している俺は、自分の足で立っていかなきゃいけない。
俺には、言葉、お金も、何もかも、すべてが一からなんだ。
人間、そう簡単には、気を失ったり、倒れたりしないようで…気をしっかり持ったまま、俺は、この状況を受け入れる他なかった。
『うちで住んだら良い』
アリシェルが、優しい言葉をかけてくれる。
言葉をまずは覚えるとしたら、いろいろと迷惑をかけることになるが、アリシェルがいてくれるこの街でしばらく滞在するしかない。
『アリシェル、俺、世話になる、いい?』
『もちろん』
アリシェルの好意に甘えることにする。
本当にありがたい。
ぽんぽんと、アリシェルが、俺の肩を叩いて慰めてくれる。
少しだけ、自分の足元が決まって、体温がゆっくり戻ってくる気がする。
ゆっくり息をはいた。
ふむふむと、アリシェルから受け取った用紙を何枚も眺めた男性は、人の良さそうな笑顔を向けてくれる。
何やら少しだけ希望が持てそうである。
「あの、俺、日本に帰りたいんです。ここは一体どこなんでしょうか」
俺の言葉はやっぱりわからないらしいが、男性は安心するように笑顔を見せてくれる。
「+>^\~・&・&$\+>:\~」
そう言って、大きな用紙を取り出した。
地図だ。
『地図』
アリシェルが地図を指し示しながら言った。
海と大陸、そして筆記体のような文字が描かれている。
…が、見たことのない、地図だ。
ヨーロッパでも、アメリカでも見たことがない地図。三つの大陸、しかも、一つは、海岸線はぼこぼこしているものの、ほぼ正方形に近く、もう一つは長方形。そして、L字に近い形…?
俺が呆然と地図を見つめていると、アリシェルが、長方形の端を指して、
『ここが、グランデール』
グランデールと言ったか?この地図のこの場所が?
え?
さらに、アングラージュ、ランドルーサ、ギグラッシュア…男性が一つ一つ指で示しながら国名を言っていくが、すべて俺の耳を素通りしていく。
日本がどこにもありません。
日本どころか、アメリカもフランスもイタリアもイギリスもありません。
俺は、一体どこにいるのだろうか?
外国だと思ったのに、それですらないのだろうか?
さぁっと自分の顔から血の気が失せていくのがわかる。
手が冷たくなり、視界が狭くなる。
アリシェルが、俺の様子を伺うようにこちらをみる。男性もじっと俺を見る。
俺、35にもなって、この状況に泣きそうです。
『ユウ、ニホンはどこだ?』
アリシェルが、そのようなことを聞くが、俺は、ゆっくりと首を振る。
指し示す場所がないのだ。どこにも。どこにも。
アリシェルと男性がいくつか言葉を交わす。
その間、何度も何度も、地図に何か世界地図との共通点がないか探すが、どこも見つけることができない。
俺は、本当に、一体、今どこにいるのだろうか。どこへ向かえば良いのだろうか。
見たこともない地図を前にして、言葉も出てこない俺。
この地図に描かれていない海の先に、日本は…せめて俺の知っている国は、あるのだろうか。
それとも…?
いや、そんなはずはない。
まさか、でも。
いやいや、だって。
何度も思いが行ったり来たりする。
男性が席を立ち、俺とアリシェルが残された。
アリシェルが俺にもわかるように、ゆっくりと話をしてくれる。
『ユウ、本当にここにニホンはないのか?』
『…ない』
『そうか…』
俺と同じように、肩を落とすアリシェル。
気まずい沈黙をやはり、アリシェルが破る。
『ユウ、これからどうする?グランデールに住むか?』
進路相談だった。
帰れない。
とりあえず、今は、方法がない。
でも、ショックに浸ってもいられない。これからを考えていかなきゃならない。
ガキでもなく、成人している俺は、自分の足で立っていかなきゃいけない。
俺には、言葉、お金も、何もかも、すべてが一からなんだ。
人間、そう簡単には、気を失ったり、倒れたりしないようで…気をしっかり持ったまま、俺は、この状況を受け入れる他なかった。
『うちで住んだら良い』
アリシェルが、優しい言葉をかけてくれる。
言葉をまずは覚えるとしたら、いろいろと迷惑をかけることになるが、アリシェルがいてくれるこの街でしばらく滞在するしかない。
『アリシェル、俺、世話になる、いい?』
『もちろん』
アリシェルの好意に甘えることにする。
本当にありがたい。
ぽんぽんと、アリシェルが、俺の肩を叩いて慰めてくれる。
少しだけ、自分の足元が決まって、体温がゆっくり戻ってくる気がする。
ゆっくり息をはいた。
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