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栄枯無常
長旅。
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みんなで冒険できたのは、ほんの十年ほどだった。
山越え、谷越え、大陸越えて、あっちこっちと飛び回る。
ある時私が怪我をして、そこから病気を患い、死んでしまった。
なんだかんだで楽しかった気がする。
でも、ずっとタチに会いたかった。
どれほどの時間をかければ、タチを、タチの肉体以外の失った「部分」を集められるのだろう?
集められたとして、タチは戻ってくるのだろうか?
それでも、私にはそれ以外の「目的」があるはずはなかった。
なんど生まれ変わろうとも。
その思いのおかげか、転生して肉体が変わっても、私の胸には黒いペンダントがあった。
ズーミちゃんがわけてくれた、源の力と同じだ。
タチの欠片を集めた「黒」
もし、これを失ったら、きっと私は繰り返せない。
これを気に、みんなとはお別れしようと、病床で決めていた。
あまりにもみんなを、私のわがままで引きずりまわしてしまったから。
だって、彼女達の生は私より短い。
ただ、今回は始まった時から、片方の目が見えなかった。
少々不便だったけど構わなかった、タチを感じるのに視力はなくていい。
たぶん五年ぐらい、生きた。
途中、風と、石から、少しタチを回収できた。
こんなにも散り散りに、世界に返るものなのか。
集める方の気にもなって欲しい。
相変わらず世話の焼ける恋人。
ある時、私はとても不自由な体だった。
ある夜、欲にまみれた男に襲われ、全てを失いかけた。
体も命も奪われていいが、その黒いペンダントだけは失うわけにはいかない。
持ち去られる、寸前。
脅しに使われたナイフに倒れ込む。
どうにか、自らの命を絶つことに成功した。
ある時。
ナナは心した。
他の者にとって価値があると、いつも誰かに奪われそうになる。
黒いペンダントはもう身にはなく、胸元に小さなホクロあった。
これなら誰も見出しまい。これなら誰も奪うまい。
ある時。
ナナはわからなく。
見る意味も、聞く意味も、理解できず、ただただ世界を漂っていた。
そんな体が幾つも続き、獣に食われて終わるのも、人に壊されて終わるのも、構わなかった。
ただただ、世界を転がり廻り。愛しいあの人を集めている。
たった一度、懐かしい、青い友人に見つけられ、手厚い保護を受けた時もあっが、それも遠い昔の話だ。
山越え、谷越え、大陸越えて、あっちこっちと飛び回る。
ある時私が怪我をして、そこから病気を患い、死んでしまった。
なんだかんだで楽しかった気がする。
でも、ずっとタチに会いたかった。
どれほどの時間をかければ、タチを、タチの肉体以外の失った「部分」を集められるのだろう?
集められたとして、タチは戻ってくるのだろうか?
それでも、私にはそれ以外の「目的」があるはずはなかった。
なんど生まれ変わろうとも。
その思いのおかげか、転生して肉体が変わっても、私の胸には黒いペンダントがあった。
ズーミちゃんがわけてくれた、源の力と同じだ。
タチの欠片を集めた「黒」
もし、これを失ったら、きっと私は繰り返せない。
これを気に、みんなとはお別れしようと、病床で決めていた。
あまりにもみんなを、私のわがままで引きずりまわしてしまったから。
だって、彼女達の生は私より短い。
ただ、今回は始まった時から、片方の目が見えなかった。
少々不便だったけど構わなかった、タチを感じるのに視力はなくていい。
たぶん五年ぐらい、生きた。
途中、風と、石から、少しタチを回収できた。
こんなにも散り散りに、世界に返るものなのか。
集める方の気にもなって欲しい。
相変わらず世話の焼ける恋人。
ある時、私はとても不自由な体だった。
ある夜、欲にまみれた男に襲われ、全てを失いかけた。
体も命も奪われていいが、その黒いペンダントだけは失うわけにはいかない。
持ち去られる、寸前。
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どうにか、自らの命を絶つことに成功した。
ある時。
ナナは心した。
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これなら誰も見出しまい。これなら誰も奪うまい。
ある時。
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そんな体が幾つも続き、獣に食われて終わるのも、人に壊されて終わるのも、構わなかった。
ただただ、世界を転がり廻り。愛しいあの人を集めている。
たった一度、懐かしい、青い友人に見つけられ、手厚い保護を受けた時もあっが、それも遠い昔の話だ。
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